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創造神たちの傭兵  作者: 仁 尚
学園の姫君たち 合同学園祭 編
30/180

(5) 顔合わせ

 フェリシアたちが通う”王立アイディール学園”は、初等部から高等部までの一貫校であるため、学生区内でも敷地面積と建物の多さは随一である。

 元は、貴族の子女のみが通う貴族学校であったが、十数年前の”改革”において一般人にも開かれた学園となったのだ。


 とはいえ、高額な入学金等の問題で、未だに一般市民の子供を対象とした一般クラスの数は学園の初等部から高等部を通してそう多くなく、真の意味で”開かれた学園”になったとは言えなかった。


 合同学園祭は、そんな学園を開かれた学園である、と一般市民たちにアピールする場という意味合いもあった。


「・・・・・・・・」

 アイディール学園の正門に五つの人影が並ぶ。遠くから、生徒たちの喧騒が聞こえてくる。


「これで一つの学校かよ・・・・・俺たちの通ってる大学より広いんじゃないか?」

「そうだね・・・学部全部集めてもここまで広くはないかも」

 仕事の打ち合わせと言うことで、傭兵の制服ではなく、スーツを着た昊斗そらと冬華とうかは、フェリシアなどから話に聞いていたとはいえ、その広さにげんなりしている。


「さすがは金持ち学校、無駄なものが多いわね」

「う~ん、否定できない・・・かな」

 昊斗そらとたちとは対照的に、玉露ぎょくろ金糸雀カナリアはいつもの格好のままだ。

 そして、金糸雀カナリアに手を引かれたルールーが、初等部の制服姿で周りを見渡している。

 

 話は昨日まで遡り、アリエルを無事、じいやこと彼女の従者であるジョゼフの下へ届けたフェリシアたち一行は、まだ遅くない時間だからと玉露ぎょくろ金糸雀カナリアと共に、彼女たちのベースへと寄り道していた。


 帰ってきた玉露ぎょくろ金糸雀カナリアに、昊斗そらとたちは引き受けた国王からの依頼とその内容を、そっと二人に伝えた。


 依頼内容と警護対象者の名を聞いて、玉露ぎょくろ金糸雀カナリアは驚いて固まってしまった。

 昊斗そらとたちが担当する警護対象こそ、レヴォルティオン帝国第一皇女ヴィルヘルミナ・エルザ・フォン・ハイゼンベルグと、クレスト連邦王女アリエル・ベルナデット・フルール・シャリエだったのだ。


 二人の様子がおかしいと、フェリシアたちが帰った後に問いただした昊斗そらと冬華とうかだったが、彼女たちの話をきいて逆に固まってしまった。


 だが、二人の言い分を聞き、昊斗そらとは一瞬依頼を断ろうとも考えたが、即座にその考えを捨て去った。

 

 理由はどうあれ、一度受けた依頼をこちらの都合で反故にするというのは、プロとしてやってはならないことだと、師匠であるノートからきつく言われていた。


 なので当分の間、無用な争い(主に皇女との間で)を避けるために、昊斗そらと冬華とうかの二人で依頼に当たることとなり、玉露ぎょくろ金糸雀カナリアは、フェリシアのクラスの出し物を手伝うことに専念する運びとなった。


 そして、昊斗そらと冬華とうかはアイディール学園の学園長と警護対象者の二人との顔合わせに、玉露ぎょくろ金糸雀カナリアはフェリシアのアドバイザーとして学園を訪れていた。

 なので、玉露ぎょくろも個人的な用事のため、仕事モードではなく、プライベートモードの口調で話している。


「ここが、フェリシアの通う”学校”と言う所か~面白そうな所じゃの・・・・ん?お!フェリシアじゃ!」

 遠くに見えていた校舎が近づいてくると、興味津々に周りを見渡していたルールーが、校舎の入口に立つ人影を指さした。


「皆さん!お待ちしていました!!」

 嬉しそうに、フェリシアが手を振る。


「ごめんね、フェリちゃん。突然呼び出して、しかも王女さまに案内なんて頼んでしまって」

「いいえ、お気になさらずに・・・・・コホン。皆様、ようこそアイディール学園へ」


 呼吸を整えて、優雅に一礼するフェリシア。

 

 フェリシアは、昊斗そらとたちが学園を訪れることがあった際、自ら案内を買って出ていた。

 突然ルールーから連絡があり、まさかこんなにも早く案内することになるとは思っていなかったフェリシアは、嬉しそうにしている。

「フェリシア、それはいいんだが・・・・そちらの女性は?」


 気が付くと、フェリシアの後ろに一人、女性が立っていた。

 フェリシアと同じ高等部の特別クラスの制服を着ており、いくつも縦に巻いた長い髪と瞳は、燃えるような緋色をしている。

「初めまして、アイディール学園高等部生徒会会長を務めますクレア・リンデンと申します。本日は、オクゾノ様とナツメ様を学園長室までご案内するよう言付かっております」


 長めのスカートの裾をつまみ、優雅に一礼するクレア。

 その一つ一つの動作に、育ちの良さが垣間見え、彼女の身分が窺い知れる。

「では、クレアさん。お二人のことをお願いいたします」

「はい、フェリシア様。では、こちらへ」


 クレアに促され、昊斗そらと冬華とうかは校舎の中へ入って行った。


「私たちも行きましょう、ギョクロさんカナリアさん!今日は、お願いいたします!」

「こちらこそ、フェリシア様たちのお力になれるよう、頑張らさせていただきます・・・・・あら?」

「どうしたの、金糸雀カナリア?素っ頓狂な声を上げて」


 何かを探すようにアタフタする金糸雀カナリアに、玉露ぎょくろは目を細める。


「・・・・・ルールーさんが、いらっしゃいません」

「「・・・・・・え?」」


**********


 フェリシアたちと別れた昊斗そらと冬華とうかは、クレアの案内の下、学園長室を目指していた。

「会長、こんにちは!」

「会長!ご相談したいことがありますので、お時間いだだけますか?」


 学園祭の準備が始まっているらしく、廊下ですれ違う生徒たちは慌ただしく動いており、ほとんどの生徒がクレアに挨拶をしていく。

 彼女の生徒会会長としての生徒からの信頼を垣間見える一コマだった。


「なんか、こういった雰囲気は久々だな」

「うん、いいよね。準備の時が、一番楽しかった」


 校内の中に流れる慌ただしくも、楽しんでいる空気に触れ、グレーな高校生活を送った昊斗そらとだったが、学園祭のことを思い出した。

 冬華とうかも同様に、楽しかった高校時代を思い出していた。


「今日から合同文化祭の準備が始まっていまして、色々な場所で準備が行われているので、ご迷惑をおかけします」

 前を歩くクレアが、申し訳なさそうに頭を下げる。


「大丈夫ですよ、私たちも高校生時代に経験していますから、お気になさらず」

「むしろ、この独特の雰囲気をまた体験出来たことに、こちらがお礼を言いたいぐらいですよ」

 逆に頭を下げる、昊斗そらと冬華とうか


 クレアは、二人の言葉に驚いた顔をしたかと思えば、柔らかな笑みをこぼす。

「・・・・・フェリシア様が、お二人をお慕いしている理由が何となくわかりました」 

「クレアさんは、彼女とは?」

「初等部のころからフェリシア様とはお付き合いさせて頂いております。ここ最近、あの方から聞こえてくるのは、お二人の事ばかりでした。なので今日、お二人にお会いするのを楽しみにしていたんですよ、私」

「そうだったんですね」


 フェリシアが、学校で親しい友人に自分たちのことを話していると知り、昊斗そらと冬華とうかは恥ずかしくも、嬉しく思った。


「・・・・こちらが、学園長室です。クレア・リンデンです。オクゾノ様、ナツメ様をお連れしました」

 クレアがドアをノックすると、中から声が聞こえる。

『どうぞ』

「失礼します・・・・どうぞ、お入りください」


 ドアを開き、中へ招き入れるクレア。昊斗そらとたちが中に入ると、そこには30代半ばぐらいの女性が立っていた。


「ようこそいらっしゃいました。王立アイディール学園学園長を務めています、メイ・サンドラ・マクマホンと申します。この度は、お力添えをいただき感謝いたします」


 メイと名乗った女性は、学園長と呼ぶには少々頼りなく見えた。元からの身体の小ささも一因だろうが、それ以上にストレスとオーバーワークに因るやつれが見て取れた。

 昊斗そらとたちは、フォルトたちから事前に彼女の情報をもらっている。


 メイ・サンドラ・マクマホン。

 ここアイディール学園の教師をしていた彼女は、一年前に学園長だった父親が急死し、代わりに若くして学園長を継いだ。だが昊斗そらとたちが見る限りでは、彼女には学園長と言う職は重圧のようだと思った。


「クレアさん・・・・ありがとうごさいます。各学校との調整があるのに、時間を取らせてしまって、すみません」

「先生!私は自分の意志で申し出たことです。お気になさらないでください」

 頭を下げるメイに、クレアは悲痛な表情を浮かべる。


「・・・・・・・では、これで失礼します」

「本当に、ありがとう」

 部屋を出て行くクレアに、メイは再び頭を下げる。


「・・・・・お待たせしてしまって申しわけありませんでした。どうぞ、お座りください」

 執務用の机を離れ、来客用のテーブルに近づき昊斗そらとたちをソファーへ促す。


「改めまして、私が奥苑昊斗おくぞのそらと、こちらが棗冬華なつめとうかです。お話は聞いていると思いますが、今回我々は期間中、学園祭準備から終了までの二週間。その間、警護対象者に随行しますので、教師の方々にはその旨をしっかりとお伝えください。さすがに、その都度不審者扱いされ騒ぎになると、依頼に支障がでますので」


 学校と言うある種の閉鎖空間に、異物(見知らぬ人物)が入り込むと、思っている以上に目立ってしまう。なので、この点に関しては、徹底してもらわないと、と昊斗そらとは念を押した。

「分かりました。先生方には、きちんと説明しておきます」

「よろしくお願いします。それから、警護対象者との顔合わせの後、校内及び敷地内を見学させていただきますが、よろしいですか?」

 実際に警護対象者が行動するであろう場所に目を通すのは基本中の基本。どこが襲われやすいか、自分ならどうするかをシミュレーションするのに、現場を見ておく必要があるのだ。


「そちらの方も、お伺いしています。後程、私自身がご案内しますので」


 一通りの連絡事項を終え、昊斗そらと冬華とうかはメイの案内で別室へ移動した。


 部屋に入ると、特別クラスの制服を着た女の子が二人。そして、執事服を着た初老の男性と、ピシッとしたタイトなスーツを着た20代の女性がそれぞれの女の子の後ろに立っていた。


 女の子たちは、玉露ぎょくろたちから聞いていたヴィルヘルミナとアリエルの特徴そのままだった。


「突然このような所に呼び出されたかと思えば・・・・・・アンナ、あの者達は?」

 憮然とした態度で、ヴィルヘルミナがアンナと呼んだ後ろの女性に尋ねる。

「学園祭期間中に、殿下を警護する傭兵と聞いております」

「傭兵ですって?わたくし護るのに、どこの誰とも知れぬ傭兵を付けるというの?不敬極まりないわね!わたくしには、優秀な騎士が二人も付いているのよ。邪魔なだけよ、必要ないわ!」


 周りの顔色など気にすることなく、昊斗そらとたちへ難癖をつけるヴィルヘルミナ。そんな彼女を見て、昊斗そらと冬華とうかは、玉露ぎょくろたちと同じ第一印象を受けた。


「ヴィルヘルミナさん。このお二方は、ルーン王国国王カレイド・ノグ・ルーン陛下とアルバート騎士団団長フォルト・レーヴェ様が、ご推薦された方々です。実力に、問題はないかと思いますよ」

 メイの説明に、ヴィルヘルミナやアンナだけでなく、アリエルや執事のジョゼフまで驚いて、二人の顔を見る。


「は~・・・陛下や騎士団長様のご推薦ですか~・・・そのような方々が傍に居てくださるなんて~、心強いわね、じいや~」

「はい、姫様」


「・・・・・もし、お断りするとなれば、陛下のお心を無下にするということ。ヴィルヘルミナさん、それがどう言った状況を引き起こすか、分からない貴女では・・・・ないですね?」

 メイの言葉に、ヴィルヘルミナは完全に押し黙ってしまう。もし、そんなことすれば、下手をする

と国際問題に発展しかねない。

 いくら、勝手気ままに横暴なふるまいをするヴィルヘルミナと言えども、国許に迷惑をかけることは出来なかった。


「マクマホン学園長・・・・主に代わり、ルーン陛下のお心遣い、謹んでお受けいたします」

 軽く放心するヴィルヘルミナでは、おかしなことを言い兼ねないと、アンナが慌てて申し出を受ける。 

 

 予想していた通りの波乱の顔合わせとなり、昊斗そらと冬華とうかは、この先が思いやられると嘆息したのだった。

 

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