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創造神たちの傭兵  作者: 仁 尚
騒乱 ルーン王国 編 
110/180

エピローグ

 クーデターから四日。王都では復興作業が始まり、人々は生活を取り戻す為に助け合っていた。



「・・・・・・・んっ」

 アルトリアが重い瞼をゆっくりと開けると、見知らぬ天井が飛び込んできた。


「ここは・・・・・?」

 辺りを見渡すと、全体的清潔感のある白で統一された部屋。自分の腕から、点滴の管が伸びている。働かない思考のせいで、まるでその光景が他人事のように思えた。


「病院?」

 何故、自分が病院にいるのか解らず、アルトリアは身体を起こそうとした時だった。


「おや、目が覚めたようですね」

「?!」

 突然声を掛けられ、アルトリアは驚いて声のする方へと顔を向ける。


 そこには、いつもの着物を着て、花の生けられた花瓶を持つ玉露ぎょくろが立っていた。


「あ、あなたは・・・・・・」

 敵である玉露ぎょくろに警戒心を露に知るアルトリア。玉露ぎょくろはそんなことお構いなしに、ベッドサイドのテーブルに花瓶を置き、椅子に座った。


「貴女の置かれた現状を説明に来た人間に、そのような態度は失礼ではありませんか?」

「え?」

 何故騎士団でもない玉露ぎょくろが、説明に現れたのか解らず、アルトリアは驚いた表情を浮かべる。

 玉露ぎょくろは座りなおし、説明を始めた。

「騎士団に引き渡した貴女が、一向に目覚めないと、病院に搬送されたのは三日前。今は、あの事件から四日が経過しています」

「!・・・・そんなに?」

 久々に使った能力だが、まさかそこまで眠っていたとは思わず、アルトリアはショックを受ける。


「事件は騎士団団員に数名の死者が出ましたが、首謀者やその協力者たちが拘束され、終結。首謀者たちなどはすでに刑が執行され、今も関係者たちの尋問などが続いています。そして、貴女の仲間と思われる者たちですが・・・・」

「・・・・・・」

 ユーリがフレミーに斬られたあの時、”自分たちはここで敗北するのだな”、と遠くなる意識の中で考えていたアルトリアだったが、同時に仲間の安否も気になっていた。

 固唾を呑んで言葉を待つアルトリアに、玉露ぎょくろは静かに結末を伝える。

 

「まず、竜召喚士のマギハは、異世界人ドラグレアとの戦闘で、自らが召喚したドラゴンが制御できなくなり、そのドラゴンたちによって食われ、死亡。喧嘩屋ディアゴ・ロディオは、アルバート騎士団の団員数名を再起不能にし、同騎士団団長のフォルト・レーヴェとの戦闘で死亡・・・」

「あぁ・・・・・・そんな」

 無慈悲なまでに淡々とした玉露ぎょくろの説明に、アルトリアは涙を流す。


 マギハは、同じ異世界人として、アルトリアをいつも気に掛けてくれた兄の様な存在だった。ディアゴからは、何時もからかわれていたが、それでもアルトリアにとっては憎めない仲間だった。


 そんな二人が、こうもあっさり命を落としたと言われ、アルトリアは目の前が真っ暗になる。


「そして、自称勇者・・・ユーリ・ペンドラゴンは、”魔王落ち”したのち、マスターによって処分されました」

 処分。

 狂おしいほどに敬愛していた勇者が、死亡ではなく処分されたと聞かされたアルトリアだが、不思議と怒りや悲しみは湧いてこず、寧ろ玉露ぎょくろの言った単語が気になった。

「魔王落ち?」

 聞きなれない単語に、アルトリアが首を傾げる。


「正確には、それに似た現象。ここからは私たちの推測ですが、彼は、勇者の称号・・・つまり勇者であると言う証を持っていました。ですが、彼のは生まれ持ったものではなく、後から強引に手に入れたもの。それを手に入れるのに、何かしらの誓約がなされ、破った為に称号が反転し、勇者から魔王となったのだと、我々は考えています・・・魔王は力の強弱に関係なく、世界に悪影響を及ぼす存在なので、有無を言わさず処分した、と言うわけです」


 説明を聞き終わっても、やはりアルトリアはユーリに対して、何の感情も湧いてこなかった。


 マギハやディエゴには悲しみが沸き起こったにも拘らず、同じ感情をユーリに対して感じることが出来なかったのだ。

 何故だろう、と考えていたアルトリアを尻目に、玉露ぎょくろは次の説明を始めた。

「さて、今後の貴女の処遇ですが・・・」

「え?」

 声を上げるアルトリアに、玉露ぎょくろは極僅かに眉を顰める。

「何か、気になることでも?」

「い、いいえ・・・」

 アルトリアは、慌てて首を横に振った。

 彼女が声を上げた理由は、もう一人の仲間である巫女のレーアに関して情報が無かったことだ。


 つまり、少なくとも彼女は、作戦に失敗しても捕まることなく逃げ延びていると、アルトリアは考え、レーアの安全のために口をつぐんだのだった。


 顰めていた眉をピクッと動かし、玉露ぎょくろは短く息を吐いた。

「・・・話を戻しますよ?貴女が召喚された国は、先の小国連合崩壊の折に消滅しており、貴女の処遇はルーン王国に一任されることになりました。ルーン王国の法律において、異世界人に科せられる最高刑は、死刑・・・ですが、あなたの場合は、人里離れた山小屋で監視つきの隔離となりました」


 てっきり、重い罰が待っていると思っていたアルトリアは、玉露ぎょくろの言葉が信じられず、耳を疑った。

「なんで・・・・・?」

 アルトリアの疑問に、玉露ぎょくろはため息を漏らした。

「気が付いているのではないですか?・・・・」

 そういうと、玉露ぎょくろの目線が横へ動き、アルトリアの足のほうを見つめる。


「腰から下の感覚が、無くなっていることに」

「?!・・・・・・」

 玉露ぎょくろに言われ、アルトリアはずっと感じていた違和感が、間違いでなかったことに言葉を失う。


 そう、彼女の言うとおり、アルトリアは腰から下の感覚が消えていた。まるで、腰から下が無くなってしまったかのように。

「おそらく、武器化した際に刀身が折れたことで、肉体に支障が出たのでしょうね。こちらの見立てでは、この世界の医療技術では、回復させるのは不可能だと思われます。つまり、貴女はこれから一生、その不自由な身体で生きなければなりません。そして貴女は、ユーリ・ペンドラゴンに称号の力によって利用されていた、と認定されました。とは言え、犯罪に加担したことに変わりは無いので、総合して判断した結果が、先ほどの処置です」


 本当のところは、冬華とうかの回復術で治せない症状では無いのだが、自分がしてきた罪の重さを教える為に、昊斗そらとたちはあえて治さなかったのだった。

 

「言ったはずですよ?簡単には死ねない、と」

 不自由な身体を一生引きずって生きる。それが、アルトリアに科せられた罰だった。


「目が覚めた以上、数日後には移送されるでしょう・・・・それから、自殺が出来ないように誓約を刻んでいますので、きっちりと生を全うしてくださいね」

「ま、待って・・・っ!」

 立ち上がり、病室を出て行こうとする玉露ぎょくろを、アルトリアは何とか身体を起こし、呼び止めた。

 振り返った玉露ぎょくろは、無表情で呼び止めたアルトリアを見据える。


「何でしょうか?こう見えても、それなりに忙しい身なのですが・・・」

「どうして、そんなにもワタシのことを、気に掛けてくれるのですか?」

 敵である自分を手助けして、玉露ぎょくろに利があるとはどうしても思えないアルトリアは、彼女の真意を測りかねていた。

「気のせいでしょう?」

 アルトリアの問いに、玉露ぎょくろは無表情なまま答え、立ち去ろうとする。

「そんなはずはっ!」

 それでも追いすがるアルトリアに、玉露ぎょくろは振り返ることなく、ため息をつき、一つの話を始めた。


「・・・・・・・昔々、あるところに馬鹿な女が一人いたわ。その女は、たちの悪い男に引っかかり、愚かにも恋をしてしまい、付き合い始めてしまった。女の幼い頃からの友人は、女が騙されていることにすぐに気が付き、目を覚ますよう女を説得した。だが女は、そんな友人の必死の叫びに聞く耳を持たなかった。結局、女は男に良いように使われ、最後はボロ雑巾のように棄てられた・・・・女は、男に棄てられたのは、彼の期待に応えられなかった自分のせいだと言って、友人に男への手紙を渡すようメモを残し、その日にマンションから身を投げた・・・・私はね、馬鹿な男に引っかかる馬鹿な女を見ていると、腹が立つの。それだけよ」


 それだけ言って、玉露ぎょくろは振り返ることなく、病室を後にした。


 

 玉露ぎょくろが病院を出ると、外には私服姿の昊斗そらと冬華とうか。それに執事服姿の金糸雀カナリアが立っていた。


「もう、いいのか?」

 昊斗そらとの問いに、玉露ぎょくろは小さく頷く。

「えぇ・・・・・後は、彼女次第ですから」


 玉露ぎょくろは背筋を伸ばし、病院を背にして歩き出す。昊斗そらとたちは、そんな彼女に声を掛けることなく、後を追うように歩いていくのだった。 


******


 玉露ぎょくろが出て行った後、アルトリアは外の空気が吸いたいと、看護婦に頼んで外へと出た。


 先の事件のせいか、まだ辺りに焦げ臭い匂いが漂う中庭に出たアルトリアは、車椅子に座ったまま空を見上げた。

 空は青く澄み渡り、雲ひとつ無かった。


 これから、自分はどうなるのだろうと、漠然とする未来に対し、不安を感じながら視線を戻した時、視線の先にあるベンチに座っていた人物を見て、声を上げた。


「レーアさん!?」

 車椅子を必死に動かし、ベンチに座るレーアへと近づくアルトリア。


 だが、そこにいたレーアからは、いつもの覇気は感じられず、虚ろな目をして俯いていた。

「レーアさん、無事だったのですね?よかった・・・・・マギハさんもディアゴさんも、それに勇者様も皆、死んでしまいました。レーアさんの事は、王国側に知られていないようなので、すぐにここを離れて・・・・?レーアさん?」

 話しかけても、レーアから反応が返ってこず、不審に思うアルトリア。


 すると、レーアがゆっくり顔を上げた。


「レーアさん・・・・・・」

「あの・・・何処かで、お会いしたことがありましたか?」

「っ!?」

 衝撃的過ぎる言葉に、アルトリアは絶句した。

「すみません、わたし・・・・・何も覚えていなくて・・・もし、わたしのことを知っているなら、教えていただけませんか?」

 いつものレーアと全く違う受け答えに、アルトリアは彼女に何が起きたのか解らず、頭の中が真っ白に染まる。

 その時、後ろを通った病院関係者の声がアルトリアの耳に届いた。


「あの人でしょ?この間の事件で運び込まれた記憶喪失の患者さんって」

「気の毒よね・・・・・どんな治療にも反応しないって話だし、このまま身よりも無かったら、施設に入ることになるのかしらね」

「記憶・・・喪失?」

 看護婦たちに会話を聞き、アルトリアは震える唇を何とか開いた。


 レーアの顔を注意深く見ると、薄っすらとだが彼女の額に、見たことのない刻印が刻まれていた。


 それが、レーアの記憶を奪ったのだろうと思ったアルトリアは、彼女も人知れず罰せられたのだろうか、と考えてしまい、俯いてしまう。

「あの・・・・」

 不安そうに見つめるレーアに、アルトリアはグッと唇を噛みしめ、顔を上げ彼女の顔を見た。

「ごめんなさい・・・・・よく似ていたのですけど、人違いだったようです」

 アルトリアの言葉に、レーアは残念そうな表情を浮かべた。

「そうですか・・・・・」

 そして、すぐにやってきた看護婦によって、レーアは病棟内へと入っていき、アルトリアはその背中に二度と声を掛けることが出来なかった。


 もし、自分と関係があることがバレれば、記憶を失っているとは言え、レーアも処罰される可能性がある。

 何もかも忘れているのなら、このまま黙っている方が彼女には幸せだろうと思い、知らないと嘘をついたのだった。


 一人で病室へと戻る最中、アルトリアは嗚咽も漏らすのを、必死になって堪えていた。

 

 自分たちが、勇者パーティーとは名ばかりに、他人から非難されることをしてきた、と自覚はあったし、今では罪悪感も感じている。

 この結末も、当然の報いだろう。それも理解できた。

「っ・・・・ふっ!・・・・っ・・・」


 病室に到着し、ベッドへ転がり込んだアルトリアは枕に顔をうずめ、そして・・・


「うわぁああああああああああああああああああああ!!・・・・・・・・・・・」

 声を嗄らさんばかりに泣いた。


 例え、人々から非難される行いをやってきたとしても、仲間のために泣くのは許されるはずだ、とアルトリアは泣くのだった。


****************




 薄暗い石造りの廊下を歩き、エイレーネは鉄格子の嵌るその場所の前で立ち止まった。


「気分はどう?」

 鉄格子の中にいる人物は、エイレーネの姿を認めると、彼女に聞こえるように舌打ちした。

「・・・元気そうね。お父様からお許しが出たわ。そこから出て良いそうよ」

 エイレーネが視線で合図すると、傍にいた刑務官風の男が鉄格子の鍵を外し、鉄格子を開いた。


「・・・・・・・・・・・」

 中から現れたのは、汗や汚れで変色し、赤黒くなったドレスを着たベルベッドだった。

 長い間、牢に入れられていたせいで、髪や肌に前の様な艶はなく、頬も少しこけている。

 疲労を滲ませ、疲れきった顔つきだが、エイレーネを睨みつける眼だけは、変わらず強い光を帯びていた。


「少しは反省できたかしら?準備が済んだら、すぐに計画へ戻りなさい。解っていると思うけど、次は私でも庇いきれない・・・・後が無いのは理解しているわね?」

 アルターレ護国での一件以降、戻ってきたベルベッド対し、”お父様”は幽閉を言い渡し、ベルベッドは一月以上地下牢に閉じ込められていた。

  本当は、”不要品”として粛清されるところを、エイレーネが助け舟を出し、幽閉で済んでいた。


 そのことに、エイレーネは恩を着せるような事は一言も言わなかったが、ベルベッドにとっては屈辱的な出来事だった。

「解っているわよっ・・・・・」

 ベルベッドは、苦虫を潰したように顔を顰め、少し離れた場所に立っていたベンジャミンを見つめた。


 主人に視線で呼ばれ、ベンジャミンは音もなくベルベッドの傍へと近づいた。


「お嬢様、お風呂の準備と着替え、それにお食事を用意しております。それから、スタイリストも」

 そういうと、ベンジャミンはベルベッドを抱えようと膝をつくが、彼女は伸びてきた手を払いのけた。


「一人で歩けるわ!!」

 従者を怒鳴り、ベルベッドはふらつく足取りで出口の方へと歩いていき、突然立ち止まった。

「・・・・・借りを作ったとは思わないから!」


 そんな棄て台詞を吐いて歩き出す腹違いの妹に、エイレーネは笑みを浮かべ、立ち上がりベルベッドの後を追おうとするベンジャミンにエイレーネは「ちょっと」と声を掛けた。


「・・・・あんな子だけど、これからもお願いね?」

「・・・・・言われなくても、それが仕事ですから」

 振り返ることなく、エイレーネの言葉に答え、ベンジャミンは足早に立ち去っていった。


「あの子に、あんな優秀な従者が傍にいてくれると、私も一安心だわ」

 独り言のように呟いた言葉。

 だが、その言葉に答えるものがいた。

「そんな従者を、妹君から奪い取ろうとしていたのは、ご主人様だったと記憶しているのですが?」

 いつの間にかエイレーネの後ろに、黒い外套を纏い、眼の部分だけ開いた真っ白な仮面を被った男・・・彼女が契約する精霊ウィスパーが立っていた。

「ふふ・・・あの子は、何だかんだであの坊やに依存している。私はね、あの子を心配だと思う反面、坊やをあの子から取り上げた時、妹がどれだけ絶望した表情をするのか、見てみたいって気持ちもあるのよ」

 エイレーネは、腹違いの妹を心配し気に掛けている裏で、そんな妹を自分が壊してやりたいという、相反する気持ちを持っていた。 


 姿の見えなくなった妹に対し、クスクスと笑う契約者を見てウィスパーは、やはり人間とは面白い存在だ、と仮面の下でニヤついていた。


「それで?」

 報告に現れたウィスパーに、エイレーネは短い言葉で促す。

「やはり、ルーン王国は手強い存在だと認めるしかありません。今回の一件、我々は関与していませんでしたが、一日で解決したのは異常でしょう・・・・・ご主人様の言うとおり、あの国には傍観を決め込んだ方がよろしいかと」

 ルーン王国で起きたクーデタ−に関する報告を受け、エイレーネは自分の勘が正しかったことに、ホッと胸を撫で下ろす。

 先のテロ事件への関与の折、クーデターの計画を小耳に挟み、一枚噛もうとも思っていたエイレーネだったが、テロ失敗を受け、その考えを棄てていたのだった。


「そう・・・・・・他は?」

「帝国に関しては、ベルベッド様に経過報告を送っております。それから例の装置ですが、ベルベッド様から回収したデータが大いに役立ったそうです。後一〜二回データを取る事ができれば、完全なものになると」

 エイレーネは、ベルベッドから取り上げたデータを、自分の目的のために流用していた。もちろん、”お父様”に内緒で、である。


――あの子が知ったら、さぞ怒るでしょうね――

 と、自分の研究を横取りされた妹の激怒する姿を思い浮かべながら、エイレーネは笑みを深めた。


「装置の方は任せるわ・・・・私の方も、実験対象に関する情報を集めておくわ」

「畏まりました」

 そう言って、ウィスパーの姿が忽然と消え、薄暗い石造りの廊下にはエイレーネ一人だけとなった。


「こんな所で何をしているの?」

「!?」

 再び後ろから声を掛けられたエイレーネだったが、ウィスパーの時とは違い、今度は心臓が止まりそうなほど驚き、固まってしまった。

 その声の主が、このような場所に現れるはずが無い、と思っていたからだ。


「ねぇ・・・何をしているの?」

 繰り返される質問に、エイレーネは乱れた意識を整え、笑みを貼り付けて振り向いた。


 そこに立っていたのは、見た目エイレーネと歳の変わらない女性。何処か幼さを感じる表情の無さに、白と黒のマーブル模様の長い髪。そして、虹色に輝く双眸。シンプルなデザインのワンピースを着ているが、残念ながら女性らしい凹凸は、あまり見られなかった。


 エイレーネにとって、”お父様”に匹敵するほど畏怖する存在がそこに立っていた。


「いえ、妹が拘束を解かれると聞いていたので、立ち会っていたのですよ。貴女様こそ、このような場所で何を?」

 崩れそうになる笑みを全力で貼り付け、エイレーネは質問を返した。


「只のお散歩」

 そう答えた女性に、エイレーネは眩暈を覚える。まるで、子供を相手にしているような錯覚に陥いり、こんな存在が・・・と内心毒づく。


「気軽に出歩かれていい、お立場では無いのですよ?もう少し考えてください・・・・大神アルルカルラ様」

 何度となく彼女と接しているエイレーネだが、何を考えているか判らない大神相手に、精神が磨り減っていくのを感じた。

 

「・・・・・残念ね」

 自分よりも矮小な存在であるはずのエイレーネの言葉を素直に受け入れ、アルルカルラの姿が音も無く消える。


 気配が消え、エイレーネの全身からドッと汗が噴出し、膝が笑う。


「本当・・・・・・・・勘弁して欲しいわ」

 気まぐれに出歩く大神に、震える声で文句を言いながら、エイレーネは冷や汗で濡れた下着などを替えるために、部屋へと足早に帰っていくのだった。 


この話を以て、今章は終了となります。

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。


読者の皆様にはご迷惑をお掛けしますが、一度ここで一月ほどお時間を頂きたいと思います。

投稿を始めて一年が経ち、ここまで書き続けてきましたが、忙しいと託けて改稿作業をサボっていました(汗。

読み返すと、色々と気になる部分が多々ある為、その作業に充てたいと思います。

あと、番外編の方も充実させたいので、そちらも更新しようと考えています。


本編を楽しみにしている読者の皆様には申し訳ありませんが、少々お待ちください。


8/18 次回更新を、8月25日(月)PM11:00過ぎを予定しています。

変更の場合は、活動報告にてご連絡します。


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