表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
創造神たちの傭兵  作者: 仁 尚
学園の姫君たち 合同学園祭 編
36/180

(11) 吹き荒れる混乱 (合同学園祭 三日目③)

 アパートメント内の使用人たちの遺体を、騎士団に詰めていたアルフレットに連絡し、任せる事にした昊斗そらととフレミーが、外へ出てきた。


「フレミー。君は今すぐ学園にいるフェリシアの下へ戻るんだ。君が行くまでは玉露ぎょくろ金糸雀カナリアが付いている」

「はい。・・・・ソラトさんは、姫様も狙われると?」

「あくまで保険だ。相手の思惑が分からずこちらが後手に回っている以上、打てる手は全て打つ」


 そう行って、フレミーに通信機を手渡す。

「ここから学園までの最短ルートを取れば、騎士団本部を通る。君の装備を準備しておくように伝えておくんだ」

「分かりました。ラファル!」

 フレミーの契約する風の精霊ラファルが姿を現し、フレミーは風のベールを纏う。

「では、ご武運を」

「そっちもな、無茶はするなよ」

「はい!」

 気を使ってもらい、不謹慎ながら顔を赤くするフレミーは、駆け出したかと思ったら、一気に建物の屋根まで跳び、屋根伝いに走っていった。


冬華とうか玉露ぎょくろ金糸雀カナリア・・・応答してくれ」


 目を瞑り、意識を内側に集中する。


 すると、昊斗そらとの意識が真っ白な空間に降り立つ。

 精神空間スピリットスペース


 昊斗そらとたちが創神器ディバイスを介して構築する特殊空間で、この中では時間の流れが外とは違うため、切迫した状況での通信などに用いている。


「どうしたの、昊斗君?精神空間での通信なんて・・・?!」

 アリエルの警護に付いている冬華とうかが現れ、昊斗そらとの格好を見て驚きを見せる。


昊斗そらと!今こっち忙しいのよ!!いきなり・・・・」

「そ、昊斗そらとさん!どうしてその格好(装備)を!?」

 遅れて現れた玉露ぎょくろ金糸雀カナリアも、冬華とうか同様に驚いている。


「すまない、俺のミスで皇女が誘拐された」

 昊斗そらとの言葉に、全員が目を見開く。


「誘拐されたって・・・・昊斗そらとあなた、何してたの?!」

 玉露ぎょくろ昊斗そらとへ詰め寄る。

「言い訳するつもりはないが、俺も銃で武装した集団に襲われて・・・・その隙にやられたようだ」

「お、襲われたって・・・・」

 詰め寄っていた玉露ぎょくろが、ショックを受けて後ずさる。


「それで昊斗そらと君、犯人につながる何か手がかりは?何か見なかったの?」

「用意周到に準備していたらしく、特には・・・・ただ、俺が襲われる前に、アパートの前に不審なトラックが停車していた。ホロに運送会社の名前が入っていたが・・・」

昊斗そらとさん、その画像出せますか?」

「ああ、ちょっと待ってくれ」

 バイザーに保存していた画像を金糸雀カナリアへ送る。

「・・・・・・・これ、港岸区にある運送会社のトラックですね。玉露ぎょくろちゃん、この会社周辺の会話ログある?」

「・・・え?あっ、ちょっと待って・・・・・・これだ。数日前に、トラックが一台盗まれたみたいね・・・・古い型の奴で廃車予定の車両だったから、騎士団には盗難届出してないみたいだけど」

「つまり、犯人は盗難車を使っている可能性があるってことね・・・・・」

 冬華とうかが、考えを巡らせるように首を傾げる。

「・・・・金糸雀カナリア、悪いけど王都の上空を旋回させてる機動端末の一機を貸してくれ」

 金糸雀カナリアはうなずき少しの間、目を瞑る。


「・・・・使用権を一時譲渡しました。これで昊斗そらとさんも操作できます」

「助かる」

「・・・・マスター、今からでもそちらに戻りましょうか?その方が・・・・」

 玉露ぎょくろが仕事モードに入っている。だが、昊斗そらとは首を横に振る。

「いや、もしかしたらフェリシアも襲われる可能性がある。フレミーがそっちに向かっているが、まだ時間がかかるだろう。玉露ぎょくろ金糸雀カナリアは、フェリシアを守ってくれ」

「分かりました、主も昊斗そらとさんもお気をつけて」

「・・・・・・・・・」

 金糸雀カナリア玉露ぎょくろの姿が消える。


昊斗そらと君。本当に大丈夫?あまり、余裕なさそうに見えるよ?」

 バイザーを外した冬華とうかが、心配そうに昊斗そらとの顔を覗き込む。

玉露ぎょくろのサポート無しで戦ったの、久々だったからな・・・俺よりも、冬華とうかの方が大変だろ?金糸雀カナリアのサポートが無いと・・・」

 昊斗そらともバイザーを外し、冬華とうかを真っ直ぐ見つめる。

「分かってる。でも、何が起こるか分からない今の状況を考えると、戦力を分散配置させておくしかないもんね。だから、玉露ぎょくろちゃんの申し出を断ったんでしょ?」

「あいつは、納得してなかったみたいだけどな・・・・・・俺は、皇女を探す。冬華とうかはアリエル王女を頼む」

「うん、それが私の仕事だからね・・・・・昊斗そらと君、気を付けて」

「あぁ、冬華とうかも」

 笑みを浮かべ、冬華とうかの姿が消える。

 

「お待たせした、オクゾノ殿」

 冬華とうかたちとの通信を終えたと同時に、ペトラとフローラがアパートメントから現れる。


 出てきた彼女たちの恰好は、”騎士”と言うより”兵士”と呼んで差し支えないものだった。


 二人とも、近未来的な戦闘用スーツを着ている。制服の時に比べて、腕や脚が太くなっているのを見ると、装着者の力を増幅するパワーアシスト機能が備わっていると推測できる。

 胸などのバイタルエリアには、複合素材を用いた分厚いアーマーが付いているが、女性向けの仕様らしく全体的にはボディーラインが強調されたデザインをしている。


 戦闘スタイルに応じてなのか、それぞれ施している武装が違った。


 フローラは、邪魔にならないようにか、いつも下している髪を一つにまとめ団子状にピンで止めていた。さらに、頭部を守るためのヘッドギアに、ゴーグルが装着されている。

 後ろ腰にはの軍用拳銃に、右太ももにはコンバットナイフ。だが、そんな武器よりも彼女の両腕に固定された”物体”に目が行ってしまう。

 それはパッと見、短銃身のアサルトライフルにも見えるが、マガジンは大容量のドラムマガジンが付いている。短い銃身の下には、剣などの破壊を目的としたソードブレイカーが装着されているため、近接戦闘を主眼に開発された武装だと推測できた。両腰には、専用のマガジンが三つずつ装着されている。


 もう一人、ペトラの方はいよいよ持って訳が分からなかった。

 基本的な装備はフローラと大差ないが、コンバットナイフの替りに、左ももにスローイング・ダガーを五本つけている。

 そして、その両腕には”部品”がいくつもくっついている。銃身のように見えるものが付いていたり、刃物のような部品が付いていたりと、それ単体では何なのか窺い知ることは出来ない。


「オクゾノ殿、時間もありませんし、ここは手分けして・・・・」

 ペトラの提案に、昊斗そらとは手を前に出し遮る。


「それこそ、時間の無駄だ」

「では、どうすると?!」

 憤慨するフローラに、昊斗そらとの視線が横に動く。


 すると、二人のゴーグル内に昊斗そらとが見た動力車の画像と詳細なデータが映し出される。

「な・・・・・・」

 驚いて、画像の向こうに立つ昊斗そらとを大きな目で見つめる二人。


 本来、彼女たちがつけているヘッドギアは、司令部や部隊との情報共有用に使われる通信装置である。だが、現在、部隊を離れている二人のヘッドギアは、ネットワークから切り離された状態にある。しかし、帝国の誇る最新装備。パスコードが無ければ、外部からのアクセスは不可能なはずなのだが・・・・・・・


「そのトラックは、犯人が犯行に使ったと目される車両だ。数日前、運送会社から盗まれ、今は港岸区の倉庫区画に止まっている」


 昊斗そらとの説明に合わせて、倉庫区の上空からのリアルタイム映像が映し出される。

「十数分前の映像に、アンナ女史と思われる人物が武装した集団に、倉庫内へ連れて行かれる光景が映っていた。そして、犯人の一人が大きな袋を抱えている・・・・となると、この袋の中身は・・・」

「姫!?」

 ペトラが鋭く昊斗そらとを射抜くように見る。

 

 実は、殺された使用人たちの中に、アンナの遺体は確認されなかった。そのため、捕まったかのかあるいは・・・・という予測も立ったのだが、映像を見る限りで、前者の方であった。彼女が捕まっているということは、皇女ヴィルヘルミナも一緒に捕まっていると考えるのが自然である。


「現状、敵の目的が皇女のみなのか、他にもあるのかわからない以上、騎士団は下手に動けないため、戦力は期待できない。なので、俺たち三人で奪還を行う。いいな?」

 二人が無言でうなずく。他国に雇われている傭兵に命令されるなど、普段の二人なら反論の一つも並べる所だが、切迫した状況と昊斗そらとの纏う”空気”に気圧されていた。


「それじゃ、いくぞ」

 昊斗そらとの合図と共に、三人は皇女たちがつかまっている倉庫へ向け、全速力で駆け出した。


**********


 昊斗そらととの通信が終わり、冬華とうかはバイザーを複合センサーモードに切り替える。昊斗そらとの情報で、犯人が銃器を所持している可能性があると分かり、辺りに該当者がいないか確認を始める。


 アリエルに付いている冬華とうかは現在、アイディール学園とは別の学校へ来ていた。


 クレスト連邦王女アリエルとの親睦を深めるということで、ゲストとして呼ばれたアリエルは講堂で生徒たちから質問などを受けている。

 

 講堂内には、学生に教師、保護者の姿も見えたが、武器を所持した者はいなかった。


 とはいえ、攻撃方法はいくらでもあるため、冬華とうかは警戒レベルを引き上げる。


 すると、遠くで何かが破裂するような音が聞こえた。

「?」

 構内が俄かに騒がしくなった次の瞬間、爆発音と共に振動が伝わる。一拍置き、外から悲鳴が聞こえてくる。

「な、なに?爆発?!」

「近かったぞ!!」

 騒がしくなっていた構内が、一気に混乱に包まれる。


「王女アリエル!形だけの王族に死を!!」

 タイミングを見計らったように、保護者席にいた男が立ち上がり、右手を突き出す。

 彼の前に、尖った岩の塊が現れ槍のように変化し、アリエルに向かって打ち出される。


「あ・・・・・・」

 縫い付けられたように、立ち尽くすアリエル。

「しまった、精霊術?!」

 冬華とうかが駆け出すと同時に、スーツから戦闘服に変わる。いつもの戦闘服に昊斗そらと同様、バイザーを付けブーツは機械式の脚甲へと変化し、左腕には脚甲と同じデザインの手甲が装備されている。

 左腕の手甲から何かを取り出し、前へ投げる。


 アリエルの前の床に、タロットカード大のカードが刺さり、淡い光を放つ。

 王女アリエルに向かって飛んでくる岩の槍が、見えない壁に阻まれ、ゴロゴロと音を立てて崩れる。

「そこまでよ!」

 カードがガラスのように砕ける中、冬華とうかがアリエルの身を守るように前に立ち、精霊術を放った男に”杖”を向ける。


 混乱する生徒や保護者たちが、巻き添えを避けるため講堂の外へ逃げていく。

 そんな中、数人が残り冬華とうかを睨みつけていた。


「ちっ・・・やはり、護衛がいたか。だが!一人で何が出来る!!」

 男とその仲間全員が、精霊術を練り始める。だが、冬華とうかから見れば、その構築速度は愚鈍と言っていいものだった。


 冬華とうかは、再び手甲から何枚ものカードを取り出し、空中へ放り投げる。

 そして、手にした”杖”の先端を宙を舞うカードへ向ける。

 

 手にしている”杖”は、冬華とうかがいつも使うものとは全く違うものだった。

 杖の先端には、ストックのないライフルの本体に似たものがくっついている。口径の大きな銃口に、銃身の上下には放熱を兼ねたフィンブレード。本体にはマガジンが左右対称に装着され、片方のマガジンの後ろにはグリップガードに、グリップとトリガーが設けられ、銃とも槍とも言える奇抜なデザインをしており、これを杖と形容していいのか、正直迷ってしまうものだった。


 グリップを反対側のマガジンの位置まで移動させ、冬華とうかは思いっきりトリガーを引く。

 大口径の銃口から拡散した光が放たれ、カードに向かって飛んでいき、命中した瞬間、カードから無数の鎖が飛び出し、男たちの身体を拘束する。


「な、なんだこれは?!うわ!!」

 全身を鎖でグルグル巻きにされ、バランスを崩した男たちが無様に這いつくばる。


「これで・・・・・全員かな?」

 杖を構えたまま、辺りを警戒する冬華とうか。構内には、逃げ遅れた人間が数人いたが、こちらに敵意を向ける者はおらず、別働隊の反応も見当たらなかった。

 外からは、いくつもの爆発音が聞こえ、遠くから悲鳴などが途切れ途切れ聞こえてくる。


「一体、何が起こっているの?」

 アリエルを安全な場所へ、と彼女のじいやであるジョゼフともに、アリエルを守りながら講堂を脱出する冬華とうか


 外へ出ると、至るとことから煙が上り、人々が逃げ惑っていた。


 この混乱が学生区だけでなく、王都全体に広まろうとしていることに、冬華とうかはまだ知らずにいたのだった。


  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ