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創造神たちの傭兵  作者: 仁 尚
風の神 強襲 編
115/180

(5) 帝国の技術力

「国際線ターミナルの外観と遠くに見える街並みから、ある程度予想していたが、これは・・・・・」

 無事、入国審査を終えた昊斗そらとたち一行は、ゼーマンシュタットの街中へと入った。


 が、彼らは目の前に広がる風景に、頭がついてこなかった。


 百メートルを超える高層ビル群に、道路を走る車は完全自動運転の電気自動車。スーツ姿のサラリーマンが、掛けているメガネに搭載された携帯端末を使って電話をし、奇抜なファッションに身を包む若者たちは、腕につけたウェアラブル端末でゲームに興じている。


 そこにはまさに、近未来の世界が広がっていた。


 つい数日前まで、十九世紀のヨーロッパの様な町並みのルーン王国にいた昊斗そらとたちは、そのギャップに眩暈を覚え、カグは興味深々に辺りを見回して観察している。


「これを見ると、ミーナちゃんたちってルーン王国での生活を、不便に感じてたんじゃないかな?」

 山脈一つ越えるだけで、国家間の技術格差が数世紀以上ある世界など、今まで殆ど見たことのない昊斗そらとたち。

 そんな異常なまでに科学技術の発達した国から来たヴィルヘルミナたちは、ルーン王国での生活をどう思っていたのか、冬華とうかは少し心配になった。

「どうでしょうね・・・意外に満喫されていたように、私は感じましたけど」

 傭兵四人の中で、ヴィルヘルミナのところをよく訪れていた金糸雀カナリアは、彼女たちが祖国には無い”不便さ”を楽しんでいたように感じていた。


「うぅ〜、ごはん・・・・」

 さすがに限界に来ていたのか、ルールーが生きる屍の様にフラフラとした足取りで、カグに縋りつく。


「マスター、このままでは何処かの飲食店が営業停止に陥る恐れがありますよ」

 アルターレ護国で、下手な断食のせいで店一件分の食料を食べつくし、営業停止に追い込んだ前科のあるルールー。

 それ以来、時間が無く量は少なくとも、ルールーにきちんと食べさせるようにしていた。

「そうだな。まずは腹ごしらえするか」


 ルールーの様子を見て、「どこにするかを議論する余裕はなさそうだ」、と昊斗そらとが辺りを見渡すと、懐かしさを憶える外観・・・学生の味方ファミレスを見つけ、「あそこにしよう」と中へ入る。


 ルーン王国の都市、ロードにあったファミレスと言う名の大衆食堂とは違い、中も昊斗そらと冬華とうかの知っているものと差異の無く、店員に案内され席に着いた六人は、朝食というより少し早めの昼食を取った。


 恐れていた最悪の事態は免れ、店を出た時にはルールーの機嫌はすっかりなおり、ニコニコと満足そうにしている。


「それじゃ、約束の街に向うか」


 協力者であるヴィルヘルミナの警護役をしているモニカが合流に指定した街は、ゼーマンシュタットから北に三百キロ行ったところにある【ゴルト】と言う街だった。

 そこへ行くのにもっとも一般的な方法が・・・・・・・


「ここだね、ゼーマンシュタット駅」

 

 帝国内で最も普及している交通手段の、鉄道である。

 ルーン王国がそうであるように、帝国も国内中に鉄道網を張り巡らせ、まるで血液が循環するように絶え間なく列車が動き続けており、帝国国民の足として重宝されている。


 駅構内へと入り、昊斗そらとたちは切符・・・ではなく乗車用のICカードを人数分購入し、お金をカードの中に入金した。


「ゴルドに行くには、”高速鉄道”に乗るのが一番のようですね。あちらの機械で乗車する列車と座席を指定し、購入が出来るようですよ」

 いつものように、ベストなタイミングで必要な情報を調べる玉露ぎょくろ

 彼女が指差した方には、地球だと券売機が置かれていそうな壁沿いに、ズラッとタッチパネル式の画面が並んでいた。

 画面をタッチし、今いる駅からアクセス出来る行き先を指定すると、最も早く出発する列車が表示され、そこから列車を選ぶと今度は座席の空席状況が表示され、その情報がリアルタイムで更新される。


 代表して画面を操作していた昊斗そらとは、空いていた六人掛けのボックス席を指定し、座席を購入。その後一人ずつ、画面の読み取り部にICカードを翳し、カード内に乗車する列車と座席のデータを読み込んだ。


 改札をくぐり、ホームの階段を上がると、昊斗そらとたちには、”一部”を除き見慣れた光景が広がっていた。


「高速鉄道って・・・・リニアかよ」

 騒然とホームに並ぶリニアモーターカーの雄姿に、昊斗そらとは呆れるしかなかった。


 帝国において、高速鉄道とは磁気浮上式リニアモーターカーの事を指し、稼動から四半世紀が経過しているありふれたものだ。

 実を言うと、昊斗そらとたちは、傭兵として様々な異世界を旅し、多くは無いが科学技術の進んだ世界も訪れているのだが、リニアモーターカーが普及した世界が無かったので、乗ったことが無いのだ。


「私と昊斗そらと君の世界では、まだ実用化されて無いもんねぇ。玉露ぎょくろちゃんと金糸雀カナリアのところは?」

 昊斗そらと冬華とうかの住む世界と、玉露ぎょくろ金糸雀カナリアの住む世界は別次元に存在するのだが、住んでいる国の名前が【ニホン】と呼ばれていたり、文化レベルが同じだったりと、共通点が意外に多かったりする。

 そのため、たまに流行などがかみ合ったりするので、四人は「不思議だな」と昔から言っていた。


「たしか、再来年開業でしたか・・・まぁ、私には縁の無い乗り物ですが」

 乗車賃が無駄に高いのよ、と玉露ぎょくろが愚痴気味に呟く。

「私は多分乗れるのかな。パパが出資してるって言ってましたから」

 相変わらず、他意の無い天然発言をする金糸雀カナリア。その言葉に、玉露ぎょくろの周囲に”ピキッ”とひびが入る。

「ほう・・・・サラッとお家自慢ですか?」

「いひゃい、いひゃいよ!!」

 声に怒りを滲ませながら、無表情の玉露ぎょくろ金糸雀カナリアの頬を抓る。

 

「あの、皆さん・・・乗らないんですか?」

 いつまでも乗り込まない昊斗そらとたちに、カグが少し苛立ちながら声をかける。


 カグの珍しい態度に、昊斗そらとたちは驚きながら、促されるようにリニアモーターカーの中へと入っていった。


「車内が広いねぇ」

 広大な大陸を走るためか、日本の新幹線と比べ帝国のリニアは大きく、車内はかなり広い。

 自分たちが座る座席を探しながら、後ろの車両へと進んでいくと、複数の座席が仕切りで囲まれた車両に行き着いた。

「あ、この車両ですね・・・・そして、あのボックス席が私たちが座る座席みたいです」

 入り口に設置された端末に、金糸雀カナリアがICカードを翳すと、端末の画面に映る座席の見取り図に赤い表示が点滅し、座席の方を見ると、座席上のライトが点滅していた。

 これは各車両に設置されている座席確認用の端末に、ICカードを翳すと自分の座席を表示し、そこまで案内してくれる仕組みになっているのだ。

「ル−ちゃんとカグ君は窓際がいいかな?」

 窓際にルールーとカグを座らせ、ルールーの横に冬華とうか、その隣に昊斗そらと。反対には、カグの横に玉露ぎょくろ金糸雀カナリアの順で座っていた。


『ご乗車ありがとうございます。当列車は、”エンパイアエキスプレス37号”ゴルド経由、帝都アンファング行き、発車いたします。閉まるドアにご注意ください』

 車内アナウンスが流れ、リニアがゆっくりと動き出す。


「静かだな」

「ホント。新幹線とか比べ物にならないね」

 リニア初体験の面々は、新幹線とは違う乗り心地に、軽い感動を覚える。

 だが、それ以上に感動していたのは、窓際に座る子供姿の神様二人だった。


「お・・・おぉ!速いの〜!!見るのじゃ、カグツチ!景色が流れるように過ぎて行くぞ!」

 窓の外の風景が、目が追いつかないほどの速さで通り過ぎていくのを見て、ルールーが声を上げる。

「本当に凄い・・・・人間は、このように凄いものを生み出すことが出来るのですね」

 ルールーとは違った視点で感想を漏らすカグ。


 楽しそうに窓の外を見ていたルールーが、何かを思い出したように、窓の外を見るのを止め昊斗そらとたちのほうへ振り向いた。

「しかし、いつも思うのじゃが、なぜソラトたちはこのように、”まどろっこしい方法”で移動しておるのじゃ?主らなら、もっと早く移動する方法があるじゃろうに」

 フェリシアと契約する精霊になってから、昊斗そらとたちと行動を共にしているルールーは、いつもそのことが気になっていた。

 もちろん、彼らが人間の決め事に従っている事は、ルールーも何となく理解しているのだが、彼女にはどうしても腑に落ちなかった。

「それは、僕も疑問に思っていました。どうしてですか?」

 ルールー同様、カグも思うところがあり、話を聞こうと居住まいを正す。


 そんな二人を見て、昊斗そらとたちは顔を見合わせると、示し合わせたように頷いた。


「そうだな・・・言ってしまえば自己満足かな」

 昊斗そらとの言葉に、ルールーとカグが首を捻る。

「自己満足・・・ですか?」


 どういう意味なのか分からない、と言ったていのカグに、冬華とうかが微笑んで”ある問い”をした。

「ルーちゃんもカグ君も、私たちは物凄い存在だって思ってるでしょ?」

「うむ」

「そうですね」

 即答する二人。

 代理神とは言え、神である自分たちを殺す力を持ち、ルールーたちの生みの親である最上の存在、創造神と対等―というより、完全に上―である昊斗そらとたちを、二人は人間だと認識していない。

 人間と言う枠を、あらゆる意味で逸脱しているのだから、当然と言えば当然である。


 だがそんな二人に対し、冬華とうかは衝撃的なことを口にする。

「でもね、私たちって自分たちの世界じゃ、ごく普通の人間なの。特別な力を持たないね」

「・・・・え?」

「冗談・・・じゃろ?」

 さすがの二人も、こればかりは冬華とうかも冗談を言ってから自分たちをかっていると思ったが、彼女の目は冗談を言っているとは思えないほど、真剣なものだった。

 

「冗談ではないですよ。私なんて、今年から普通の専門学校生ですし、金糸雀カナリアは大学生でしたっけ?」

「うん。今年の春から大学一年生になるね。我が主と昊斗そらとさんも、すでに大学生ですよね?」

「あぁ」

 他の三人も同じように冗談を言っているようには見えず、ルールーとカグは頭が付いて行かずに、呆然としてしまう。


「傭兵をやってる時は、人間を超える力を振るったりもするし、今の私たちはその存在自体が人間の枠を大きく外れるけど、それでも私たちは何処まで行っても自分たちは人間だと思ってるの。だから、そのことを忘れないようにする為に、出来る限り人間らしいことをしている・・・・んだけど、他の人から見れば、やっぱり自己満足でしかないんだよね」

 そう言う冬華とうかの顔が、何処か寂しげに見えたルールーたち。

 もしかしたら、自分たちは聞いてはいけないことを聞いてしまったんじゃないか?と思い、閉口してしまう。


 そんな二人に昊斗そらとが、「いつかは聞かれるだろうと思い、話すつもりでいた」と言って、少し強めに二人を頭を撫でた。


『次は、ゴルド。ゴルドです。降り口は左側です。お降りの方はご準備ください』

 そうこうしていると、目的地であるゴルドの駅のホームへとリニアが滑り込んでいく。


「着いたみたいだな。皆、降りるぞ」


 昊斗そらとを先頭に、未だ落ち込み気味のルールーとカグの手を引いて冬華とうかたちが後に続き、列車を降りる。


 改札を抜け、駅の外に出ると、ゼーマンシュタット駅前以上に人でごった返していた。

「凄い人ごみだな」

 観光客と思われる一団から、トレジャーハンターの様な格好をする者に、裏の社会に精通していそうな黒服の方たちと、それこそ多種多様な人種、種族が往来を埋め尽くしている。


「何でも五年ほど前に金鉱脈が発見されて、それ以来この街はゴールドラッシュに沸いているそうです。国内外から一攫千金を夢見てやってくる者や、ゴールドマネーによる都市開発で観光客も増えているそうです。現在、帝国で最も発展が進む場所ですね・・・・あ、スリや置き引きが多いみたいですよ」

 駅から出る前にゴルドの紹介が載ったパンフレットを取ってきていた玉露ぎょくろが、パンフレットに目線を落としたまま説明する。

 観光客向けだったようで、路上犯罪に対する注意も書かれており、人ごみの中昊斗そらとたちを狙う視線が幾つもあったが、昊斗そらとたちはごく微量の殺気を混ぜた警告を視線の主に叩きつけ、問題に巻き込まれないようにしていた。


「それで、我が主。協力者の方とは、何処で待ち合わせを?」

 これだけの人ごみとなると、待ち合わせしていたとしても、携帯を持って連絡しあいながらでないと、集合するのは困難である。

「えっとね・・・・・」

 冬華とうかが辺りを見渡していると、スッと後ろに人が立つ気配が起こる。


「学び舎の花園に、たいそう美しい三輪の華が咲くそうですが、本当ですか?」

 他人が聞いても意味の分からない問いに、冬華とうかは笑みを浮かべ、振り返ることなく答えた。

「えぇ。でも最近は四輪に増えて、その花園は一層華やかになったみたいですよ」

 答えを言って、冬華とうかが振り返るとそこには、帝国で流行している少し大人びた服を着たモニカが笑顔で立っていた。


「・・・・ようこそいらっしゃいました、オクゾノさん、ナツメさん。それに他の方々も、歓迎いたします」

 あれだけ年齢相応に見てもらえないことを嫌がっていたモニカが、バッチリと化粧をしており、ルーン王国の時とは全く印象が変わっており、どういう心境の変化だろうか、と昊斗そらとは心の内で首を傾げる。


「こんにちは、モニカさん。それにしても、符丁にミーナちゃんたちのことを選ぶなんてね」

 昊斗そらとと同じことを考えながらも、冬華とうかはモニカの格好には触れず、先ほどの”符丁”について触れた。

 先ほどのやり取りは、アイディール学園高等部に通う者なら誰でも知っていることだった。

 最初の三輪の華と言うのは、フェリシアにアリエル、そして生徒会長のクレアのことだ。昼食の時、彼女たちが中庭で弁当を広げて食べる光景を”花園”と比喩したのだ。

 そしてテロ事件後、そこにヴィルヘルミナも加わり華が四輪になったと、生徒たちの中で騒ぎになったのは有名な話だ。

 そのことを、フェリシアたちから聞いていた冬華とうかは、モニカの言葉の返しを容易に出来たのだった。


「皆さんなら、分かると思っていましたので・・・部屋を用意しています。わたしに付いて来て下さい」

 モニカは、人ごみを避けるように歩き出し、昊斗そらとたちも彼女の後を追って歩き出した。


 数分ほど歩いて到着したのは、古めかしい外観のホテルだった。


 ホテルに入るとフロントの中にいる女将にモニカが会釈し、そのまま中へと入っていく。

 昊斗そらとたちも、周囲に気を配りながら後へ続き、階段を上っていくと、部屋の前でモニカが待っていた。


 全員が来たことを確認すると、モニカは不思議なリズムでドアをノックする。

 すると、鍵の外れる音が廊下に響き、ドアが少し開いた。

「どうぞ」

 扉をくぐり、全員が中へと入ると、部屋の中に二人の男女が立っていた。

 男の方は三十代ほどで痩せ型。女性の方は二十代後半ぐらいで、少し小柄な体格である。そんな彼らの間にモニカが入り、昊斗そらとたちへと振り返る。

「紹介します。わたしと一緒にヴィルヘルミナ殿下の護衛役を仰せつかっている、ロック少尉とアミュア准尉です」

 紹介された二人は背筋を伸ばし、帝国式の敬礼を行った。

「「協力、感謝します!」」

 軍人と言うより、プログラマーと言った方がしっくり来るロックと、小柄な女性のアミュアが昊斗そらとたちに期待の眼差しを送る。

 昊斗そらとたちも、傭兵として彼らに敬礼で返した。


 上げた腕を下げながら、冬華とうかがモニカの方へ顔を向ける。 

「それはそうとモニカさん、一つ聞いてもいいかな?」

「はい、なんでしょうか?」

「帝国陸軍情報部のクレメンス大佐って、何処に行けば会えるかな?」

 冬華とうかの口から出た名前に、モニカたちが盛大に噴出し、ゲホゲホとむせる。

「?!ど、どうしてその名前が出てくるのですか?!」 

 間違っても他国の人間の口から飛び出る人物でない為、モニカたちは何故昊斗そらとたちが知っていたのか、混乱する。

「帝国に来る時、船の中でその大佐殿の子飼いの特殊部隊に襲われたんだよ」

 包み隠すことなく、昊斗そらとが船上で起きた事実を伝える。襲撃の詳細を聞き、モニカたちに衝撃が走ったらしく、全員が気絶一夫手前で絶句する。



「あ、あの・・・・それで、その特殊部隊のメンバーは?」

 数分後。落ち着きを取り戻したモニカが、特殊部隊のメンバーの行方を聞こうと質問する。 

「一応、全員隔離空間で拘束してるよ。海上とは言え、他国の所属船でおイタをしたんだから、ルーン王国の法に則って処刑しても良かったんだけどね」

 ルーン王国において、船上での犯罪は陸での犯罪に比べて重罰が科される。その中で虐殺行為に関しては、たとえ未遂であっても問答無用で死刑となっている。


「”名指し”でケンカを売られたんだ。買ってやろうと思ったんだよ」

 昊斗そらとたちの身体から陽炎のように、殺気が揺らめく。彼らの殺気に耐性の無いモニカたちは、今すぐにでも逃げ出したい衝動に駆られる・・・が、さすがに元情報部。衝動を必死に押さえ込み、震えながらモニカが口を開いた。


「じ・・・・・実は、クレメンス大佐は・・今回の最重要参考人の仲間である可能性が指摘されて・・・いて、もし宜しければ、こちらに・・まかせていただけませんか?わ、わたしから、信頼できる方に・・・お伝えします・・ので」


 震えるモニカを見て、昊斗そらとたちから殺気が薄れる。

「信頼できる方?」

 自分たち以外に協力者がいる事を聞いていなかった昊斗そらとは、スッと目を細める。

「ヴィルへルミナ殿下の兄上である、第二皇子のディートハルト殿下だ。今回、我々に協力してくださることになっている」

 同じ少尉とは言え、モニカよりも年齢が上のロックは気を強く持って、自分たちの協力者の名を明かす。


 ヴィルヘルミナのもう一人の兄が協力することを知り、昊斗そらとたちから殺気が消え、モニカたちがその場にへたり込んだ。

「そっか・・・・ごめんね、怖い思いをさせちゃって・・・・まぁ、あくまで私たちの目的は、ミーナちゃんを助けることだしね。そちらは、お兄さんに任せよう」

 肩で息をするモニカに冬華とうかが手を差し伸べる。

「あ・・・ありがとうございます」

 

「しかし、どうしてそのディートハルトさんは、あなた方に協力を?」

 立ち上がったモニカに、玉露ぎょくろが質問すると、モニカはアミュアに視線を送り、アミュアはゆっくりと頷いた。

 

「はい・・・実は、ヴィルヘルミナ様が囮になることを知ったディートハルト様は、兄であるライナルト様にやめるよう進言したのですが、聞き入れてもらえなかったらしく、独自に動かれていたのです。そのことを知った我々は、皇子に接触し、協力を取り付けたのです」


「なるほどな・・・・それで、殿下には俺たちが協力することを伝えているのか?」

「それはまだですが・・・・どうしてそんなことを?」


「船で襲われたことと言い、多分今回の敵は、俺たちがヴィルヘルミナを助けに来たと思っているんだと思う。しかも、特殊部隊の奴らの記憶を調べたら、俺たちの顔まで割れていた。となると、下手に俺たちが協力していると知られれば、殿下が動きにくくなるかもしれない」

 今回、昊斗そらとたちは表向きは旅行を理由に、帝国を訪れている。ルーン王国国王カレイドとも話をつけ、もしもの場合は、昊斗そらとたちの独断と言うことで、ルーン王国へのダメージを最小限にするようにしている。

 しかし、帝国の皇子が国内の問題に、他国に所属する異世界人を介入させた、と噂が持ち上がれば、敵に付け入る隙を与えることになりかねない。

 昊斗そらとは、そう考えたのだ。


「・・・・そうかもしれませんね。どうしましょうか?この後、ディートハルト様と合流することになっているのですが、皆さんは別行動されますか?」

 昊斗そらとの考えを聞き、モニカは彼らの選択を待った。

「そうしたんだけど、私たちもミーナちゃんのお兄さんに、どうしても聞きたいことがあるからなぁ」

 そういって、冬華とうかは小悪魔な笑みを浮かべた。

「だから、”奥の手”を使おうと思います」

「奥の手?」

 首を傾げる、モニカたち。

 奥の手と聞いて、昊斗そらとがげっそりとした。

「やっぱ、”あれ”を使うしかないよな?」

 不満そうにする昊斗そらとに、冬華とうかがムッとした表情を作る。

「だって、どれだけ対象があるかも分からないのに、その全てに認識阻害の術なんて使ってられないもん。”あれ”なら私も昊斗そらと君も、殆ど力を割かなくていいでしょ?それとも、昊斗そらと君が術を使ってくれるの?」

「マスター、私は嫌ですからね。効果範囲を常に計算したくないです」

 玉露ぎょくろの援護攻撃に、昊斗そらとが深々とため息をつく。

「・・・・・分かったよ」

 痛い所を突かれ、結局昊斗そらとが折れる形で、決着が付く。


 彼らのやり取りの意味が分からず、モニカたちの頭には疑問符が浮かぶのだった。


*********


「目標に変化なし」


 昊斗そらとたちがいるホテルから数キロを離れた高級ホテルの一室で、モニターに向う黒いスーツ姿の女性。

 その画面には、昊斗そらとたちがいるホテルが映し出され、サーモグラフィー画像が表示されている。


「一時は撒かれたと思ったが、所詮は時代遅れの国から来た異世界人・・・・乗車データを調べれば、行き先などすぐに判るのだよ」


 女性の上司と思われる男が、画面に向って勝ち誇った表情を浮かべる。


「・・・・時間だな。”シュトローマン”起動」


 男の号令と共に、部下の女性がパソコンのキーを素早く叩く。

 すると、画面上に、機動兵器のコンディションデータが表示され、遠隔操作によって起動する。


「正常に、起動しました」

 機体が起動したことをほうっくし、女性は次の命令を待つ。


「攻撃開始」

 男は躊躇無く、ゴーサインを出した。


「了解」

 女性は、キーボードのエンターキーを押す。


 すると次の瞬間、監視画面に映る昊斗そらとたちがいる部屋が、爆発したのだった。


次回更新は9月15日(月)PM11:00過ぎを予定しています。


変更の場合は、活動報告にて連絡します。

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