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創造神たちの傭兵  作者: 仁 尚
学園の姫君たち 合同学園祭 編
45/180

幕間

『陛下、ご連絡が遅れてしまい申し訳ありません』

「君も忙しい身だ。気にすることはないよ、殿下」


 カレイドの執務室にある秘匿専用の通信球には、ヴィルヘルミナの兄であり、皇太子であるライナルト・ヴォルフ・ハイゼンベルグの姿が映し出されている。


『改めてまして、この度は我が国の問題で貴国にご迷惑をお掛けし、さらに妹まで助けていただきありがとうございました。皇帝に代わり、そしてヴィルヘルミナの兄としてお礼申し上げます』

「構わないよ・・・それに、妹君を助けたのは、こちらで妹君の警護を依頼していた傭兵なんだ」

 カレイドの言葉に、ライナルトは目を細める。

『そうでしたか・・・ぜひ直接お会いしてお礼が言いたいですね。さぞ、有名な傭兵なのでしょう?』

「いいや・・・彼は最近、我が国に召喚された異世界人でね。だが、信用できる人物だよ」

 それだけ言って、カレイドは笑みを浮かべ口を噤む。この話題はこれまで、と言わんばかりに。


『・・・・ではその傭兵の方にお伝えください、帝国に寄ることがありましたら、ぜひお礼をさせてほしい、と』

「伝えよう・・・・では、本題に入ろうか?」

『はい』


 事件から二日が経ち、王国・帝国双方で多くの調査結果が上がってきていた。 

 

 テロリストたちが使っていた武器などの装備は、帝国で廃棄予定だったものだと判明。かなり巧妙にデータが改ざんが行われていたらしく、指摘されるまで誰も気が付くことはなかった。

 さらに、大量の武器やテロリストが気が付かれずに、ルーン王国へ入り込めた理由は王国側に協力者が居たためで、すでに騎士団によって拘束・尋問が行われている。


「こちらで拘束した犯人たちの尋問した騎士団からの報告で、今回の事件は複数のグループが個別に起こしたものだと分かった。そして、犯行グループの足並みを揃えさせた人物が存在することも判明した」

『本当ですか?』

 ライナルトは、衝撃を受け驚きを隠せないでいる。

「ウィスパー・・・・そう呼ばれる人物らしい。常に顔を仮面で隠し、声からして男のようなのだが、それ以外は一切分かっていない」

 思い当たる名ではなかったらしく、ライナルトが思案顔に変わる。

『ウィスパーですか・・・・こちらでもその人物を調べてみましょう。もしかしたら、何か出る可能性もありますし』

「頼む。私も、同盟国に情報を仰いでみるつもりだ・・・・・・それから、二か所で起きた爆発地点で、帝国軍関係のだと思われる遺体が複数見つかったよ」

 カレイドの顔が強張る。ライナルトは、それを見て静かに目を閉じた。

『・・・・・・陛下に、お話ししたいことがあります。父の友人である陛下には知っておいていただきたいことです』

 ライナルトが、意を決したように口を開く。

 その内容を聞き、カレイドはすぐには受け入れられなかった。


「そんな馬鹿な・・・・あの方が、自分の娘に手を出そうとしたなど」

 カレイドの知る皇帝は、自分と同じく家族を大切にする人物だった。間違っても、愛する娘を手籠めにしようなどと考えるはずがなかった。


『今の父にとって、ヴィルヘルミナは”娘”ではなく自分の”妻”・・・・つまり我々の母「イーザベル」だと思い込んでしまっているようです。信頼できる医師に見せましたが、精神病の類ではないかと、薬を処方していただいていますが、一向に快復の兆しが見えないのです』

「では、妹君がこの度ルーン王国に留学したのは・・・」

『お察しの通りです。弟と話し合い、今は距離を置いた方がいいと結論づけ、妹を父から遠ざける為に、留学に出しました・・・・父のことは使用人や家臣たちにもかん口令を出していたのですが、どこからか情報が漏れてしまい、父に取り入ろうと画策した一部の政治家が、妹を連れ戻そうとしていることを突き止め、妹や部下たちを守るために部隊を極秘裏に派遣していたのです。発見された遺体は、私が派遣した部隊と、妹を連れ戻そうと政治家が送り込んだ特殊部隊でしょう。私の部下からも、妹を誘拐した犯人の一人が、そのようなことを言っていた、と・・・・』


 ライナルトの言う部下とは、ヴィルヘルミナの秘書であるアンナのことだ。アンナはフローラたちと同じく、元々はヴィルヘルミナではなく兄のライナルトの部下で、ヴィルヘルミナの留学に合わせて一緒に来ていたのだ。


「そうだったのか・・・とりあえず、私の判断で遺体は別口で収容してある。引き渡しの手続きを始めておこう」

『重ね重ね、感謝いたします・・・・・それから、妹のことですが・・・・』

「心配しなくていい・・・妹君はルーン王国が責任を持って面倒をみよう」

 カレイドの心強い言葉に、ライナルトは深々と頭を下げた。 


 この後、明日も連絡入れることを確認し、通信が終了する。

 カレイドは椅子に身体を預け、天井を仰いだ。

「あの方が・・・・・」

 友人の状況に、心を痛めるカレイド。その時。

『陛下・・・・祭事巫女のマーナでございます。今、よろしいですか?』


 ノックと共に、告げられた名前にカレイドは椅子を座りなおす。

「マーナ様?・・・どうぞ、お入りください」

『失礼します』

 扉を開け、入ってきたマーナを見て、カレイドは驚いて立ち上がり目を見開いた。

「マーナ様?!その恰好は・・・・」

 入ってきたマーナの姿は、祭事巫女が最も重要な祭事の際にのみ着ることを許される巫女装束だった。

「陛下、夜分遅くに申し訳ありません。ご相談したいことがあり参上いたしました」

 ただ事でないマーナの雰囲気に、カレイドは彼女が訪ねてきた理由を何となく察し、休む準備をしているであろう、妻のマリアに連絡を入れようと内線用の小型通信球に手を伸ばすのだった。

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