表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
創造神たちの傭兵  作者: 仁 尚
巫女の国 大いなる野望 編
49/180

(4) 入国

 2週間の船旅を終え、ルーン王家専用客船「クイーン・ファーネリア号」は、アルターレ護国の玄関口である、港町”シマナミ”の貴賓用の岸壁に接岸した。


 甲板、岸壁双方で係留作業が慌ただしく始まる。


 係留が終わり錨が下ろされ、乗降用の大型タラップがゆっくりと掛けられる。


 タラップの下には、出迎えと思われる巫女の女性たちが、笑みを浮かべて並んでいる。


 騎士団の制服に身を包んだ船員たちがタラップを駆け降り、無駄のない動きで整列し、降りてくるであろう人物たちを待つ。

 

 ゆっくりとタラップから降り立った面々を見て、出迎えたアルターレ護国の人々からため息が漏れる。


 過度にならない程度のアクセサリーとドレスを纏いながらも、王族の威厳を醸し出すフェリシアに、ルーン王国を出た時に着ていたドレス姿のルールー・・・・だが、髪の色が鮮やかな水色から栗色の変わり、すまし顔でフェリシアの横に立っている。

 その後には、鎧を纏ったフレミーと、戦闘服の冬華とうか

 さらに後ろには、何故かメイド服に身を包んだ玉露ぎょくろ金糸雀カナリア、そして3人の本職のメイドたちが立っていた。

 全員が全員、出迎える巫女たちが太刀打ち出来ない美女美少女揃いだ。


 そんなフェリシアたちの前に、出迎えの列から一人が歩みでる。


 ほかの女性よりも縫製の複雑な巫女装束を着ており、年齢はマーナよりもかなり年下に見える。

「遠路はるばる、ようこそいらっしゃいました、フェリシア殿下。わたくし、この度皆様を聖都までご案内いたします、巫女統括役のリーン・ハクラと申します」

「出迎え、感謝いたしますハクラ殿」

 フェリシアが一礼すると、王国の一団がフェリシアに倣う。


 リーンと名乗った女性が、マーナへと視線を移す。

「マーナ様、ご無沙汰しております。ラーンの妹のリーンでございます」

「!ラーンさんの妹さん。・・・・・私が旅立つときはこんなに小さな女の子だったのに。お姉様は、お元気かしら?」

「はい、数年前に聖都でのお勤めを終え、今は田舎で土をいじりながら余生を過ごしています」

「ラーンさん、花を育てるのがお好きだったものね・・・・本当に懐かしいわ」

 懐かしい名前を聞き、マーナが目を細める。


「リーン様・・・・」

「!?・・・わたくしったら、大切なお客様をそのままにするなど、申し訳ございません殿下。すぐに、移動の馬車を回しますので」

 部下の巫女に指摘され、リーンは慌てて馬車を回すように指示する。

「よしなに」

 気にしていませんよ、と言った風に余裕を見せるフェリシア。


「では、殿下とマーナ様は前の馬車へ。同行者の方々は、後ろの馬車へお乗り下さい」

 回された馬車は、国賓用の豪華な馬車とそれよりも少々劣るがしっかりとした造りの大型馬車だった。


「申し訳ない、私は殿下の乗る馬車の御者席でも構わないだろうか?」

「もちろんです、騎士様」

 フレミーの問いに、リーンは笑みを浮かべ許可した。


 全員が馬車に乗り込み、聖都へ向け出発していく。


「出発されましたな」

「えぇ」

 甲板から、出発した馬車を見守る船長と使い古された外装を羽織った昊斗そらとが立っている。

 

「では、俺も出ます。もしもの場合は打ち合わせ通りにお願いします」

「心得ております。オクゾノ殿もお気をつけて」

「はい・・・・・短距離跳躍(ショート・ジャンプ)

 先の事件で冬華とうかが使っていた物と同じ、タロット大のカードを取り出した昊斗そらとが光りに包まれ、その姿が消える。

「!?・・・話には聞いていたが、本当に我々の常識を斜めに行くのだな。異世界人は」

 単体で行えるほどの、高度な転移技術を持たないグラン・バースの人々にとって、昊斗そらとが使った力がどれほど途方もないの物か理解できたために、その場にいた全員が度肝を抜く。


「全員、呆けてないで持ち場へ戻れ!!」

 気を取り直した船長が、船員たちへ声を上げる。


 なぜ、昊斗そらとがフェリシアや冬華とうかたちと行動を別にしているのか?


 それは、遡ること1日前。


********


「納得できない!!」

 大声で叫ぶ玉露ぎょくろ

 仕事モードを忘れて、プライベートモードで怒りを露わにする玉露ぎょくろを見て、昊斗そらとたちは、彼女があること(・・・・)を承服しないことに頭を抱え、フェリシアたちルーン王国関係者は唖然としていた。


「お前な・・・・・仕方ないだろ?今の聖都に男は入れないってことなんだ。俺が出て行って、下手にもめ事になったら、フェリシアに迷惑はかかるだろう?」

「それは理解してるわ!私が納得できないのは、どうして私が昊斗そらとについて行ったらいけないのかってことよ!」

玉露ぎょくろちゃん、先方にはフェリちゃんの同行者の人数を事前に伝えているんだよ?人数が合わないとなったら、怪しまれるよ」

「それは、この船に乗ってるメイドさんとかで数合わせすればいいじゃない!」

玉露ぎょくろちゃん、昊斗そらとさんが心配なのは分かるけど、これはチームリーダーであり、今回の護衛責任者である昊斗そらとさんの決定だよ。それに、玉露ぎょくろちゃんが抜けて、これ以上非戦闘員が増えたら私や主だけじゃ対処できなくなるよ」

 痛いところを衝かれ、玉露ぎょくろが押し黙る。


 数時間前、明日のアルターレ護国への入国を前に、船長など船内の重要役職にある者たちを交えて、昊斗そらとたちはある情報に関して、協議が持たれていた。


 出航前にドラグレアから齎されたいくつもの情報の一つに、”アルターレ護国に不穏な動きがある”と、言うものがあった。

 

 当初は、さして大したことではないと思われていたことだったが、到着前日になって、ドラグレアから新しい情報が入り、アルターレ護国の民であるマーナを含めた全員は、多いに困惑した。

 

 その情報とは、”アルターレ護国の首都である聖都と聖都周辺地域への、国外から来た男性の全面立ち入り禁止”という通達がアルターレ護国の姫巫女の名で、関係各国に入ったというのだ。


 元々アルターレ護国は、人口の約八割強が女性と言う女系国家である。

 女尊男卑と言うほどではなかったが、国内に住む男性の扱いはあまりいいものではなく、そのせいか正規に入国した男性であっても、多少なりとも行動が制限されていた。


 だが、それでも長い歴史の中でそのような決まりが出来たことはなく、マーナが一番驚いていた。


 これにより、昊斗そらとがフェリシアに同行出来なくなり、聖都への同行メンバーの練り直しを余儀なくされた。


 しかもドラグレアと親交のある商人たちからの情報で、アルターレ護国の代表である”姫巫女”が、住民である男性たちを聖都から未開地へ強制移住させ、遠くない未来に男を国から追い出す布石では?言うのだ。


 その話を聞き、真っ先に反論したのはマーナだった。

「姫巫女様が、そのような考えに至るはずがない!」と、強く否定したのだ。


 だが「実際に、アルターレ護国を訪れた商人たちからの情報のため、アルターレ護国の現状を調べて欲しい」というドラグレア経由のカレイドの追加依頼を無視する訳もいかず、現状フェリシアに同行できなくなった昊斗そらとが、密かに調べることとなったのだ。


 そして、先ほどの玉露ぎょくろの激怒だ。


 身軽な方がいいと、昊斗そらとは単独行動となったのだが、玉露ぎょくろが猛反対。自分は昊斗そらとについて行くと聞かないのだった。


 しかし、フェリシアに同行するメンバーを船内にいる女性だけで構成するとなると、もしもの事態に際し、荒事に対処できる人間が少ないのが問題となった。


 そんな中で、玉露ぎょくろが同行メンバーから外れると、いよいよ冬華とうかたちでは対処が苦しくなるため、玉露ぎょくろの我儘は到底受け入れられなかった。


(久々だな、ここまで玉露ぎょくろが頑ななのは・・・・・)

 昊斗そらとが、そんなことを考えながら冬華とうか金糸雀カナリアを見ると、二人も同じことを考えていたのか、困ったような笑みを返してきた。


 傭兵になった当初の玉露ぎょくろは、ネガティブ思考に情緒不安定だったために、仲間である昊斗そらと冬華とうかたちを、平気で傷つけていた。


 時が経ち、徐々にその傾向は薄らいできたが、昊斗そらとを好きになってからは、ネガティブ思考がおかしな方向へと向かった。


 それが、昊斗そらとへの異常とも言える過度な心配である。

 冬華とうか金糸雀カナリアも、昊斗そらとのことを心配するが、彼なら大丈夫とポジティブに考えるのだが、玉露ぎょくろは「もしかしたら・・・・・」と言う考えが頭から離れず、過去に作戦を無視してしまうことも多々あった。


 傭兵として多くの経験を積んでからは、成長を見せ落ち着いていたが、ふとした切っ掛けで、再発することがあるのだ。


(前回の仕事から、実時間で2年の空白・・・・無理もないが・・・・)

 前回、別の創造神から受けた依頼完了から、今回の依頼まで昊斗そらとたちには、2年の空白が存在した。

 自分たちの世界で生活している際は、傭兵の記憶が封印されているが、依頼を受ければ記憶は復元される。

 そのため、突然沸き起こった逢えなかった事への寂しさから、玉露ぎょくろの精神に変化が起きてしまったものと考えられるのだ。


「とにかく、玉露ぎょくろがフェリシアたちに同行するのは決定だ、変更はない。玉露ぎょくろ、もう子供じゃないんだ。これ以上、依頼をそっちのけにするなら、俺はお前とのパートナーを解消する」

 昊斗そらとの雰囲気に、玉露ぎょくろの表情が固まる。

「・・・・・・・・・いいわよ、昊斗そらとにそう言われたら、従うしかないわね。・・・・確かに、もう子供じゃないもの」

 そんなことを言ってはいるが、玉露ぎょくろは納得していないようで、完全に拗ねている。


「よし、それではフェリシアに同行する・・・」

 気を取り直し、昊斗そらとが話を戻そうとしたが・・・・・・

「ただし!条件がある!!」

「は?」

 腰に手を当て、昊斗そらとに向かって指さす玉露ぎょくろに、全員の視線が集まる。

「毎日10回、私に連絡を入れること。その度に、10回好きだよって言うこと。1日10回私のことを思い出すこと」

「・・・・・・・・・」

 玉露ぎょくろの言いだした条件に、「んな無茶な」と、昊斗そらとだけでなく、男性船員たちも呆れてしまう。

「もし破ったら、昊斗そらとも含めて関係者全員殺すから」

「待て待て待て!」

 玉露ぎょくろが無茶苦茶なことを言いだし、その場に居る全員が戦々恐々とする。なんせ、玉露ぎょくろの目は本気だったからだ。


(なんか、面倒な方向へ転がったもんだな)

 どうしたものかと考え込む昊斗そらとは、大きくため息をついた。


「・・・分かった。それで玉露ぎょくろが納得するなら、俺が犠牲になってやる。その変わり、仕事は手を抜くなよ!」

「・・・・・ご心配なく、言質が取れた以上、きっちりこなしますよ、マイマスター」

 仕事モードに切り替わった玉露ぎょくろが、満足そうに答える。 

(こいつ、もしかしてこれを狙って、我儘言ったんじゃないよな?)


 そんなこと心配していた昊斗そらとの肩を、叩く人物がいた。

「・・・・・・・昊斗そらと君、玉露ぎょくろちゃんにだけってことはないよね?もちろん、私にも同じように連絡して、好きだよって言ってくれるんだよね?」

 素敵な笑顔を昊斗そらとに向ける冬華とうか

「あれ?冬華とうか・・・・さん?」

「してくれるんだよね?」

 冬華とうかの笑顔に殺気が籠りだす。

「あの・・・・私も、一回だけでいいので忘れないで下さい」

 二人に便乗するように、金糸雀カナリアも手を上げる。


 少し離れた場所では、フェリシアがフレミーを焚き付けようとしているのが見えたが、昊斗そらとは見なかったことにする。


「・・・・・・・・・・・・はぁ」

 結局昊斗(そらと)は、玉露ぎょくろだけでなく、冬華とうか金糸雀カナリアを加え、フレミーにフェリシア(フェリシアの場合は、仲間外れなのは嫌という理由から。ちなみにルールーはこの時お昼寝中だった)と全部で五人に毎晩連絡を取ることとなった。


 回数に関しては、根気強い協議の結果、人数が増えたため平等と言うことで、1人1日1回10分間となった。

 

 当然玉露(ぎょくろ)からは、「さっきと話が違う!」と抗議が上がったが、もし玉露ぎょくろの我儘が原因で依頼に失敗したら、その責任は玉露ぎょくろが追ってくれるんだな?という、昊斗そらとの脅しとも言える問いに反論することが出来ず、彼女は渋々譲歩したのだった。


 この後、フェリシアに同行するメンバーは、冬華とうか玉露ぎょくろ金糸雀カナリアに、騎士のフレミーと、フェリシアの遠縁の親戚として付いてきているルールー。そして、フェリシアの身の回りを世話する侍女たち3人と決まった。


「しかし、毎晩何人もの女の子に連絡って・・・・・どこのギャルゲの主人公だよ」


 短距離跳躍で、一般用の船着き場の死角に出現した昊斗そらとは、昨日ことを思い出し、今晩から大変になりそうだ、と嘆きつつ到着した船から降りてくる人々に紛れるように、街中へと入っていく。


(まぁ、悩んでも仕方ない。今は、仕事に集中するかな)

 

 気合を入れなおし、昊斗そらとは情報収集のため、行動を開始したのだった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ