幕間
フェリシアの成人のお祝い会が終わり、フェリシアとフレミーが帰った後、昊斗たちが後片づけをしていた時だった。
『マスター、ノートさんから連絡が入っています』
先ほどまでプライベート口調だった玉露が、仕事口調へ変わる。
「ノートさんから?冬華」
「ちょっと待って。金糸雀、術式準備」
『承りました、我が主』
冬華が創神器を取り出し、用意された術式を手早く発動させる。ティールームの入り口には強固な封印が幾重にも施され、さらに壁にも音が漏れ聞こえない処理などが行われ、盗聴透視対策が万全になる。
「大丈夫だよ」
冬華と金糸雀からのOKを確認し、昊斗が玉露にうなずくと、テーブルの上に立体映像で人影が現れる。
現れたのは白髪交じりで顔には大きな傷に、黒い眼をした50代の男性だった。
『四人とも、元気そうで何よりだ』
「ノートさんも、お元気そうで」
「お久しぶりです」
一見すると、極悪人と誤解されそうな容姿をしているが・・・彼、ノート・アートは昊斗たちの上司であり、傭兵としての師匠でもある。
そして、創造神たちが見つけた最初の無神世界の元住人で、傭兵”暗黒時代”の生き証人でもあるのだ。
『今日”組合”での議論の結果、全員一致でグラン・バースの創造神の依頼をお前たちが受理したことを正式に容認した。これは、依頼内容の重大性を鑑みての決定だ。だが、そこの創造神が用意できる対価の関係で、増員は一切出来ない。はっきり言って、お前たちを一人雇うのも難しい・・・・普通ランクの傭兵を5人1チーム雇えるのがやっとな対価だったんだ・・・まぁ、私たちも慈善事業で傭兵をやっているわけではないが、今回は特別に特別を重ねた措置だと思ってくれ』
「そうですか・・・・出来るなら、”探索”系の傭兵の手を借りたかったんですけど、仕方ないですね」
ノートから告げられた決定に、昊斗たちは気が重くなった。
実のところ、昊斗も冬華も戦闘に特化した能力で、”探し物”などはあまり得意ではなかった。
相棒の玉露と金糸雀も、昊斗たちの穴を埋めるような能力を数多く持っているのだが、それでも戦闘寄りになっている感は否めず、神を探すには能力不足だった。
代理神は、基本的に自ら姿を現すつもりがなければ、見つけるのがかなり困難な存在だ。
例え創造神の力を使える傭兵であっても、専用の探索能力を持っていなければ、居場所を特定するのは厳しい。
しかも、代理神はいくつかの行動パターンで分類分けがされている。
まず常駐型と呼ばれるもので、1か所に留まりこちらから呼びかければ現れてくれる比較的簡単に見つけることのできるタイプ。
次に、巡回型と呼ばれるタイプで、代理神自らが決めた場所を順番に巡り、1か所に長く留まらないのが特徴である。
最後は、放浪型。これは、その名の通り、勝手気ままに世界を巡るため、もっとも見つけにくいタイプである。
昊斗たちは、先日フェリシアの”精霊”として契約した”水の神ルドラ”こと、ルールーにグラン・バースの代理神たちの行動パターンを聞いていた。
彼女自身、誰がどのタイプかは分からないそうだが、性格を考えると火の神は常駐型、風の神と地の神は巡回型、大神は放浪型であろうとのことだった。ちなみに、ルールーは巡回型だったそうだ。
専用の能力がないと、見つけるのも一苦労する放浪型がいるかもしれないという可能性の中、増員が見込めないのは正直、昊斗たちには痛手だった。
『代わりと言ってはなんだが、私の権限で融通できることを、理事たちからもぎ取ってきている。詳細な一覧は玉露と金糸雀に送ってあるから確認してくれ・・・・また困難な依頼を任せてしまい、本当にすまない。お前たちにはいつも苦労かける』
突然、殊勝なことを言い始めたノートに、4人は目を丸くした。
「・・・・何言ってるんですか、どんな困難な状況にでも対応出来るよう仕込んでくれたのは、他でもないノートさんじゃないですか」
「そうですよ、気にしないで下さい」
『まったく、そういうのジジ臭いですよ?ノートさん』
『玉露ちゃん!それ、ノートさんに失礼だよ!!』
わーわーと言いあう若者たちを見て、ノートは目を細める。
初めて出会った時、4人は本当に子供だった。そんな幼い子供たちを傭兵として戦えるよう、そして死なないように育てたノートは、彼らに罪悪感と共に何処か父親のような感情を抱いていた。
幼かった子供たちが、こんなにも立派に成長したことに目頭が熱くなった。
だが、まだまだ”子供”たちの前で泣く姿を見せる訳にはいかないと、心を落ち着かせ口元に余裕の笑みをつくる。
『そうだな、この私が仕込んで育てたお前たちだ。心配するほうが失礼か』
そんなノートに、4人は誇らしげに真っ直ぐノートを見つめる。
『では、今日はここまでだ。定期報告を忘れずにな』
『『「「はい!!」」』』
背筋を伸ばし、敬礼する昊斗たち。
ノートの映像が消え、冬華は部屋にかけた術を解除する。
「明日から、大変だな」
「そうだね・・・・ううん、どうも今から大変になりそうだよ?」
昊斗は冬華の見ている方の気配を探ると、先ほど帰ったはずの女の子たちが猛スピードでこちらに迫ってきていたのだ。
たぶん、この部屋を結界で覆ったのをルールーがフェリシアたちに伝え、何事かと心配したのだろうと思い至る。
さて、どうしたもか、とフェリシアたちへの説明を大急ぎで考え始める4人なのだった。
活動報告で次話から新章と書いていましたが、どうしても書いておいた方がいいと思い、幕間を挟みました。
新章を楽しみにしていただいていた皆様、申し訳ありません。
なるべく、早く次話を投稿したいと考えていますので、もうしばらくお待ちください。




