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創造神たちの傭兵  作者: 仁 尚
学園の姫君たち 合同学園祭 編
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(10) 皇女誘拐 (合同学園祭 三日目②)

 時間は戻り、合同学園祭三日目の早朝。警護の準備をしていた昊斗そらとたちのベースに、フォルトの副官である、アルフレットがやってきた。


「暴動、ですか?」

 

 玄関先で応対した昊斗そらとの顔つきが険しくなる。


「まだ、断定はできないのですが、ディアグラムの北にある街で住民たちが暴れているという情報が支部を通じて本部に連絡がありました。情報が錯綜しているため確認が取れてはいませんが、支部から派遣した部隊が全滅したという報も届いており、事態を重く見た団長が、本部から部隊を編成して応援に行くこととなりました。王都の守備に関しては、影響が殆どありませんが、この混乱に乗じて・・・と不逞な輩が現れるやもしれません。ですので、皆さんもそのことを頭の片隅に留めておいてください。もし、何かありましたら、この通信機で本部にご連絡いただければ、すぐに団員を派遣しますので」


 昊斗そらとに、一昔前のトランシーバーのような形をした無骨な通信機を二つ手渡すと、アルフレットは「自分はこれで」、と敬礼し足早に去っていった。 


 アルフレットから聞いたことを、冬華とうかたちに伝え、昊斗そらとはヴィルヘルミナの下へ、冬華とうかはアリエルの下、玉露ぎょくろ金糸雀カナリアはフェリシアの手伝いに、それぞれ出かけて行った。


 昨日のことが尾を引いているらしく、ヴィルヘルミナを迎えに来た昊斗そらとは、彼女の教育係であり秘書のアンナに、「姫様は本日、お部屋から出たくないと申されているので、警護は不必要」とかなり荒い語彙で追い返されてしまう。


 とはいえ契約がある以上、「はい、そうですか」と引き下がるわけもいかず、昊斗そらとはアンナに、向かいにある建物の屋上で周囲を監視していると一方的に伝え、屋上へ向かう。そんな昊斗そらとを、アンナは睨みつけるように見送る。


 騎士団から貰っていた国王印の入った許可書を建物の持ち主に突きつけ、昊斗そらとはヴィルヘルミナが留学中、暮らすために一棟買いした高級アパートメントが見渡せる向かいのアパートメントの屋上に陣取る。


「しかし、あの人(アンナ)ってあっちが本性なのか?」

 合同学園祭が始まってから、アンナが何か切羽詰まったと言うか、余裕がないように昊斗そらとには見えた。

 ヴィルヘルミナの言動に始終晒される立場なので、何かに当たりたくなる気持ちを分からなくもないが、だが出会った頃と比べたら、今日は別人のようだった。


「まぁ、他人の事情を詮索するのは、マナー違反だよな」

 そう言い聞かせ、昊斗そらとはバイザーのセンサー機能を通常より広めに設定し、不審人物がいないかを調べ始めるのであった。


 それは、ちょうど昼に差し掛かる時だった。


「ん?」

 昊斗そらとが、冬華とうかに持たされたお弁当を食べながら、アパートメントの様子を窺っていると、一台のホロの付いた運搬用動力車がアパートメントの前で停まった。

 動力車は、帝国から流れてきた技術を基に、現在各国で製造されている乗り物で、馬車にとって代わる乗り物として、普及が進んでいる。


「何か荷物でも届いたのか?」

 バイザーの望遠を絞り、ホロに書かれている文字を読む。

 動力車自体は、さほど珍しい物でもないのだが、昊斗そらとの中で、何かが引っかかった。

「運送屋?・・・・・・」


 昊斗そらとが、バイザーの複合センサーを起動しようとした時だ。

「・・・?」

 昊斗そらとはフッと、違和感というか嫌な予感が過る。


 一呼吸置き、バイザーに警告表示が点滅する。バイザーの赤外線センサーがとらえたのは、階段を使って複数人駆け上がってきている姿だ。

 しかも、全員がライフルで武装するというおまけ付き。近付いてくる者たちについたアンノウンを示す黄色から、敵性を示す赤色に表示に切り替わる。


 ちなみに、昊斗そらと冬華とうかが付けている機械式バイザーは、地球出身の傭兵全員に支給されているもので、玉露ぎょくろたちが使っている義体同様、複数の世界にある技術を融合させて開発された、”組合”オリジナルのものだ。

 いくつかモデルが存在し、ランクによって機能が変わってくる。昊斗そらとたちがつけているのは最上級モデルで、知覚できないモノはないと言われている。


 玉露ぎょくろたちと行動している際は、必要としない装備なのだが、彼女らが義体に入り活動しているときだけ、いくつかのサポートが受けれなくなってしまい、彼女たちと別行動する際は不便しているのだ。(玉露ぎょくろ金糸雀カナリアの能力を鑑みれば、義体を動かしながら昊斗そらとたちのサポートをするなど造作もないことだが、未だに原因が突き止められずにいる)


 昊斗そらとは、思考をフル回転させ対応策を数パターンほどシミュレートする。


 駆け上がってきた武装集団は、扉の前まで来た瞬間、躊躇いなく銃のトリガーを引く。

 階段と言う密閉空間に大音響の銃声が響き渡る。


 木でできた屋上の入り口が、見る見るうちに穴だらけになっていく。

 全弾撃ち尽くし、全員が空になったマガジンを捨て、新しいものに交換する。

 

 かろうじて蝶番にぶら下がる扉だった板切れをけり破り、集団が屋上になだれ込む。

 数は6人。

 ライフルを構え屋上を見渡すが、死体はおろか人影すらなかった。 

「・・・・・・誰もいねぇじゃんよ!」

「おかしいな、ここからアパートを見ていた奴がいたんだけどな」

「何かの見間違いだろ?」

 誰もいないと判り、全員が構えていた銃を下した。その行動が彼らにとって、致命的な間違いだったと後悔することとなる。


 一人の上に影が落ちる。

「ん?」

 なんだろう、と上を見上げた瞬間。降ってきた何かが肩口に当たった瞬間、強烈な痛みとしびれが走り、身体から力が抜ける。

「がは・・・・」

「まず、一人!」

 膝から折れるように倒れ込む男の陰で、降ってきた物体《昊斗》が笑みを浮かべる。その右手には、洗練された工業製品のような黒い刀身の”ブレード”が握られ、腰にはブレード専用の”鞘”が下げられていた。

 昊斗そらとは、襲撃者たちの攻撃を避け、さらに虚を突くために天高く跳躍していた。


「こ、こいつ!」

 倒れゆく仲間を見て、他の面々が銃口を昊斗そらとに向けるが、仲間の陰に隠れる昊斗そらとを狙えなかった。


 仲間を撃てないと躊躇する襲撃者たちの隙を昊斗そらとが見逃すはずがなく、倒れる男を盾にして一番近い目標へ奔る。

「二人目!」

 逆袈裟気味に斬り上げ、そのまますれ違う昊斗そらと。衝撃で宙に浮く二人目を、固まって立っている三人に向かって蹴りだす。


 反応が遅れ、飛んできた仲間とぶつかり三人が、体勢を崩してしまう。一気に距離を詰める昊斗そらとは、ブレードを横に薙ぎ、三人纏めて斬り伏せる。


「あ・・・あ・・・」

 一瞬のうちに、五人の仲間が倒され残った一人が恐怖で腰が引けたままライフルを構える。


 ゆっくりと最後の一人に向き直りながら、昊斗そらとブレードを肩に担ぐ。

「やめときなよ、無駄に痛い思いはしたくないだろ?お嬢さん?」

 自分より若く見える男に「お嬢さん」と呼ばれ、女性は歯を食いしばる。


「ば、馬鹿にしないで!!」

 トリガーを力いっぱい引き、銃口から彼女の怒り(弾丸)が吐き出される。

「・・・・・はぁ」

「!?」

 ため息をつく昊斗そらとが、飛んでくる銃弾をブレードを使い、目視出来ないほどの速さで全てを弾き始める。

 人間離れした行動に、女性は驚愕より更なる恐怖を感じた。これで殺せなければ、自分が殺されてしまう、と。


 だが、無情にもすぐにマガジン内の弾は撃ち尽くされ、カチン、カチン、とトリガー音が空しく響く。

「い・・・・いや・・いやぁ・・・」

 涙を流しながら首を振り後ずさる女性に、昊斗そらとは左手で、鞘を持ち鞘口を女性向ける。 そして、バイザー画面のトリガーボタンを視線入力する。

「ぎっ・・!!・・・・」

 ガスが抜けるような音が起き、女性に何かが当たった瞬間、電撃が発生しその場に女性は崩れ倒れる。

 鞘口と平行に並ぶ穴から、ワイヤーが射出され先端が女性の太ももに刺さっていた。


「・・・・・・・・おし、制圧完了」

 彼の周りに倒れている襲撃者たちが、うめき声を上げる。

 女性は勘違いしていたが、昊斗そらとは命を奪うことなく、全員を無力化していた。


 彼が手にしているブレードは、昊斗そらと用に強化され、本来なら絶対無比な切断力を誇る高周波ブレードなのだが、峰側には出力を調整すれば人間からロボットにまで使えるスタンガン機能を有している。ブレードの専用鞘にも、色々と機能が持たされていて、女性に使ったのは鎮圧用のスタンワイヤーである。


 ブレードを鞘へ収め、倒れている一人へ近づく。


「それで?あんたたちは何処の誰で、何で俺を襲ったんだ?」

 だが、男はだんまりを決め込んでしまう。

「やっぱ、しゃべらないか・・・・・」

 

 昊斗そらとはおもむろにブレードを抜き、そのまま男の顔の横に落とす。ブレードは何の抵抗もなく屋上の床へ吸い込まれるように刺さる。


「あんたたちさ・・・・・身体が動かないから感覚もない、と思っているのかもしれないけど、”痛覚”はちゃんと生きてるからな?」


 その意味を理解するのに、多少時間を有した襲撃者たちは、顔色が真っ青に変わる。

 つまり、拷問を受けてもきちんと痛みを感じるぞ、と言っているのだ。


 我が身可愛さから、口々にしゃべり出す襲撃者たち。


 彼らは、もともと別の町でゴロツキをしているらしく、街の上役から依頼を受け、ディアグラムで起こる”大事おおごと”を盛り上げて来いと言われたそうだ。王都に着いて早々に協力者と言うやつに、武器を持たされて合図と共に暴れろと指示されて、渡された地図の印の場所に着たら昊斗そらとを見かけ、邪魔になりそうだから襲った、と白状した。


 とりあえず昊斗そらとは、通信機を取り出し騎士団本部に連絡して現在位置を知らせ、襲撃者たちの処遇と、彼らから聞いた話を伝える。

 通信機の向こうが、何やら騒がしくなったのだが、気にすることなく通信を切る。


 昊斗そらとが意識を集中すると、スーツ姿がいつもの戦闘服へ変わる。その光景に襲撃者たちが驚いて声を上げるが、それも無視する。

 ただ、いつもと違うのが、軍用ブーツが光沢のある機械じみた物へ、スーツ姿と同様に顔にはバイザーと腰には愛用の多機能付きの専用鞘を下げている。


 昊斗そらとは、ヴィルヘルミナの居るアパートメントを向くと、猛然と駆け出し手すりを飛び越えた。

「な・・・・!」

 まさかの光景に襲撃者たちは絶句する。


 自由落下ののち、空中で数回前転して地面に着地する昊斗そらと

「きゃ!」

 着地した後ろで、聞き覚えのある声が聞こえたが、昊斗そらとは振り向くことなく走り去る。先ほどからバイザーには、アパートメントの全景が3Dで映っているのだが、そこはあるべき反応がなくなっていたからだ。


「体よく時間稼ぎをされたってことか?くそっ!」

 最悪の事態を想定し、昊斗そらとが吐き捨てる。


 アパートメントの入口に取りつき、力任せにドアをこじ開ける。

「!・・・・・」

 中から、硝煙の匂いと血の匂いが混ざり合い、鼻をつく。


「オクゾノ殿!!」

 名前を呼ばれ、昊斗そらとが振り向くと、息を切らせたペトラに、フローラ。そしてフレミーが立っていた。


「一体、何があったのですか?空からオクゾノ殿が降ってきたときは、驚きましたよ。フレミー殿なんて尻餅をついたくらいだ」

「ぺ、ペトラ殿!!」 

 フレミーが顔を真っ赤にして慌てる。昊斗そらとの方を見たフレミーは、モジモジとスカートの裾を押さえる。

 昊斗そらとの着地地点に運悪く(良く?)居合わせたフレミーは、驚いて尻餅をついた際、盛大にスカートがめくれて中が丸見えになったのだが、昊斗そらとは彼女たちに気が付くことなく走り去ったのだった。


「皇女様の部屋は?」

「・・・・ヴィルヘルミナ様がどうかされたのですか?」

 自分たちと、昊斗そらとの空気感が違うと、最初に察したのはフローラだった。

 そして、一番浮き足立っていたフレミーが昊斗そらとの格好を見て、表情が女の子から騎士へと変わる。


「・・・・・」

 無言で、入口から身を引く昊斗そらと


 三人が恐る恐る中を覗いて、絶句する。廊下には、皇女の身の回りを世話していた使用人たちが息絶えていた。全員、銃で撃たれたらしく、額と胸を一発ずつ撃ち抜かれている。


「ひ、姫様!?」

「姫!!ご無事ですか?!」

 自分たちの主の安否を確かめるために、フローラとペトラが駆け出す。

「二人とも!何か罠が仕掛けられているかもしれません!!不用心に立ち入っては・・・・」

 叫ぶフレミーの肩に手を置く昊斗そらと

「大丈夫、伏兵に罠の反応は皆無だ」


 二人の後を追い、中へ入る昊斗そらととフレミー。


 皇女の部屋は四階だったらしく、エレベータを下りた先で、ペトラとフローラが佇んでいた。

「お二人とも・・・・大丈夫ですか?」

 フレミーに声を掛けられ、フローラはその場にへたり込み、ペトラは怒りをぶつけるように柱を殴りつけた。


 彼女たちの先にある壁には、使用人たちの血で文字が書き殴られていた。


『皇女は頂いた!!』と。


 

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