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創造神たちの傭兵  作者: 仁 尚
水の神 降臨 編
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(1) 水の都 王都ディアグラム

 ルーン王国は、古くから”水の神ルドラ”の加護をもっとも強く受ける国である。


 そのため国中に、多少さまざまな河川が縦横無尽に走り、100年単位の運河開発を経て、水上輸送及び交通が発達して行った。


 木漏れ日の森での事件当夜、「フェリシアを王都へ帰還させよ」と、国王からの要請がドラグレアに入る。

 翌日、慌ただしく準備を終えたドラグレアとフェリシア、そしてイレギュラーな形で召喚された(と言うことになっている)昊斗そらと冬華とうかの四人は昼過ぎに王都へ向け木漏れ日の森を出発した。

 

 ルーン王国国内の主な長距離移動手段は”船”であるため、まず近場の船着き場を目指し馬車で半日移動し、近くの宿場で一泊した。

 次の日、王都への直通便に乗船し、四人は優雅な船旅を満喫していた。


『納得できません』

 ほかの乗客の目もあるため、玉露ぎょくろ金糸雀カナリアは客室以外では、表に出るどころか声を出すのも厳禁とドラグレアに言われ、特に玉露ぎょくろの苛立ちはかなりのモノだったが、昊斗そらとの説得により、なんとか矛を収めてもらった。


 昊斗そらとたちが乗り込んだ船は、本来海上航路で使われている豪華客船なのだが、ルーン王国の東西に走る運河はそんな大型船も航行できるほど広大だ。さらに、金を払えば誰でも乗れる船と言うわけではなく、相応の身分の者した乗船を許されない豪華なものだった。


 とはいえ、王女であるフェリシアが乗船していることが、周りに露見するわけにはいかないので、木漏れ日の森で使った認識阻害術式をフェリシアにかけている。


「フェリちゃん、王都ってどんなところなの?」

 船上のカフェテラスでお茶をしていた昊斗そらと冬華とうか、フェリシアの三人。

 これから行く場所の情報がほしいと、昊斗そらとたちはフェリシアから王都に関する様々なことを聞いていた。


「そうですね、一言でいえば貿易都市です。広大な国土に大小さまざまな河川が多く水資源が豊富なルーン王国なのですが、農業が出来るほど広い土地が少ないため、先祖たちは河川を改良し運河として活用することを決めました。長年に亘る大規模開発を経て、現在では国内のどこへでも船で行けるよう水上交通が整備されています。王都ディアグラムは、そんな交通及び貿易の最大拠点として機能し、多く物が流通し、人も多いですね」

「なるほどな」

 人が多い。昊斗そらとたちにとって、それは好都合だった。


 実のところ、大神たいしん及び4柱の神の居場所を創造神は知らなかったのだ。彼の話では、代理神たちは世界に降りて以降、何らかの方法で逃れているとのことだった。どこにいるのか、どうすれば会えるのか、一切情報がない状態で依頼に就いている昊斗そらとたちが必要したのが情報なのだ。


 人の集まるところに、情報が集まる。長い間、傭兵をしている昊斗そらとたちが経験から得た教訓である。


「フェリちゃんにとっては、初めて王都を離れてたんだよね?どう、いい経験はできた?」

「はい!二か月と短い間でしたが、王都では経験できないことを多く経験できましたし、ソラトさんやトーカさんと出会えたのが一番の経験です」

 

 無垢な笑顔を向けるフェリシアに、冬華とうかは嬉しさのあまりフェリシアを抱きしめて、いい子いい子と頭を撫でる。

 フェリシアも嬉しいようで、えへへっと笑顔で撫でられている。

 昊斗そらとは、そんな二人を温かい目で見守っていた。


「お前ら・・・・・無駄に高度な術を使っているな」


 そんなやり取りを呆れた顔で、ドラグレアが船内から歩いてきた。

 フェリシアに対して、ドラグレアが使った認識阻害術式。だが、これは受け取る側の認識を歪めるだけで、会話などはそのまま筒抜けとなってしまう。


 そこで、冬華とうかは彼の術を生かした形で、周りに自分たちの会話を聞こえなくし、さらに昊斗そらとたちを気にしないように意識を誘導する術などを複数行使していた。これにより、どんなに騒いでも周りにいる者は全く気にも留めないのだ。


「傭兵をやってたら、このくらいの術は必要ですから」

 フェリシアを抱いたまま、笑顔で答える冬華とうか

「そういえば、これだけ大きな客船や貨物船が往来しているのに、盗賊や魔獣とかの危険はないんですか?」

「それに関しては、問題ない。盗賊なんかは、こんな主要運河に手を出さないし、往来する船には魔獣やモンスター除けの対策をしている。それに、魔獣たちはこの船に絶対手を出さないだろう」


 そう言って、昊斗そらと冬華とうかを見るドラグレア。

 それが、どういった意味を持つか、二人は理解し破顔する。



 結局、船旅の間波乱が起きることもなく、一行は無事王都”ディアグラム”に到着した。


 船着き場に降り立った昊斗そらとたちは、王都の規模に驚いた。


「大きいとは聞いていたが、まさかここまでとはな」

 遠くに小さく城が見え、あれが王城だろうか、と昊斗そらとは考えた。

金糸雀カナリア、王都のマッピングお願いね」

『はい、我が主』

 冬華とうかは、小さな声で金糸雀カナリアに指示を出し、フェリシアの横へ並ぶ。


玉露ぎょくろ、移動中の情報収集頼むぞ」

『分かりました、マスター』

 昊斗そらとも、玉露ぎょくろに指示をだし、歩き出した。

「ついてすぐに行動開始か・・・・、お前たちも忙しないな」

 先ほどの様子を後ろから見ていたドラグレアが昊斗そらとに声をかける。

「長年の癖、みたいなものですかね。やはり、滞在する場所は自分たちで調べないと安心できないので」

 創造神からの依頼に関して昊斗そらとたちは、同じ異世界人のドラグレアにだけ詳細な内容を伝えていた。

 代理神とはいえ、グラン・バースに生まれ住む者にとっては縋るべき神々。

 理由はどうあれ、その神々と交渉が決裂した際に戦うかもしれない可能性も捨てきれない昊斗そらとたちは、フェリシアには伝えることが出来なかった。

 ドラグレアにも、国王などに伝えるか否かは任せるとし、特に口止めはしなかったが、ドラグレアも事が事だけに、自分のところで停めている状態だ。


「さて、移動するぞ」

 ドラグレアは、今考えても仕方ないと心の奥に押し込み、城と違う方へ歩き出した。

「あれ、城に行くんじゃないんですか?」

 冬華とうかの問いに、隣のフェリシアがクスクスと笑いかける。

「行きますよ、ただお城に行くなら専用の船に乗った方が早いんです」

 本当にどこまでも水上交通が発達した国だなと、感心する昊斗そらとたちだった。


「このディアグラムは、王城アルバート城のある城街区、貴族が住む貴族居住区、一般の方が住む一般居住区、初等部から高等部の学校がある学生区、露店や多くのお店のある商業区、そして船着き場などがある港岸区の六つの地区からなっています。各地区へは船で行き来することが出来るんですよ」


 城へ向かう船の中、フェリシアはディアグラムに六つある地区の説明をしていた。

 その途中で、王都全域のマッピングを行っていた金糸雀カナリアから完了の報告を受け、冬華とうかはその情報を昊斗そらとにも送り、二人は脳内でフェリシアの説明と照らし合わせる作業を並列してこなす。


 アルバート城の王家専用の船着き場へ船をつけ、一行は降り立った。


「オレは、帰還の報告をしてくる。フェリシアは一度自分部屋に戻るだろ?」

「はい、さすがに町服のままじゃ不味いですから」

 自分の格好を見渡しながら、フェリシアは苦笑いを浮かべる。


「お前たちは、とりあえずフェリシアに付いててくれ。下手に城内を歩かれたら騒ぎになる」

「はい」

「分かりました」


 ドラグレアと別れた三人は、フェリシアの部屋がある上層階へ移動する。

 なぜか、使用人たちと出会うことなく部屋にたどり着くフェリシア。何でも、ある程度時間帯で人に会わない順路があるらしく、よく部屋を抜け出す時に利用していたのだ。

 その話を聞いて、昊斗そらとたちはフェリシアが思った以上に”行動派”なのだと思った。


「ここが私の部屋です」

 装飾に凝ったドアに手を当てるフェリシア。その時だ。


『我が主、部屋の中に反応があります』

『間違いありませんね、しかもそれなりに出来そう(・・・・)ですよ、マスター』

 金糸雀カナリア玉露ぎょくろの言葉に、昊斗そらとたちの顔つきが変わる。


「フェリちゃん、この部屋って人の出入りってある?」

「え、ええ、部屋付のメイドなどが出入りしますが・・・・おかしいですね、この時間は誰もいないはず・・・」

 フェリシアの言葉に、二人は彼女を自分たちの後ろへ下げ、思考を戦闘状態に引き上げる。


 ドアへ手をかけ、アイコンタクトを送る昊斗そらと冬華とうか

 お互いの呼吸を知る二人は、特に声を交わすことなく阿吽の呼吸で勢いよくドアを開ける。


 術式と拳を向ける二人は、中にいた人物を見ていろんな考えが駆け巡る。


 窓辺の椅子に豪華なドレスで着飾った少女が座っていたのだが・・・・


「・・・・フェリちゃん?」

 自分の目がおかしいくなったのかと、瞬く冬華とうか昊斗そらとはあれ?と思い振り返るが、そこには間違いなく町服を着たフェリシアが立っていた。


 椅子に座っていたのは、王女の姿をしたフェリシアだった。

 


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