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創造神たちの傭兵  作者: 仁 尚
木漏れ日の森の出会い 編
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(10) 女の戦い  そして、王都へ

 帰ってきた昊斗そらと冬華とうかに、フェリシアは「おかえりなさい」の前に「ごめんなさい」と頭を下げた。


 一体なんの事か分からない二人は、頭を下げ泣き出すフェリシアにアタフタするしかなく、そんな光景にドラグレアは昊斗そらとたちを警戒していたのが馬鹿らしくなり、大笑いして二人を出迎えた。


 何に対しての謝罪だったのかフェリシアに聞き、昊斗そらとたちは気にしていないことを彼女に懇切丁寧説明し、四人は遅めの夕飯を食べた。



 そして、昊斗そらとたちは約束通り、ドラグレアとフェリシアに事情を説明し始めた。


 まず、自分たちが大神たいしんと呼ばれる神に召喚されたのではなく、そのさらに上の存在、創造神に召喚されたこと。

 創造神とは、世界を創り代理神を生み出す最上の神であり、フェリシアたちが知る神々はその代理神である、と。


 昊斗たちは多くの創造神から依頼を受け、様々な異世界を飛び回る傭兵をしており、普段は元の世界で記憶と力を封印した状態で生活しているのだが、今回は手違いで傭兵としての記憶と力が封印されたまま召喚されてしまい、そして先の戦闘の折、傭兵としての全てを取り戻した、と答えた。


 説明を聞いたフェリシアは、不安な顔をして冬華とうかを見た。

「あの・・・・・では、今朝までのお二人と、今のお二人は別人なのですか?」

「ううん、どっちも間違いなく私たちだよ。元の世界での私たちは傭兵の時の記憶はないけど、傭兵の時は全部の記憶を持ってるから、フェリちゃんと出会った時の記憶もあるよ。だから心配しないで」

 そのことを聞いて、フェリシアは安心したように胸を撫で下ろす。

 

「では、お前たちが記憶や力を取り戻した理由はなんだ?」

「ドラグレアさんがくれた”希望の小箱”のおかげですよ、あれのおかげで俺たちは、”相棒”と再会できたんです」

「相棒?」

玉露ぎょくろ

金糸雀カナリア


 昊斗そらとたちに呼ばれ、二人の後ろに二人の女の子が現れる。一瞬ノイズが走り、彼女たちが立体映像の類と、ドラグレアは判断した。


「き、綺麗・・・・」

 二人の姿をみて、フェリシアはため息を漏らした。


『マスター奥苑昊斗おくぞのそらとパートナー()をしている玉露ぎょくろと申します』

 玉露ぎょくろと名乗った少女は、黒に近い深い緑の髪にエメラルドの瞳、そして特徴的な日本の振袖姿が目を引く。

 感情の乗らないしゃべりなのに、なぜか「パートナー」という部分が妙に強調されていた。


 そのことに、冬華とうかは笑顔まま怒りマークが浮かぶ。


『主、棗冬華なつめとうか様にお仕えしている金糸雀カナリアと申します。宜しくお願いします』

 一礼一つ取っても絵になる金髪金眼の美少女なのだが、なぜか金糸雀カナリアは執事服を着ている。しかし、そんな執事服の上からでも、胸の膨らみがはっきりとわかるほど圧倒的存在感を主張していた。


「彼女たちがこの創神器ディバイスの中から、俺と冬華とうかのサポートしてくれる仲間です」

 二人が取り出したのは、フェリシアが戦闘の中で見た、変わった形の腕輪と黒い装丁の本だった。

 創神器ディバイスは、”組合”に所属する傭兵が、必ず持たされるもので、形は所持する者が好きなようにカスタマイズできる。

 昊斗そらとのは、オーソドックスな腕輪型。主に前衛を務める者が好む形である。

 冬華とうかの黒の本に見える創神器ディバイスは、実は中は紙のページではなく、タッチパネル画面が二面ついたタブレットタイプで、冬華とうか以外は数える程しか持っていなかったりする。

 そして、二人の創神器ディバイスは他の傭兵が持つものより、かなり希少性の高いものだった。


「その中?なら二人は、精神体や人工知能ということか?」

 ドラグレアの言葉に、玉露ぎょくろ金糸雀カナリアが明らかに不機嫌な顔をしている。

「違いますよ、二人は間違いなく”人間”です」

 冬華とうかがきっぱりと否定する。


「え?人間・・・・?もしかしてゆう・・」

『幽霊ですか?ってセリフは聞き飽きていますので、受け付けてはおりません』

 玉露ぎょくろに先回りされたフェリシアは、「あうぅ・・」と引き下がった。


「彼女たちは、”天球”と呼ばれる世界の住人です。彼女たちを始め、住人は肉体を持たない存在ですが、紛れもなく人間です」 

 昊斗そらとたちの創神器ディバイスが希少なのは、彼女たち天球人を収容することが出来るからだ。

 三つ目の無神世界として見つかった天球だが、そこに住む住人達は”情報生命体”と呼ばれる肉体を持たない者たちだった。困り果てた創造神たちと”組合”のメンバーたちは、さまざまな可能性を模索し始めた。

 その一つが、他の知的生命体や人工知能さえも凌駕する圧倒的な演算能力で、肉体を持つ傭兵をサポートする役割を持たせるものだった。

 そして、このテストケースとして選ばれたのが、昊斗そらとたちだったのだ。

 

 彼らは、今までの傭兵たちを超える成果を叩き出していった。が、彼ら以上どころか、彼らと同等の結果を出したペアはほとんどおらず、昊斗そらと玉露ぎょくろペアと、冬華とうか金糸雀カナリアペアが稀有な存在と考えられ、同じ形態のチームは存在していないのが、現状だ。


 自らの創神器ディバイスを見つめ、冬華とうかはこう言った。

「これは、私たち四人の傭兵としての力であり、絆です」


 その言葉に、ドラグレアは驚きを隠せないでいた。たしかに彼らに説明を求めたが、自分たちには秘密にすべき情報まで出してきたのだ。

 信頼の証か、知られても問題とならないのか、それ以外か・・・・。色々な可能性が、浮かんでは消えるドラグレアは難しい顔をしていたが、反対側では彼そっちのけで”争い”が勃発していた。


「それより、玉露ぎょくろちゃん。さっきのはどういう意味かな?」

『さきほど?何のお話でしょう?』 

 すっ呆ける玉露ぎょくろに、冬華とうかの怒りマークが増えるが、笑顔は崩れない。


「・・・・・この前、勝負はついたはずだよ?玉露ぎょくろちゃん、往生際悪いんじゃない?」

 あくまでも、笑顔を崩さず冬華とうかは主導権を握ろうとする。

『おやおや、何をおっしゃるかと思えば・・・・あれから何か進展したようには思えませんでしたから、冬華とうかさんは諦めたかと・・・違うんですか?』

 しかし玉露ぎょくろは、狙って冬華とうかの神経を逆なでしてくる。


『主も玉露ぎょくろも、その辺で・・・・・・フェリシア様が驚かれていますし』

 二人の只ならぬ空気に、驚くフェリシアに金糸雀カナリアは慌てて二人を止めに入るが、本人たちは聞く耳を持たなかった。

「元の世界じゃ記憶が封印されるんだから仕方ないじゃない」

『・・・・ありきたりな言い訳ですね』


 そして、冷戦が熱戦へと変わる。


玉露ぎょくろちゃんはいつもそう!結局最後は遊びなんでしょ?!だったら私の邪魔しないで!!」

『付き合い方なんて人それぞれじゃない!冬華とうかは、考えが古いのよ!!』

 先ほど以上の言葉の応酬が始まってしまい、金糸雀カナリアは必死に止めようと間に入るが、まったく効果が見られない。


 冬華とうかの豹変ぶりに、フェリシアは完全に固まってしまう。

 そんな中、昊斗そらとは気づかれないよう完全に気配を消して外へ逃げ出した。


(あれが始まると、面倒なんだよな)


 四人でチームを組んでからと言うもの、普段は仲のいい冬華とうか玉露ぎょくろだが、ある事でいつも揉めた。


 ある事とは、もちろん逃げ出した”昊斗そらと”を巡って、だ。


 はっきり言って、自分が優柔不断な男ではないと思っていた昊斗そらとは、美少女二人に言い寄られ、どちらか選ぶことが出来ずに優柔不断な男と自覚させられた。


「まぁ、やっぱり選べない・・・よな」

 そんなことを呟いていると、後ろからドラグレアの気配が近づいてくる。


「女ってのは、歳なんて関係なく怖いもんだ、な?色男」

「その呼び方、やめて下さいよ」


 男二人が並んで星を見る。


「実はな、お前たちが創造神の元へ行っていた間に、王都にいるフェリシアの父親・・・まぁ、この国の国王だな、からフェリシアをすぐ王都へ連れ帰るよう言われてな。それと、お前さんたちを意地でも王都に連れて来いと厳命されたが、お前たちに本気を出されると無理なんだが・・・」

「それに関しては、最初の時に王都へ行くという話でしたから、一緒へ行きますよ。こちらとしても、プラスになることが多いでしょうし」


 自分の考えが杞憂に終わり、ドラグレアは昊斗そらとに悟られないよう、小さく息を吐いた。


「まぁ、中の奴らにはお前から伝えておいてくれ。じゃ、オレは寝る」


 ヒラヒラと背中越しに手を振りながら、ドラグレアはドアをくぐっていった。


「・・・・・さて、頑張るか」

 未だ、激しい言い合いが聞こえる”戦場”に復帰するべく、昊斗そらとは気合をいれて、戻っていった。



********


『そうか、来てくれるのか』

「あぁ、断られた時はどうしようか考えたら、胃が痛んだぞ」


 ドラグレアは、自室に置いてある長距離通信用の通信球を使っていた。通話相手は、ルーン王国第19代国王カレイド・ノグ・ルーン。フェリシアの父であり、ドラグレアのグラン・バースで数少ない友人の一人だ。


 昊斗そらととの会話の後、ドラグレアは報告の為友人に連絡を入れたのだ。


『おいおい、ドラグレアともあろう者が随分弱気だな・・・・そんなにすごいのか?』

「あそこまで”怖い”と思ったのは子供のころに父親に感じて以来だ」

『素直に来てくれるのはいいが、そうなると一悶着ありそうだな。君の時のように』

 カレイドは、若かりし頃を思い出し大笑いするのを必死に堪える。そんな友人に、ドラグレアは半眼で睨む。


「若さ故ってやつだ。忘れろよ」

『それは無理な相談だ』

 こんなやり取りを、もう20年以上続けている。生まれた世界は違うが、二人はそんなことを気にすることもなく付き合っている。


「では、明日にはこっちを出る。そっちには順調にいけば明々後日には着けるはずだ」

『待っているぞ、友人。帰ってきたら色々と楽しい話を聞かせてくれ』

「お前が待っているのは、娘だろ?」

『当たり前だ。娘を心配しない父親はいない・・・ではな』

 そう言って、カレイドの方から通信が切られる。


 何も映さなくなった通信球を眺めながら、ダイニングから聞こえる声の主たちを怒るため、ドラグレアは立ち上がり部屋を出て行くのだった。



初めてあとがきを書きます。


この話を以て、木漏れ日の森の出会い編は終了となり、次の話からはフェリシアの故郷でありルーン王国の中心である王都編となります。


 なるべくコンスタントに投稿したいとは思っているのですが、不規則になることもあるやもしれませんがご容赦くだされば幸いです。

 作品を読んでいただいている皆様に、これからも楽しんでいただけるものを提供できるよう頑張っていきたいと思います。 

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