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創造神たちの傭兵  作者: 仁 尚
騒乱 ルーン王国 編 
101/180

(11) 愚かな騎士団

「すみません。遅くなりました」

『申し訳ありません』


 空から現れた冬華とうか金糸雀カナリアの笑顔を見て、カレイドたちは、胸を撫で下ろした。


 だが、リリーは違っていた。


「っ・・・・・」


 冬華とうかたちのことを知らないリリーは、突然現れた侵入者とうかたちに向け、手にしていたレイピアを構え、警戒心を露にした。


 リリーは、生まれつき精霊との契約に向かない体質だったために、成人する時に精霊との契約を行わなかった。


 そのため、霊力感知に難があるのだが、そんな彼女でも、目の前の少女はあまりにも異質に見えた。


 剣士として己を鍛え続け、長年の努力と経験の積み重ねによって、力を持った者に対して、ある種の気配を感じるようになったリリーではあるが、冬華とうかからその気配が”一切”感じることが出来ないでいた。


 非力な赤ん坊でさえ非常に弱々しくではあるが、感じることの出来る”気配”が冬華とうかから全く伝わってこない。


 そんな在り得ない存在を前にし、リリーの頬に汗が流れる。


「姐さん、そいつらは味方だよ」


 だが、そんなリリーの肩を、ドラグレアが掴んだ。


「え?」

「義姉上も噂くらいは聞いているでしょう?数ヶ月前に我が国にやってきた異世界人たちのことを」

 聖剣の力を維持する為、身動きの取れない義弟の言葉を聞き、リリーはここ最近多くの人々の話題に上っていた噂を思い出した。


「もしかして、木漏れ日の森の管理者ポンタさんとその家族を救い、先の王都で起きたヴィルヘルミナ様誘拐事件やアリエル様襲撃事件、さらにアイディール学園爆破未遂事件を解決したって言う・・・あの?」


 リリーの問いに、マリアが大きく肯く。

「その通りです、リリー様。そして、友好国であるアルターレ護国のクーデターを解決したのも彼女たちですよ」

「!?」

 大公代理として、独自の情報網を持つリリーは、殆ど伝えられなかったアルターレ護国の件で、ルーン王国関係者が解決に尽力したところまでは掴んでいる。

 結局、情報統制の為、誰かまでは分からなかったリリーは、その時公務でアルターレ護国を訪れていた優秀な姪と騎士をしている自慢の娘、そして同行していた従者たちが、その関係者なのだろうと結論付けていた。


 話題の人物たちとの思わぬ邂逅に、リリーは構えていたレイピアを下げる。

 リリーの警戒心が薄れたのを確認し、ドラグレアは彼女の肩から手を離した。

「色々聞かないといけないことがあるが・・・・・・お前らロードに用事があるといって昨日出て行ったはずだよな?それに、ソラトとギョクロはどうした?」

「ロードには、思いのほか早く着いて、用事は昨日の内に済ませました。昊斗そらと君たちなら、今頃各地でおイタをしているハドリー騎士団の戦艦に、お灸を据えに行ってますよ」

 冬華とうかの言葉に、ルーン王国の中心人物である四人の目が、点になった。

「は?」


 予想通りの反応に、冬華とうかは今朝からの経緯を掻い摘んで説明し始めた。

 

 ロードでの用事を済ませ、王都への定期船に乗り込んだ昊斗そらとたち一向。


 のんびりと船旅を満喫していると、突如大型の水棲魔獣を引き連れたハドリー騎士団の戦艦が出現。周りに一般の客船がいるのも関わらず、砲撃を行う戦艦に抗議に行った昊斗そらと玉露ぎょくろだったが、カレイドの名前を出した瞬間、攻撃を受け、やむなく戦艦に反撃し撃沈した。


 戦艦の艦長以下主だった役付きの乗組員に、話し合いと言う名の尋問を行い、昊斗そらとたちはクーデターの件を知ったのだった。


 彼らと同じように、王都から他の騎士団の視線を逸らせる為、陽動を行っている戦艦がいることを知った昊斗そらと玉露ぎょくろは、戦艦を撃退しに各地を飛び回っており、冬華とうかたちは艦長たちから聞いた計画がごく一部だと考え、一足先に王都へ戻ってきていた。


「そこまで、愚かな集まりだったのか・・・・・・」

 説明を聞き、カレイドは搾り出すように唸った。

 聖剣を握る手がプルプルと震えており、彼の怒りが如何程の物か、想像に難くない。


 無理も無い。

 クーデターに加担した者たちが、ハドリー騎士団の上層部とその家臣たちのみで、良識ある団員たちは、逆に上層部を止めようとしていたそうだ。そんな団員たちを寝ている隙に拘束してまで、暴挙に出た理由が「由緒ある歴史と血筋を持つ貴族である自分たちが、なぜ栄光あるアルバート騎士団に入れず、見劣りするハドリー騎士団に所属しなければならないのか?自分たちは、地方ではなく、王都に住むのが相応しい。しかも、最近では異世界人が、王都で国王の威光を笠にきて幅を利かせている。こうなったのも全て、家柄を軽んじる無能な国王の責任だ!」という身勝手極まりない理由だった。


「開いた口が塞がらないというのは、こういう事の言うのでしょうね」

 大公妃、そして今は大公代理として広大な領地を管理するリリーも、あまりの馬鹿らしさに眩暈を覚えた。

 国王から与えられた貴族の職務に、上下など無いのだ。

 異世界人たちにしても、相応の働きをして対価を得ているのだ。そんな彼らを非難すること自体、お門違いなのである。

 そのことを理解せず、あまつ国王に対して不敬な発言をするなど、それこそ由緒ある貴族の出身ならあってはならないことなのだ。


 その場にいる全員が、怒り心頭になったのを確認した冬華とうかが、笑みを浮かべる。

「そこで相談ですが、あそこにいる艦隊は、私たちに任せてくださいませんか?」

「・・・・・・」

 だが、カレイドは口をつぐんでしまった。

「カレイド、この際だ。こいつらに全部やってもらおう」

 ドラグレアが面倒そうに声を上げると、カレイドが目を見開いた。

「何を言っているんだ、ドラグ!今回の件は、この国の問題なのだ!それに・・・」


 今までは、依頼した仕事の成り行き上、昊斗そらとたちが解決してくれたが、元々彼らには最上の神より承った、グラン・バースの行く末を左右する大事な役目がある。今回こそ彼らに手を借りるわけには行かない、とカレイドはその考えを頑なに貫こうとした。


 だが、冬華とうかも一歩も引く事は無かった。

「ご心配なく、国王様。私たちは偶然とは言え、事態に巻き込まれてしまいました。しかも反乱勢力である騎士団の旗艦艦隊の一部を殲滅させた以上、当事者なんですよ。それに、私たちとしては、もうこの国の一員だと思っているんです。ほら、無関係とは言えませんよね♪」

 笑顔に、殺気を織り交ぜ凄む冬華とうか

 カレイドたちは何度か経験があるので、何とか押さえ込めたが、リリーは小さく悲鳴を上げる。


 リリーの背中をポンポンと叩いて、ドラグレアが笑みを浮かべた。

「いいじゃないか。こいつらから手伝うって言ってくれてるんだ。それに、間違いなくこの事態を最高の形で解決してくれるはずだぞ?」

 ドラグレアの言葉に答える様に、冬華とうかがゆっくり肯く。

「ご期待には応えますよ。ね、金糸雀カナリア?」

『もちろんです、我が主!』

 頑張ります!と意気込む金糸雀カナリア

 そんな二人を見て、カレイドは観念したように、ため息をついた。


「・・・・・・・・本当に、いいのかな?」

「お気になさらず。それじゃ、まずは目の前のお馬鹿さんたちにキツいお灸を据えないと」


 そう言って、冬華とうかは重力を無視するように、空へと舞い上がる。

 

「トーカ君!すまないが、旗艦艦隊の戦艦は出来るだけ沈めないでくれないか!!あれは、北海防衛の要でもあるが、我が国を支える重要な戦力の一つでもあるんだ!もし失えば、我が国の戦力は瓦解し、各国との軍事的均衡が崩壊しかねない!そして、建造には国民の貴重な血税が使われている。あんな馬鹿者どもと一緒に沈めるには、あまりに偲びない!!」

 冬華とうかの説明で、昊斗そらとが戦艦を沈めたという話を聞いたカレイドは、国の主力戦力である戦艦を馬鹿者どものために沈めるわけには行かない、と顔を動かせないため、声を嗄らさんばかりの大声を上げた。


 このような状況で、何を言っているのだ、と言われかれないが、カレイドはこの騒乱による国内外の影響を最小限に留め様としているのだ。


「なるほど・・・・・分かりました!お任せを!!」 

 そのことを理解し大きく肯いて見せ、冬華とうかは破れるはずの無い結界に向かって攻撃を続ける艦隊へと、進路を取った。

 

「さて、有無を言わさず一撃加えてもいいけど・・・・そうだ、金糸雀カナリア。アルバート騎士団の本部に通信を繋いでくれる?」

 何かを思いついた冬華とうかが指示を出す。

『はい、畏まりました。我が主』

 指示を受けた金糸雀カナリアが、一瞬目を細め、「繋がりました」と冬華とうかに報告した。

「騎士団本部きこえますか?傭兵の棗冬華なつめとうかです」

『ナツメ殿ですか?!副長のアルフレットです!』

 通信に出たのがアルフレットだったことに、丁度よかったと、冬華とうかは笑顔になった。

「アルフレットさん、早速で悪いのですが、今から聞こえる”会話”を、漏らさず録音していただけますか?」

『え?・・・わ、分かりました』

 冬華とうかの要請に、戸惑いを含む声を上げるアルフレットだったが、彼女の実力を先の同時多発テロで目の当たりにしていたせいか、すぐに了承する。

「お願いしますね。金糸雀カナリア、旗艦艦隊に強制通信」

『はい!指向性レーザー通信、全周波数帯で準備・・・・照準ハドリー騎士団旗艦艦隊!』

 強制通信用のシステムは、昊斗そらとが使ったのと同じ物だが、前回と違うのは対象が複数である点だ。


 昊斗そらとは、アクセス用のピンを直接戦艦に打ち込んだが、冬華とうかは強力な通信波を、さらに収束させて、全艦に照射しようとしている。

「いけぇ!!」

 王都を砲撃から護る為に張った結界から出た瞬間、冬華とうかの杖の先に光が生まれ、艦隊に向かって幾筋の光が奔った。


 光が、戦艦の装甲を撫でていった瞬間、冬華とうかの持つ創神器ディバイスから、混乱する多くの声が聞こえ始めた。

『な、何だ?!先ほどの光は!?』

『各艦、被害状況を報告!!』

 別口で、アルフレットから録音を開始したという言葉を受け、冬華とうかが静かに声を上げた。


「こちらは、ルーン王国国王カレイド・ノグ・ルーン陛下と契約を結んでいる、傭兵の棗冬華なつめとうかです。ハドリー騎士団旗艦艦隊総司令の方、聞こえますか?あなた方の行動に関して、カレイド陛下が説明を求めてい・・・」


 だが次の瞬間、通信用レーザーに驚き、一時止まっていた砲撃が冬華とうか目掛けて再開された。


 一瞬の内に爆発の中へと消える冬華とうかの姿。


「ちょっと、ドラ君!いくらなんでも拙いわよ、あの子!!」

 テラスからその光景をドラグレアが持っていた双眼鏡で見ていたリリーから、悲鳴が上がる。

 同じく双眼鏡で見ていたマリアも、その光景に絶句する。


 だが、詰め寄られたドラグレアは、欠伸を一つし、背伸びをした。

「心配ないって、姐さん。そもそも実力が無いのなら、オレらが行かせるわけ無いだろう?いいから黙って見てろって」

 そう言って、ドラグレアはいつもの亜空間から小さな通信球を取り出し、スイッチを入れた。


『全弾着弾を確認!!』

『馬鹿め。英雄の息子であるわしを差し置き、、実力があるというだけで、家柄の無い若造を貴族に婿入りさせてまで、栄光あるアルバート騎士団の団長に据えるような無能な国王の手先などに、話す舌など持たぬわ。この愚か者め!!』


 聞こえてきた声は、億万回八つ裂きにしても許すことが出来ない怒りを、カレイドに抱かせた張本人であるハドリー騎士団の団長のものだった。


 まさか、不敬罪確定の台詞を、国王本人に聞かれているとは思ってもいないだろうなと、ドラグレアは必死に笑いを抑えていた。


「どっちが愚か者だよ・・・・・・言質は取った。これで、心置きなく家ごと潰せるな。カレイド」

「あぁ・・・・・彼の英雄殿には悪いが、バカ息子殿の言動は目に余りすぎた。これも自身の不始末と諦めてもらおう」


 現ハドリー騎士団の団長の父は、前団長にして、”海戦戦術の父”と言われる知将で知られた。

 自らが考案した戦術を用いて艦隊を指揮し、他の大陸からの侵略を幾度も跳ね除けた英雄でもあった。


 だが、そんな英雄も一人の親バカでしかなった。


 一人息子を、自身の権力を用いて騎士団に入団させ、実力の伴わないにも関わらず要職に付かせた。


 さらには、息子可愛さに団長を引退する際に、自らの功績を盾に先王ジェラードに懇願し、原則として世襲を禁止していた団長の後任人事に、息子を押すという暴挙に出たのだ。


 幾度と国を救った英雄の進言に、ジェラードが半ば折れる形で、彼の息子を団長に据えたのだった。


 その後のハドリー騎士団は、言わずもがな。騎士団内の人事は団長に一任されている為、英雄の息子と言う力を使って、擦り寄ってくる者を出世させ、反発する者には酷い時は、部下を使って凄惨ないじめを行っていた。


 再三の監査でも、ボロを出さなかった団長だったが、今回ばかりは言い逃れ出来ない。


「あの子・・・・これを狙って?」

 わざわざ、騎士団本部に通信を繋ぎ録音させ、自分から標的になるのも厭わず名乗ったのが、そのような台詞を相手から引き出す為だと分かり、リリーは戦慄する。


 そんなリリーに、ドラグレアが不敵な笑みを浮かべた。

「姐さん・・・・オレはルーン王国最強の異世界人なんて言われているが、断言するぜ。あいつらは、グラン・バース最凶の異世界人だよ」


 


 本日は、連続更新!

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