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創造神たちの傭兵  作者: 仁 尚
学園の姫君たち 合同学園祭 編
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(17) 和解への一歩 (合同学園祭 三日目⑨)

「うん、うん、分かった。フェリちゃんたちにはそう伝えておくね。それじゃ、気を付けて」


 通信していた冬華とうかを見て、フェリシアが近づいてくる。

「ソラトさんからですか?」

 不安と期待半々と言った面持ちのフェリシアに、冬華とうかは笑みを浮かべる。


「うん。ついさっき、ヴィルヘルミナさんたちを救出できたって。今、このアイディール学園に向かってるから、もう少し待っててくれって言ってた」

「!・・・・よかった」

「フェリちゃん!?・・・・大丈夫?」

 冬華とうかの言葉を聞き、安心したのかフェリシアがその場にへたり込んでしまう。


「す、すみません。安心したら、急に足に力が入らなくなってしまって」

「仕方ないよ、ずっと心配してたもんね、ヴィルヘルミナさんのこと」

 立ち上がれないフェリシアの隣に、冬華とうかが腰を下ろす。


 二人の視線の先には、アイディール学園の正門から校舎まで真っ直ぐに伸びる道の上で、学生区内で負傷した学生、騎士団員、一般人などが運び込まれ治療が行われていた。当初その光景は、野戦病院の様相を呈しており、あちこちから痛みなどで呻く患者の声で満ちていた。


 騎士団の治療部隊が駆け付け、治療が行われたが運ばれてくるけが人の数が多くなり現場は混乱した。


「重症患者に赤い布か紙を付けて、一か所へ集めてください。後は私が何とかしますから」

 その混乱を収めたのは、冬華とうか金糸雀カナリア玉露ぎょくろ、そしてじっとしていられないと、フェリシアやアリエル、クレアたち学生だった。


 冬華とうかたちは地球で言う所の”トリアージ”を、騎士団の治療部隊や救援にきた医師たちに指導し、患者の選別を行って治療効率を一気に引き上げた。

 運ばれてきた重症患者は、そのほとんどが風前の灯のようだった。だが、金糸雀カナリアのサポートを取り戻した冬華とうかが使う回復術式によって、一瞬の内に傷痕を残さず完治した。


 その後も、緊急性の高いけが人を冬華とうかたちが優先的に回復し、それ以外を騎士団や医師たち、さらに回復の精霊術を使える有志の学生たちの働きによって、被害者は最小限に押さえられた。


「トーカ君、姫様」

 正門の方から、完全装備のフォルトと部下たち数人がやってくる。立ち上がろうとした冬華とうかを、フォルトが手で制する。

「お疲れ様、トーカ君や姫様たちのおかげで、大事に至らずにすんでよかったよ」 

「とんでもない、ここに居る人たち全員が協力した結果ですよ」

「うん、私たちだけだったら大したことは出来なかったね」

 謙遜するフェリシアと冬華とうか

「・・・・・・それでフォルトさん、街の方の様子はどうですか?」

「混乱の方は大方収まったよ。犯人や混乱に乗じた愉快犯も多く拘束したけれど、現在でも警戒は続けているけどね」


 今朝方、地方の街で起きた暴動を鎮圧するため、中央から部隊を編成し出陣したフォルトだったが、移動する船の上である連絡を受けた。


 それは、私事で問題の街の近くまで来ていたドラグレアが、すでに状況を収拾させたことを伝えるモノだった。

 そのため、現場をドラグレアに任せ、すぐさま王都へ引き返したフォルトたちは、ベストタイミングという場面で到着し、完全装備のまま状況に介入したのだ。 


 その事も幸いし、当初急激な広がりを見せた混乱も、すぐに終息していった。


「団長、帝国の皇女様とお連れの方々がお見えになられました」

 駆け足でやってきた騎士団の団員の言葉に、フェリシアと冬華とうかが顔を見合わせた。



昊斗そらと~!!ぐぇ!?」

 一番乗り、と玉露ぎょくろ昊斗そらとに抱き着こうと走り出すが、冬華とうかに首根っこを捕まれ、つぶれた蛙のような声を漏らす。


玉露ぎょくろちゃん、抜け駆けはよくないな」

「って、冬華とうか!!感動的な再会を邪魔しないでよ!!」

「それは、後でもいいでしょ?」

 視線で促され、玉露ぎょくろが視線を動かすとフェリシアとヴィルヘルミナが無言で向き合っていた。


「ミーナさん」

「・・・・・・・・・・」

 フィリシアに呼ばれるも、返事を返さないヴィルヘルミナ。

「無事でよかった。怪我をしたところは・・・・・」

「・・・・・この度は、ご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした。わたくしのせいで皆様に無用な心遣いを・・・・・」

 心配するフェリシアの言葉を遮り、ヴィルヘルミナがまるで社交辞令な謝辞を述べ出し、手を繋いでいる昊斗そらとがため息をつく。

「・・・なの」

「え?」

「・・・・・・どうして、そんなに他人行儀なの!?」 

 俯いてヴィルヘルミナの気持ちの籠らない謝辞を聞いていたフェリシアが、顔を上げ普段の彼女からは想像も出来ない怒鳴り声を上げる。だが、その目には涙が流れていた。

「そんなに、私たちに・・・・私に心配されたくなかった?!心配すること自体迷惑だった!?」

「・・・・・・・だって、わたくしは・・・今まで姉様たちにいっぱいご迷惑をかけたんですのよ?そんな人間を心配するなど、無駄なことではないですか」

「大切な”妹”が危険な目にあって心配しない”姉”がいると思う?!誰かを心配する気持ちに無駄なことなんてない!絶対に、絶対にあるはずない!!」

 周りを気にせず怒鳴り散らすフェリシアの横に、アリエルが並ぶ。

「そうですよ~。それに~、ミーナさんがかけた迷惑なんて、私たちにしてみれば~反抗期に入った可愛い妹がしでかした程度のモノなのですよ~?そんな妹の言動を~、迷惑なんて思う姉はいません~、ですよね~フィリシアさん?」

 フェリシアの肩に手を置き、とんでもなく器の大きなことを力の抜ける声でいうアリエル。

 

「・・・・・ほら、聞きたいことがあるんだろ?」

 昊斗そらとに促され、今にも泣き出しそうな眼で見るヴィルヘルミナだったが、昊斗そらとと手を繋いでいる効果か、少し戸惑いを見せながらも意を決して昊斗そらとの手を一度強く握り、フェリシアたちを見つめた。


「あ、あの!姉様たち・は・・・・・わたくしのことを嫌いになっては・・・いないのですか?」

 ヴィルヘルミナの手と声が震える。すると、昊斗そらとの手を握る反対の手が、温かいもので包まれる。

「・・・・・・・」

 無言で応援するかのようにアイリスがヴィルヘルミナの手を握っていた。


「・・・・あなたを嫌いになる理由があるはずないでしょ?あなたはどうなのヴィー(・・・)?私の事、嫌いになった?」

 今では(ディートハルト)にしか許していなかった「ヴィー」と言う愛称。その昔、この愛称でヴィルヘルミナを呼んでいた一人が、彼女が幼いころから憧れ、そうなりたいと目指した目の前にいる優しい”姉”のよう接してくれたフェリシアだった。

 

「きら・・・嫌いに・・・嫌いになれるわけ、ないじゃないですか・・・・」

「だったら、何の問題もないんじゃない?ねぇ、ヴィー」

 そこに居たのは、先ほどまでどなり散らしていたフェリシアではなく、ヴィルヘルミナがよく知る優しいフェリシアだった。

 

 スッと、昊斗そらととアイリスが手を離す。


「姉様・・・・・・」

 涙を流しながら駆け寄ってきたヴィルヘルミナを、フィリシアが優しく抱き止める。そして、その二人をアリエルが抱きしめる。

「お帰りなさい・・・・本当に、よく無事で」

「お帰りさない~、ミーナさん」

「フェリシア姉様、アリエル姉様・・・・・う・・・・うわああああああああ・・・・」

 頭を撫でられ、ヴィルヘルミナが堰を切ったように泣き出した。


 満足そうにうなずいていると、昊斗そらとの後ろに人影が現れる。

「よかった・・・フェリちゃんたち、本当に心配してたから」

「まぁ、ヴィルヘルミナの方は色々と抱えて気持ちに余裕がなかったみたいだからな・・・・これから、会話を通じて出来てしまった溝を埋めていけるだろうさ」

「・・・・・それはそうと、昊斗そらと君。どうして、ヴィルヘルミナさんと手を繋いでいたのかな?その辺りの事情を詳しく聞きたいんだけど?」

「それに関しては、私も聞いておきたいですね、マスター?」

 一遍して、どす黒いオーラを纏う冬華とうか玉露ぎょくろ。いつもなら二人の迫力にたじろぐ昊斗そらとだが、フェリシアたちを見つめていた穏やかな表情から急に険しい顔つきに変わり、二人の手を掴むと学園の外へ歩き出した。

「悪い、ちょっと付き合ってくれ」

「え?え?そ、昊斗そらと君?」

「マスター?・・・ちょっと、昊斗そらと!どうしたの?!」

 真剣な顔つきの昊斗そらとに手を引かれ、何故か期待するかのような眼差しで顔を赤くする冬華とうか玉露ぎょくろ

金糸雀カナリアも、一緒に来てくれ」

「は、はい!」

 昊斗そらとに呼ばれ、慌てて三人の後を追う金糸雀カナリア

 一体何事だろうと顔を見合わせるフレミー達、姫君の家臣たちはただ四人を見送るだけだった。


*********


「たしかに、それは由々しき事態かもね」

 本当に何事かと、歩きながら昊斗そらとを問いただした冬華とうかたち。昊斗そらとの話を聞き、彼が険しい表情なわけを知った。

「帝国が他の国より科学技術が進んでるってのは聞いていたんだが、実際に目の当たりにすると、あれは異常だよ」


 帝国で開発されたという実験兵器「イエーガー」。高度な科学技術で製造されたそれは、明らかにこの世界の基準ではオーバーテクノロジーの塊だった。


 昊斗そらとたちが足を止めた場所は、先刻昊斗(そらと)がヴィルヘルミナとアンナを救出した第36倉庫区の入口だった。

 入口には倉庫区の守衛ではなく騎士団の団員が立ち、慌ただしく出入りをしている。


「アルフレットさん!」

「!皆さん、どうされたのですか?このような所に」

 現場で指揮を執っていたのは、フォルトの副官であるアルフレットだった。昊斗そらとたちの姿を認め、驚きを隠せないアルフレット。


「なんだか、慌ただしいですね」

「え、えぇ・・・何でも、帝国軍から盗まれた秘密兵器がここに在ったらしく、その残骸と思われるものを帝国の調査隊が回収するってことで、現在現場を封鎖しているんです」

 彼の話を聞き、昊斗そらとは眉をひそめる。

「いくらなんでも、対応が早すぎませんか?」

 昊斗そらとたちが倉庫区から脱出して、まだ一時間も経っていない。しかも、この倉庫区は小国連合が治外法権を盾にし、ルーン王国は手が出せない場所だった。

「我々も驚いているんですよ、ここは我々騎士団でも手が出せなかった場所だったのですが、どうも帝国からこの倉庫を管理している小国連合に圧力が掛かったみたいで、呆気なく立ち入ることが出来ました」

 その話を聞き、昊斗そらとたちは顔を見合わせる。

「アルフレットさん、中に入れてもらえませんか?」

「え?」

 突然の昊斗そらとの申し出に、アルフレットは少し戸惑う。

「ご心配なく、現場を荒らすようなことはしませんから」

 

 フォルトから、彼らがルーン王国の恩人であり何かあれば協力するよう指示されていたアルフレットは、自分が付き添うことで中に入る事を許可した。


 倉庫区の中に入り、現場に近付くにつれ鼻をつく臭いが辺りに漂う。

「ここだな」

 開けた場所の中心に、真っ黒に焦げた残骸が未だ煙を上げている。

 周りの建物が大きく破壊され、戦闘の激しさを物語っていた。

昊斗そらと君、いくらなんでも暴れすぎだし、バラバラにしすぎだよ」

「相手が、再生能力を有していた可能性があったんだ。再生できないぐらいにバラバラに切り刻むのは当然だろ?」

 呆れ顔の冬華とうかに、昊斗そらとが言い訳を始める。

「こ、これはオクゾノ殿のやったことなのですか?!」

 昊斗そらとの強さをきちんと理解していなかったアルフレットは、飛びあがりそうになる。


「我が主。スキャンしましたけど、どうも余計なものが混ざり過ぎていて、これを復元する(・・・・・・)のは無理そうです」

「そっか。昊斗そらと君、どうする?」

 問われた昊斗そらとが少し思案し、ある倉庫へ視線を移す。


「なら、あそこを調べてみるか。こいつ、あそこから出てきたんだ」

 前面を破壊された倉庫の中に入ると、広大な空間が広がり大きな兵器でも余裕で保管できる程だ。


金糸雀カナリア、どう?」

 冬華とうかの問いに、眼を閉じている金糸雀カナリアがゆっくり目を開ける。

「行けそうです。玉露ぎょくろちゃん、手伝って」

「了解」

 何かの作業を始める昊斗そらとたち。


「あの、皆さんは何をしようと?」

 そんな昊斗そらとたちの意図が全く読めないアルフレットが、恐る恐る質問する。


「え?表に転がっている化け物を復元するんですよ」

 あっけらかんと答える昊斗そらとに、アルフレットは全く理解できず目が点になるのだった。


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