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創造神たちの傭兵  作者: 仁 尚
巫女の国 大いなる野望 編
50/180

(5) 港町の占い師

「どうしてここが通れないんだ!!」

「手形はある!通してくれ!!」


 街の名前とは裏腹に、洋風の建物が目立つ港町「シマナミ」。

 街中に入った昊斗そらとは、ふと聖都側の門を見に行こうと思い、足を向けた。


 入口には、多くの人だかり出来ており、門番と思われる武装した女性たちと商人風の男たちが言い争いをしている。


「現在、聖都及び周辺地域への男性の立ち入りは禁止されている!男性名義の手形は全て無効だ!女性名義でなら手形を新しく発行出来る!事務所にて申請手続きを行い、女性だけのパーティーを組むように!!」

「ふざけるな、こっちは商売しに来ているんだぞ!生ものだって多いんだ!そんな悠長なことやって、商品がダメになったらどうしてくれるんだ!!」

「俺たちのキャラバンには女がいないんだぞ!どうすればいいんだ!!」

 詰めかけた商人たちに、対応していた女性の怒りが爆発する。

「だまれ、だまれ!!これは、姫巫女様のお決めになったことだ!!これ以上騒ぎを大きくするのなら、全員拘束するぞ!!」


 騒ぎを聞き付け、街を護っている屈強な女性たちが集まり、手にしている武器を構える。


「横暴だ!!」

「責任者を出せ!!」

 

 だが騒ぎが収まる様子もなく、すぐにでも暴動が始まりそうな雰囲気だ。


「やっぱり、俺が外れて正解だったな・・・・・とりあえず、ここを離れよう」


 思っていた以上の混乱ぶりを見て、昊斗そらとは足早に門から離れ、街中へと戻る。


「さて、まずは情報収集だな・・・・まぁ、昼間っから飲みに行ってもいいが、順当に食べ物屋からだな」


 酒場の看板を見つつ、昊斗そらとは手近な店へと入る。

 昊斗そらとの入って店は、宿屋兼定食屋だったらしく、入口を入ってすぐに受付が目に入る。


「いらっしゃいませ~!!」

 ドアに付いた呼び鈴が鳴り、女の子の元気な声が聞こえ、声の主が受付カウンターの中に現れる。

「お待たせしました、お泊りですか?お食事ですか?」

 店員の女の子は、フェリシアたちと同い年ぐらいに見え、茶色がかった黒髪にそばかすが印象的な女の子だった。

「とりあえず、食事で」

「では、あちらに席へどうぞ」

 受付から出てきた女の子に案内され、店の中ほどにあるテーブルに着く。


「こちらがメニューです。今日のおすすめは、地物の魚などを使った海鮮盛り合わせとなってます」

 メニュー表を見る限り、目を引く物が見つからなかったので、昊斗そらとはメニュー表を閉じる。

「なら、それをもらおうか」

「ありがとうございます!」

 紙に注文を書き、女の子は厨房へと消えていく。


 少し待っていると、女の子が水の入ったコップを持って戻ってきた。

「どうぞ・・・・・お客さん、旅の方ですよね?どうしてこの町に?」

「世界を見て回って来いと、ある人に言われてね。その旅の途中なんだ。聖都の方を見ておこうと思ったんだけど・・・」

 何とも在り来たりなウソ・・・演技を飄々とやってのける昊斗そらとだが、店員の女の子は全く疑った様子はなく、完全に昊斗そらとの話を信じている。

「あぁ・・・関所を見たんですね。あの関所、突然聖都から来た巫女様と武僧の人たちが作って、男の人が聖都へ行くことが出来ないようにしてしまったんです。おかげで、この港町は最近、足止めされている人たちのせいで、治安が悪くなってるんですよ」

「そうなのか・・・・あれって、いつできたんだい?船の上じゃ、そんな話出なかったんだけど?」

「ホンの4~5日前ですよ。それ以来、男の人は関所を越えられないし、その前に聖都に居た人たちは、拘束されたって噂があるんですよ」

「ふ~ん・・・・」


「こら!お客さんと何話てんだい?!料理が出来たよ!!」

 厨房から出てきた女の子の母親らしき女性が、怒鳴りながら現れる。

「あ、ごめんなさい、お母さん!!すぐ、持ってきますね」

 パタパタと、女の子が厨房へ料理を取りに行く。


 女の子が持ってきた料理は、海鮮盛りと言うだけあって、新鮮のそうな魚介類の刺身が大皿に、しかも大盛りと言っていいほどに盛られている。

 さらに、日本人に馴染みのある貝汁や白米が並び、一瞬ここが異世界であることを忘れてしまいそうになる昊斗そらと


「へぇ・・・・海鮮盛りって言うからどんなものかと思ったけど、見事にイメージ通りだな」

「あの、料理を持ってきてから言うのもおかしいですけど、お客さん生のお魚は大丈夫ですか?興味本位で頼んだお客さんの中には、現物を見て食べられないって人もいますから」

「大丈夫だよ。俺の故郷には生で魚介類を食べる習慣があるから。それじゃ、いただきます」


 醤油が無いのが忍ばれるが、昊斗そらとはこの地方特産のソースを付けて、白身魚の刺身を食べる。

 日本のポン酢にも似ているが、どこか違う風味が鼻を抜ける。

「うん・・・・俺の故郷で付ける調味料とは違うけど、これはこれでおいしいね」

「ありがとうございます!そのソース、うちの自家製なんですよ!!」

 自慢のソースを褒められ、女の子は嬉しそうにしている。


 2~3人前はありそうな海鮮盛りをペロッと平らげ、昊斗そらとは食後のお茶を飲んでいた。

「しかし、聖都へ行けないとなると、どうするかな・・・」

 もちろん、昊斗そらとには聖都へ向かうつもりはなく、あくまで店員の子から情報を聞き出すために、先ほどの演技を続けていた。

 

「そうだ!マダムの所へ行ってみてはどうですか?」

「マダム?」

 食器の片づけをしていた女の子から出た名前に、昊斗そらとは眉をひそめる。


「この町一番の占い師で、皆からマダム・ヴァイオレットって呼ばれてます!最近まで旅に出てたみたいなんですけど、数日前に帰ってきたそうです。人生相談にも乗ってくれる人で、もしどうしようかお悩みなら、行ってみてもいいと思いますよ?場所は、占い通りにある”星の導き手”って占い屋です」

「・・・・・・そうだね、気晴らしついでに行ってみようか。それじゃ、ごちそうさま」

 昊斗そらとが立ち上がり、テーブルの上に代金を置く。


「ありがとうございます!もし、この町に留まるなら、宿屋はうちでお願いしますね」

 笑顔で女の子に見送られながら昊斗そらとは、商売上手だなと思いつつ宿屋を後にした。


 女の子が言っていた占い通りは、宿屋のある通りから南に三つ下った角から西にのびる通りの名前だった。


 他の通りと違い、入口には”占い通り”とアーチの看板が掛かっていた。


 通りには、それらしい店だけでなく、露店や辻占いなど多種多様な占い屋が出ている。


「えっと、たしか”星の導き手”だったな」

 通りを歩きながら、押し売りのように言い寄ってくる、辻占いの女性たちを華麗にスルーしながら、目的の店を探す昊斗そらと

「おっ」


 そうこうしていると、いかにも知る人ぞ知ると言ったこじんまりとした佇まい、それでいて威風堂々と巨木で作られた看板が掲げられる占い屋を見つけた。


「星の導き手。ここだな」

 中へ入ろうと、扉のノブに手を掛けた昊斗そらとの表情が曇る。

「ん?・・・・あれ?」

 鍵が掛かっているのか、まったく動かないドアノブ。

 さすがに壊すのは無しだよな、と思いつつ視線を上げると、入口に木札が掛かっている。

「・・・・あぁ」


***********


「・・・・こんちわ~」

 何事も無かったように、店に入った昊斗そらとは、店内を見渡しながら店の主を探す。

 良くも悪くも占い屋と言った風情のある薄暗い店内で、香が焚かれているのか、甘い香りが漂ってくる。


「表の木札が見えなかったの?今日は、休業日よ」

 奥から出てきたのは、40代ぐらいの女性だった。

 赤みを帯びた腰まである髪に、気怠そうな表情をしているが、流し目で昊斗そらとを見つめる彼女は、間違いなく美女と呼べる美貌の持ち主だった。強いて残念と言うなら、スレンダーすぎる身体だろうか。

 もし、昊斗そらとが普通の青年なら、その妖艶な美貌にドギマギしていただろう。


 だが、普段から多くの美少女に囲まれ、今まで訪れた世界では彼女のような見目麗しい美女たちから言い寄られてきた彼にとって、目の前の女性は”普通”に映ってしまう。 


「『本日、休業・・・・の気分だけど、どうしても占ってほしいなら、まぁ入口の引き戸から入ってきて』。そう書かれていたので、入ってきました」

 昊斗そらとの見た木札には、「本日、休業」という文字以外に、特殊な力で文字が書かれていた。

 しかも、入口はドアの形をしていながら、引き戸と言う引っ掛け2段構えだ。

「へぇ・・・・あれ、読めたのね。なら、資格はあるわね」

「資格?」

「そう、あたしに占ってもらえる資格。昔はね、来たものを拒まずって感じで占ってたんだけど、少し前から男女問わず無礼を働く輩が増えてきてね。面倒が嫌で、こんな手を使っているの」


 そう言いながら、女性は近くの椅子に腰かける。

「どうぞ、座って」

 促され、昊斗そらとは彼女の対面にある椅子へ座る。

「改めて、あたしがここの店主。本名はあるけど、ここじゃマダム・ヴァイオレットで通してるから、そう呼んで」

「分かりました、マダム。宜しくお願いします」

「それで、あなたはどうしてここへ?何を占ってほしいのかしら?」

「そうですね・・・・ある”探し物”をしているのですが、なかなか見つからなくて・・・・それが見つかるかどうか、占っていただけますか?」

 何を占ってもらうか考えていた昊斗そらとだったが、無難な所で”探し物”と決めた。もちろん、”探し物”とは、水の神ルドラを除く残りの代理神たちの行方である。


 とはいえ、ストレートに伝える訳にもいかず、何を探しているかはぼかした。


「随分、漠然とした願いね?」

「まぁ、そうですね」

 腹を探り合うように、二人の視線が交わる。


「・・・・・・いいわ。その代り、結果も漠然としたものになるわよ?」

「構いません。見つかるか否か。それが分かれば」

 速断する昊斗そらとに、マダムは少し目を見張り、ため息をつく。


「そう、じゃ始めるわ」

 おもむろに、マダムは昊斗そらとへ両手をかざす。

「俺の名前とか、聞かないんですか?」

「必要ないわ。何も聞かないで占うのが、あたしのポリシーなの」

 そう言って、マダムが呼吸を整え、目を閉じると店内に静寂が訪れる。


「・・・・・?!」

 数分後。何か見たのか、マダムが突然目を見開き、椅子から立ち上がり後ずさる。

「?どうかされましたか?」

 何か危険なものを見るように冷や汗を流し、呼吸を荒くするマダムに、昊斗そらとが怪訝な顔をする。


「・・・・・ふぅ。ごめんなさい、取り乱してしまったわ・・・・」

 マダムは取り繕う様に、倒れた椅子を戻し、再び席に着く。


「それで、どうです?」

 昊斗そらとの問いに、マダムが大きく息を吸い、吐き出す。

「・・・・単刀直入に言えば、君の探し物は絶対に見つかるわ。しかも、ごく近日中にね」

「へぇ・・・・それはよかった」

 その言葉に、マダムは怪訝な顔をする。

「疑わないのね」

「貴方は、”力のある人”ですから。疑う余地はありませんよ」

 昊斗そらとの見透かしたような言葉と表情に、マダムの顔が蒼くなる。

「!?・・・・・・君、心臓に悪いわ」

「よく言われます」

 そんな、傍から見れば逃げ出したくなるようなやり取りをしていると、裏の方で物音がする。


「マダム~!居ますか~?」

 裏口から入ってきたであろう人物に、二人の視線が集中する。


「貴女、また抜け出してきたの?」

「だって、マダムの所に居た方が、勉強になるってミユは思ってるもん!」

 自身をミユと呼ぶ人物を見て、昊斗そらとの頭に疑問符が浮かぶ。


 理由は、その特異な恰好。

 日本の一般的な巫女の格好と言えば、想像出来るだろうか。白の小袖に緋色の袴を履き、足袋に草履と、まさしく巫女さんがそこにはいた。


 だが、それ以上に目が行くのは顔に着けた狐のお面だった。


「それに、そのお面。ここに来るなら、外しなさい」

「えへへ・・・・・」

 なぜか照れる”巫女ちゃん”ミユは、お面を頭の上へずらした。

 お面の下から現れたのは、昊斗そらとも唸る美少女だった。

 年齢は、ヴィルヘルミナと同い年ぐらいに見え、人懐っこそうな大きく潤んだ瞳はアメジストを思わせる紫色、唇は紅を差したように艶めいている。

 彼女の大きな目と、昊斗そらとの視線がぶつかる。

「珍しい・・・・マダムの店にお客さんが来てるなんて、ミユ初めて見たかも?」

「失礼な子ね・・・・・ごめんなさい、私の知り合いが騒がしくしてしまったわね」

「お構いなく。では、俺はこれで失礼します。鑑定のお代は?」

「いらないわ」

「そう言う訳にもいきません。プロに対して、相応の対価を払わないと」

 絶対に折れませんよ?と言う目をする昊斗そらとを見て、マダムの方が折れた。

「・・・・仕方ないわね、これでいいわ」

 マダムは近くにあった紙に、金額を走り書きし昊斗そらとへ渡す。

「では、今日はありがとうございました」

 指定された金額を支払い、昊斗そらとは一礼して店を出て行った。


「ねぇ、マダム。今のお客さんって、何者?」

「・・・・・強いて言えば、”神の御使い”かしらね」

 首を傾げるミユの頭を撫でながらマダムは、ほんの短い時間で一気に老けた気になってしまい、肺に溜まった重苦しい空気を吐き出すのだった。


*********


「やっぱ、実力のある人に見てもらうと、その気になれるなぁ」

 マダムの店を後にした昊斗そらとは、意気揚々と占い通りを歩いていた。

「さて、船に戻るわけにもいかないし、さっきの宿屋を拠点にするかな・・・・・・・・」

 今後の予定を考えていると、昊斗そらとのセンサーに引っかかる者が複数現れる。

「・・・・・2・・いや3人か」

 昊斗そらとの後方に、人ごみを利用し尾行する存在がいた。

(俺の正体がバレた?いや・・・・それなら、船から連絡が入るはずだが・・・・)


 相手の出方を見る為、昊斗そらとは人の多い大通りから、人気の少ない裏道へ入る。


「!?」

 昊斗そらとの入った裏道に、聖都への門を警備していた女性と同じ、武装をした女性2人にマーナが着ていた巫女装束を着た女性が1人、後を追う様に入る。


 彼女たちが進んでいくと、道が行き止まりとなっていた。だが、そこに昊斗そらとの姿は無かった。


「馬鹿な!一本道のはずだぞ?!何処へ行った!?」

 周りを警戒する3人。

「やっぱ、俺をつけてたか」

 すると、彼女たちの後ろから、マスクドフォーム姿の昊斗が現れる。

「!?」

 昊斗そらとがどんな手を使って、後ろに回り込んだのか分からないながらも、女性たちが構える。


「とりあえず、俺をつけてた理由を話してもらわないと、な」

 腰につけた専用の鞘から高周波ブレードを抜きながら、昊斗そらとは敵へと歩き出すのだった。

 

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