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創造神たちの傭兵  作者: 仁 尚
騒乱 ルーン王国 編 
102/180

(12) 衝撃のマジカルガール!

 連続更新、二本目!

 爆発した砲弾の煙が辺りに立ち込める中、冬華とうかは傷どころか煤一つつけずに、花が綻ぶような満面の笑顔で砲撃の直中にいた。


「まぁ、王都への攻撃ってだけでも十分死罪だけど、やるなら徹底的にやらないとね!」


 国王への反逆だけでも、間違いなく一族郎党死罪が言い渡される重罪だが、冬華とうかは相手に逃げ道を作ってやるつもりは微塵も無く、証拠作りに励んでいたのだ。


 先ほどから行われている録音。当然、ハドリー騎士団団長だけでなく、主だった役付きの者たちの言葉も録音済みである。

 つまり彼らとその家族に、未来は残されていないのだ。


『それにしても、警告なしに砲撃とは、これが他国相手だったりしたらどうなるか、あの人たちは理解できているのでしょうか?』

 金糸雀カナリアの指摘するとおり、そんなことをすれば、例え相手が友好国でも即戦争である。


 もし、騎士として、組織を預かる長としての常識を持っていたのなら、冬華とうかが通信で問いかけた時に、対応は違ったはずだ。

 そういった意味でも、彼らが無能な集団であると結論付ける一因にもなっていることを、彼ら自身は理解しているのか、金糸雀カナリアははたはた疑問だった。


 そんな中、冬華とうかは爆煙に包まれながら、眼下にいるであろう旗艦艦隊へと視線を落とした。

「さて、どうしようか?戦艦を傷つけず沈めることなく、敵を殲滅か・・・・」

 艦内にいる全員を殺す前提なら、殺リ様はいくらでもあるのだが、そんなことをすれば、彼女の中の計画は水の泡なので、殺しはぐっと堪えている。


 とは言え殺してから、生き返られる方法もあるが、ファルファッラを生き返らせることが出来ず気落ちしていた冬華とうかとしては、戦艦内にいる大量の無能な人間を、わざわざ生き返らせるなんて慈悲をくれてやるつもりも無く、却下した。


 そこでまず思いついたのが、艦隊全体に睡眠系の術を使い、眠らせて拘束する方法。

 だが、これだとあまりに地味なので、冬華とうかは自身の中でバツをつけた。


 昊斗そらとのようにレゾナンス・オンして、神滅術を使うことも考えたが、それだと乗組員は死なないが、戦艦は消滅し周囲の環境に多大な影響がでるので、この手も使えなかった。


『だったら我が主、”アレ”を使えばいいのではないですか?』

 そんな悩む冬華とうかに、金糸雀カナリアはポンと音をつけて手を叩いた。

「”アレ”?・・・・・ってまさか、”アレ”?」

 金糸雀カナリアが、何を指して言っているのか気が付いた冬華とうかの顔から、血の気が引いた。


『はい、そうです!戦艦を傷つけず、乗組員だけを”安全かつ派手”に殲滅する。となると、アレが有効ですよ!』

「いや・・・・・・金糸雀カナリア。私もそう思ったけど、使うには・・・”アレ”着ないと駄目でしょ?」

 もちろん一度は考えた手だったが、その方法を使いには、とある格好を絶対にしなければならず、今の冬華とうかが払うには”代償”があまりにも大きかったので、即座に除外していた。

『え?主なら、お似合いだと思いますよ?』

 冬華とうかが何故拒むのか、純粋に疑問に思ったらしい金糸雀カナリアが首をかしげる。


 そんな金糸雀カナリアに、冬華とうかは顔を真っ赤にして吠えた。

「今似合っていたら、それはそれで問題でしょ!!私、もう二十歳なんだよ!?小学生や中学生の時ならいざ知らず・・・」

 と、フェードアウトしていく冬華とうか。改めて、その格好を最後にしたのが小学校の終わり頃だったと思い出して、あまりの恥ずかしさに、言葉が続かなくなっていた。

『ですが、神滅術を使うわけにも行きませんし・・・・うん、”冬華とうかちゃん!”愛と勇気があれば大丈夫にゃ!』

 突然、素っ頓狂なことを言い出す金糸雀カナリアに、冬華とうかは目を見開いた。

金糸雀カナリア!?ちょっ、嘘でしょ!!」

 パートナーに”スイッチ”が入ってしまった、と無駄と知りつつもその場から逃げようとした冬華とうか

『転身!!』

 いつもより高めの声で、金糸雀カナリアが掛け声を叫ぶ。

「いやぁーーーーー!!」

 涙目で悲鳴を上げる冬華とうかが光に包まれた。


 突然、爆煙が吹き飛び、光の玉が現れた。


「な、何!?」


 何事か、と双眼鏡を食い入る様に覗き込む王妃と大公妃。


 すると、光の玉にぼんやりと人の影が映り、様々なポーズをとりながら、その影が徐々に形を変えていった。

 何処かで見覚えがある光景に、全員が唖然とする中、光の玉が割れた。


「愛と勇気をむにぇに秘め!今ここに・・・マジカルガール・トーカちゃん!!爆誕にゃ!!」

 肩に使い魔のにゃんこ【カニャリン】を乗せ、きっちりと決めポーズをとったマジカルガール・トーカちゃん。

 だが、その顔は今にも火を吹きそうなほど真っ赤で、完全に涙目になっていた。


 現れた冬華とうかの格好は、かつて一世を風靡した某カード捕獲者主人公の少女が着ていたコスチュームからヒントを得て、玉露ぎょくろが”初めて”悪乗りして製作した代物で、髪形もコスチュームに合わせ、いつも下ろしている長い黒髪を、ツインテールに結い、大きなリボンが結ばれていた。

 手にしている杖も、いつもの金属製のものではなく、ピンクを主体にしたラブリーな物に変わっている。

 その姿は、どこからどう見ても、間違いなく魔法少女そのものだった。


 金糸雀カナリアも、使い魔なら猫がいい!と薫子に頼み込み、特別に作ってもらったネコ型義体に入り、久しぶりにトーカちゃんの使い魔カニャリンとなり、主とは正反対に嬉しさのあまり、ヒゲと尻尾がピンと立っていた。


「・・・・・・・・・・・・」

 決めポーズが終わり、冬華とうか改めマジカルガール・トーカちゃんは、両腕をダランと下げ、うつむいた。

「・・・どうしたにゃ?」

 ネコ型義体に乗り換えた影響で、言葉遣いが変わった金糸雀カナリア改め使い魔カニャリンが、声を掛けた。


 すると、トーカちゃんの口角が釣りあがった。

「ふふふ・・・・・・どうせ、最終的はこうせざるを得ないだろうな・・とは思っていたよ?けどさ、私にだって心の準備か欲しかったんだよ?」

 ブツブツと呟くように、しかもフフフと笑いを混ぜる冬華とうかに、金糸雀カナリアがビクッと身体を振るわせた。

「あ・・えーと、あにょ・・・冬華とうかさん?」

 呼び方が戻ってしまった金糸雀カナリアに、冬華とうかが呪いの人形張りにギギギと首を上げた。


「まぁ・・・・どうして、このコスチュームのサイズが今の私ピッタリなのかは、後で玉露ぎょくろちゃんをとっちめるとして、金糸雀カナリア・・・・とうぶん、そのにゃんこの姿だからね」

 あまりに恥ずかしい格好をさせられ、冬華とうかは意趣返しとばかりに、金糸雀カナリアをネコ型義体から出られないようにロックをかけた。


「えぇ?!そ、そんにゃ酷いですにゃ!!」

 確かに猫は好きだが、良かれと思って取った行動で、当分猫の姿で生活しなければならなくなった金糸雀カナリアは、泣きながら冬華とうかの頭を揺らした。

 

「うるさい!ええぃ!もう、こうなったら自棄よ!!」

 そういって、冬華とうかは再びトーカちゃんとなって艦隊の死角、直上へと急速移動する。

 真上に向かって攻撃できる砲座があるわけも無く、詰めている術士が押取り刀で甲板に転げ出てくる。

 

 だが、トーカちゃんのいる場所は、すでに精霊術の効果範囲外で、彼女はゆっくりと手にした杖を掲げた。

「世界に満ちる勇気の力、私に集まって!!」


 トーカちゃんの掲げた杖の先に、小さな光が集まりだす。


――ちなみに、集まっている光は世界中の勇気ではなく、自前の創造神の力を変換したものである。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何だ、アレは?」


 甲板にいた団員たちが上空に広がる光景を見上げ、情けなく口をあけていた。


 そこには、艦隊の大きさをはるかに超える、淡い光を放つ球体が浮かんでいる。

 

「んふふふ・・・今の魔法少女は、変身魔法を使ってご近所の平和を護るんじゃなくて、火力に物を言わせ圧倒的な暴力で世界の平和を護るんだよ?」

 誰かに問われたわけではないが、独り言のように呟くトーカちゃん。

「それは、違う気がするにゃ・・・・」

 物騒な物言いをするトーカちゃんに、元の姿に戻れないかも知れない衝撃を引きずりながら、弱々しくもツッコミを入れるカニャリン。

 そんなパートナーのツッコミなど何処吹く風と、トーカちゃんは満面の笑みを浮かべた。 

「メテオフォール・・・パニッシャー!!!」

 振り下ろされた杖の動きにワンテンポ遅れて、巨大な光の玉がゆっくりと艦隊へ落下していく。


 艦隊中から悲鳴が上がり、術士たちが精霊術で応戦しているが、悪あがきにも等しい行為だった。

 

 そしてこの日、王都ディアグラムのすぐ側に二つ目の”太陽”が生まれた。



「・・・・・・・・・・・・・・・・嘘でしょ?」

 炸裂する光と爆発音に、テラスの手すりを壁にし、身を隠していたマリアたち。

 光が収まり、恐る恐る顔を出したマリアが、眼下の光景を見て、唖然とした。

「アレだけの爆発で、戦艦・・どころか周りに被害が一切なし?」

 リリーの言うとおり、そこに広がる光景は・・・巨大な爆発があったはずが、何一つ変わっていなかった。

 攻撃が直撃したはずの艦隊に、目立った損傷は見受けられず、先ほどまでうるさいほど鳴り響いていた砲撃が、嘘のように止まっている。

 すぐ近くの王都も、ドラグレアとドラゴンたちの戦闘で付いたもの以外、新たな損傷は見られない。

 運河も、穏やかに流れている。


「魔法少女の攻撃ですからねぇ・・・・基本的に無害ですよ?」


 すると、魔法少女姿の冬華とうかがテラスに降り立ち、瞬間的にいつもの戦闘服へと戻った。

  

 だが、金糸雀カナリアは元の姿に戻る事は無く、猫のままだったことに、がっくりと肩を落としていた。


「トウカ・・・・さっきのアレは、何だ?」

 背伸びをする冬華とうかに、ドラグレアが説明を求める。

「何って、魔法少女ですけど?」


 苦難を乗り越え、何処か清清しさのある冬華とうかの言葉に、カレイドたち四人の顔が渋いものに変わる。

 冬華とうかが使った魔法少女の力は、どんなに強力な攻撃を使っても、敵は黒焦げのアフロ頭になって気絶するだけで、命に別条なはい。

 しかも、建物などの人工物や自然などの周辺環境にも一切影響が出ないエコ仕様。 


 魔法少女の攻撃は、そうあるべきと、玉露ぎょくろが随分前に開発した能力である。 


「「「「・・・・・・・・・・・」」」」


 実のところ、昔ルーン王国に魔法少女を名乗る異世界人の少女がいた。

 その少女は、変身魔法と言う名の特殊能力で、王都で起こった事件に首を突っ込み、見事なまでに引っ掻き回しては、騎士団の厄介なると言う、ある意味有名人として世間を賑わせた。


 そんな少女も、今は魔法少女を引退し、片田舎で子育て中とかどうとか・・・・・・・。


「あー・・・・・ドラ君が言っていた意味が、何となく分かっちゃった・・・・」

 そんな懐かしい話を思い出しつつも、全く別物だった冬華とうかの魔法少女ッぷりにリリーが遠い目をする。


「ねぇ、トーカさん!さっきの衣装、ギョクロさんのデザイン?!もうちょっと見せてもらえないかしらぁ!」

 逆にマリアは、冬華とうかの魔法少女コスが琴線に触れたらしく、目を輝かせて冬華とうかの手を握っている。、


「マリア、落ち着くんだ!それで、トーカ君。戦艦に乗っていた者たちは?」

 動けないながらも妻を嗜め、カレイドが説明を求めた。

「全員髪の毛チリチリになって、丸焦げになってるでしょうけど、生きてますよ。私が殺しちゃうより、国王様がキチンと処罰した方が他の貴族たちへの抑止にも繋がるでしょうから」


 どうやったら、艦隊にいた人間だけをそんな風に出来るのか、そちらの方に意識が行ってしまい、冬華とうかの思惑を聞き逃すカレイドたち。

「では、次に行きましょうか!」

 そんなカレイドたちを尻目に、冬華とうかが腕をまくる仕草をしてテラスの欄干に足をかけた。

 先ほどまで冬華とうかの魔法少女コスに興奮していたが、王妃の威厳を取り戻したマリアが「あっ」と声を上げた。

「!?それなら、王都に迫っている魔物の群れを如何にかしないと!多分、術士隊が侵攻を抑えているでしょうけど・・・」


 王都内だけでなく、外には数万の竜骨兵が王都を目指している。


 そんな数を相手に出来るのは、アルバート騎士団の術士隊ぐらいしか考えられず、可愛がっていた元部下たちが、今も戦っているのでは、とマリアは戦場の方を見つめた。 

「あぁ、それならここへ来る前に、九割方殲滅して、残りの始末をナタリアさんに任せてきましたよ?」

「へ?」

 シリアスに、元部下たちを想っていたマリアが、冬華とうかの言葉を聞いて、間の抜けた声を上げる。


「いえ、実はエメちゃんがベースで一人いるのは心細いだろうし可哀想だと思って、フォルトさんの奥さん・・・・シスさんの孤児院に預けてきたんです。あそこなら歳の近い子が一杯いますしね。で、そこから空へ上がった時に、術士隊の皆さんと隊長のナタリアさんを見つけて事情を聞き、手早く魔物の群れを蹴散らして、残った敵の掃討をお任せしてきましたが・・・・気が付きませんでした?」

 冬華とうかの説明を聞き、マリアが「それなら、いいの・・・さすがね」と安心して力が抜けたのか、その場にへたり込んでしまった。

 

 すると、謁見の間においてある大型通信球が、チカチカと点滅し、慌てた様子で聞きなれた少女の声が響き渡った。



 次回更新は、6月29日(日)PM11:00過ぎを予定しています。


 変更の場合は、活動報告にてご連絡します。

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