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創造神たちの傭兵  作者: 仁 尚
水の神 降臨 編
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(10) 傭兵 対 水の神

「ふふふ・・あははははは・・・!!」


 水の神ルドラが、声を上げて笑う。

 目の前にいる人間が、大真面目に自分へ戦いを挑もうとしているのも笑えるが、それよりおかしかったのは、自分たちを創った創造神が奪われた力を取り戻すのに、よりにもよって異世界の人間を頼ったのが一番笑えたのだ。


わらわたちを創りだしたとはいえ、やはりあの方は無能じゃな!まさか、非力な人間に頼るとは!そして、お前たちもじゃ!神に戦いを挑むとは愚かにも程がある!」


「・・・・・・」

 ルドラの言葉を黙って聞いていた昊斗そらとが、まっすぐな目でルドラを見た。


「何じゃ?何か文句があるか?」


「いや、あんたの言うとおり、自分で創った代理神に力を奪われるなんてこの世界の創造神は”抜けてる”と思うよ。それより、あんたたち代理神が何で力を奪ったのか、その理由が気になってな」


「ふん、そんなことか。決まっておろう、この世界の為じゃ!」


 意外にまともな答えが返ってきたので、昊斗そらとたちはほんの少し驚いた。


 もし、彼女が自分勝手な答えをしていたら、昊斗そらとたちはルドラを代理神として欠陥ありと認定し、問答無用で叩きのめすつもりでいた。

 だが、代理神としての本質が変化していないのであれば、説得する余地があると考え、昊斗そらと冬華とうかは話を進める。


「だけどあなたたちは、創造神から世界を管理するだけの力は与えられているはず。なのにどうして奪うなんてことを?」


 冬華とうかの問いに、ルドラは目を細める。


「・・・妾たちは生み出されてすぐ、あの方に教えられたのは「このグラン・バースを末永く存続させよ」、ということじゃった。そして、多くのことを教えられる中、妾たちはある疑問が浮かんできた。なぜ、あの方は見守るだけなのか?あれほどの力を持つ偉大な存在なのに、なぜ?と。そして、妾たちのたどり着いた答えが、あの方が何もしないのであれば、創造神に強大な力は不要だ、とな」 

「待った、創造神は自分自身の在りようをあんたたちに話していないのか?」

「あの方は、自分のことを殆ど語らなかったよ。それがどうかしたか?」


 昊斗そらとたちは、頭痛を感じこめかみを押さえる。


『あれですね、本当に”抜けてる”みたいですね。あのボケ老人』

 ため息をつきながら玉露ぎょくろの目線は、天井を向いていた。どうやら、創造神に分かるよう嫌味を言っていたようだ。


「それを差し引いても、あんたたちは短絡的なことをしてくれたよ、まったく」

 頭を掻きながら、昊斗そらとはルドラを睨みつけた。 

「なんじゃと?」

「創造神はね、世界を創り代理神に世界を任せた後、やるべき使命があるの」

「使命じゃと?」


 ルドラは、いつの間にか昊斗そらとたちの話に耳を傾けていた。

 

 昊斗そらとたちの正体を理解出来ていないフェリシアは、神と対等に話す昊斗そらと冬華とうかがとてつもなく凄い存在なのではないか、と思い始めていた。


「それは、別の創造神が創った世界と自分が創った世界が互いに干渉しないよう世界の境界を守るって使命があるんだよ。異世界人の召喚は、本来は同じ創造神が創った世界間でしか起こらないんだ。だが、あんたたちが創造神から力を盗んだせいで、この世界ではそんなことお構いなしに召喚が起きている。これを放置すると最悪、世界同士がぶつかって消滅し、関係ない周りの世界に多大な影響が出るんだ」


(ソラトさん、一体何を言っているんですか?)

 フェリシアは、昊斗そらとの言ったことが頭に入ってこなかったが、何か大変な事が起きていることだけは理解できた。

 

 フェリシアだけでなく、カレイドやマリアも絶句している。


 彼らは、昊斗そらとたちの目的を知っていた。だが、まさかここまでの大事とは想像を超えていたため、思考を放棄しそうになっている。


「だから、今すぐにでも創造神に力を返してほしいの、お願いします」

 

 頭を下げる冬華とうか昊斗そらと玉露ぎょくろたちも同じようにルドラへ頭を下げている。


「・・・・・断る」

 だが、ルドラの答えは短く素っ気ないものだった。


「な・・」

 さすがに、これには昊斗そらとたちも言葉を失う。


「長々と御託を並べよって・・・・・世界の消滅?ふん!妾たちがいる限りこの世界は消えん。ほかの世界がどうなろうと知ったことではない」


 代理神はその性質上、まず第一に管理する世界のことを優先する。もちろん、融通の利く代理神もいるが大概は、長年多くの世界を創りノウハウを蓄積させた創造神が創り出す代理神なのだ。


 今回のように、初めて世界を創る創造神が生み出した代理神は、設定の甘い所や強調しすぎる所が多々あるため、極端な性格になったりする。


「話は終わりじゃ。妾が人間の戯言をここまで聞いてやったのは、お前たちが始めたじゃぞ。光栄に思え」

 そう言って、ルドラとフェリシアの姿が消え、天井付近に出現する。


「ソラトさん!トーカさん!!」

「フェリちゃん!」

「おい!フェリシアを離せ!」 

「この娘は、妾への供物じゃ。つまり、妾の所有物ということよ」

 何を言っているのかわからず、冬華とうかが国王たちを見ると、思い出したのか彼らの顔が青ざめていた。


「神が勝手に言い出したのだ!精霊召喚を行っていたところへ突然現れて、私たちもどうなっているのか・・・・・」


 本当に混乱しているのだろう、最後の方はカレイドの声が消えるように小さくなっていく。


「フェリシア・・・・・・・」

 冬華とうかがかけた回復術のおかげで、座れるまでに回復したマリアが泣きそうな顔で娘を見上げていた。


 悲痛な母の姿を見て、昊斗そらと冬華とうか、さらに玉露ぎょくろ金糸雀カナリアの中で、堪忍袋の緒がプチンと音を立てて盛大に切れた。


「さて、これで終いじゃ。失せよ人間ども!」

 ルドラが右手を掲げると、天井を埋め尽くすほどの水の固まりが出現する。


 大量の水を敵の頭上に落とす精霊術の”ウォータープレス”というものに似ているとフェリシアは思ったが、規模と内包する力が比べものにならないほど強大で、これが神なのかと恐怖を感じた。

 

『マスター、水の神から創造神の力が急速に高まっています』

「・・・・・」

金糸雀カナリア

『はい!』

 神の力に恐怖する周りを尻目に、傭兵の四人は冷静そのものだった。


「水に潰され跡形もなく消え去るがいい!」

 ルドラの掛け声とともに、水たちが強大な力に引っ張られ昊斗そらとたちへと落ちていく。


 もうダメだ、とカレイドとマリアは顔を伏せる。だが、昊斗そらとたちは臆することなくルドラを睨み続け、水に呑みこまれていった。


「あ・・ああ・・・・」


 あっけなく水に呑みこまれ姿が見えなくなる両親や、兄や姉のような友人たちにフェリシアは言葉を失う。


「妾の手を煩わせおって」

 湖のようになった足元を、侮蔑の目で見下ろすルドラ。そして、フェリシアへ目線を戻す。


「外の方も、終わったかの・・・・・?」

 ふと、ルドラが視線を足元へ落とした時だった。


”なんだ。これで終わりか?”

 声と共に、水がパッと消える。まるで元から存在しなかったように。


 そこには、先ほどと全く同じ姿で昊斗そらとたちが立っていた。しかもよく見れば、傷を負うどころか服も髪も濡れていなかった。


 カレイドとマリアは自分たちに何が起きたのか分からなかったようで、ポカンとしている。


「なんじゃと?」

 神であるルドラにも何が起きたのか判らず、昊斗そらとたちへの警戒レベルを引き上げる。

 

「聞くが、さっきのが本気だったってオチはないよな?」

『マスター、相手は代理とはいえ神なんですよ?いくらなんでもあれが本気だなんて・・・・ぷっ』


 玉露ぎょくろがワザとらしく挑発する。

 そんなわかりやすい挑発に、怒髪、天を衝くルドラ。


「馬鹿にするでないぞ・・・・本気で妾を怒らせたな!!」


 再びルドラの力が儀式の間を覆う。

 今度は、天には数千を超える水の槍の切っ先が昊斗そらとたちを狙い、四方八方からは十メートル超えるを高さの波が迫る。


「これに耐えられる人間は存在せんぞ!!!」


 だが、そんな攻撃に昊斗そらとはため息をついた。

「・・・馬鹿にしているのはどっちだよ」


 いつの間にか手にしていた剣で昊斗そらとが無造作に薙ぐと、迫り来る波が一刀両断され、掻き消える。


 さらに、天から降り注ぐ水の槍を見据えると、昊斗そらとの姿が消え、金切り声のような音と共に数千の水の槍が次々と断ち切られていく。

 その光景に、フェリシアとカレイドにマリアの家族三人だけでなく、ルドラも呆気に取られた。


 昊斗そらとが姿を現した時には、水の槍は全て迎撃されていた。


「なんじゃ・・・なんなのじゃお前たちは!!」


 ルドラは、これまでも神殺しや力試しに、多くの異世界人から戦いを挑まれてきた。その都度、人間たちに自身の愚かしさを知らしめるため、圧倒的な力で押しつぶしてきた。

 はっきり言って、最初の一撃に耐えられた者は一人もいなかった。


 だからこそ、目の前にいる昊斗そらとたちがあまりに異常・・・いや異様に思えたのだ。


「だから、言っただろう?創造神に依頼された傭兵だと。一つ言い忘れたが、今まであんたに挑んできた人間と同じと思っていたなら、考えを改めた方がいいぞ」


 笑みを浮かべる昊斗そらとがフェリシアを見ると、フェリシアの姿が消えルドラは目を剥いて驚く。


 自分に何が起きたのか、眼をパチクリするフェリシアが隣を見ると冬華とうかが心配そうな顔をして立っていた。

「トーカさん!」

「何処も怪我はないよね?・・・・・悪いけど、フェリちゃんは返してもらったよ」


「き・・・・貴様!」

 まったく気が付かなかった自分と、そんな自分を出し抜いた冬華とうかへの怒りが混ざり合い、美しかった美貌が鬼のような形相に変わる。


「これで、心おきなく戦える」

 昊斗そらとが、拳を鳴らす。


 冬華とうかがフェリシアの周りにも、カレイドたちと同じ防御と回復の効果を併せ持つ膜が展開する。


「フェリちゃん、少し待っててね」

 笑顔を向ける冬華とうかだが、フェリシアはその笑顔がいつもと違い固いことに気が付いた。

 昊斗そらとの方を見ても、優しい時からは信じられないほど怖い顔をしている。


「さぁ、こっからが本番だ・・・・玉露ぎょくろ、いくぞ」

『いつでもどうぞ、マイマスター』

 後ろに憑いていた玉露ぎょくろが、昊斗そらとの隣に降り立つ。


金糸雀カナリア、準備はいいかしら?」

『もちろんです。行きましょう、我が主!』

 同じように冬華とうかの隣に金糸雀カナリアが降り立った。


 そして、二組はお互いのパートナーと手を合わせる。


『「共鳴結合レゾナンス・オン!」』『「共鳴結合レゾナンス・オン!」』


 掛け声と共に、四人は光に包まれた。

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