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創造神たちの傭兵  作者: 仁 尚
木漏れ日の森の出会い 編
10/180

(8) 復活の傭兵たち(後編)

 フェリシアは、一体なにが起きたのか必死に理解しようとした。


 突然の攻撃に、致命傷を受けた二人。大量に出血する自分の血で汚れた昊斗そらと冬華とうかの姿を見たフェリシア自身、中途半端な回復の精霊術をかければ、彼らの苦しみを長引かせるのでは、と躊躇してしまった。


 そんな昊斗そらとたちが、何事もなかったように窮地のフェリシアを助け、彼女を守るように敵の前へ歩み出た。


 二人に声をかけようとするが、フェリシアは状況がうまく呑みこめず、声が詰まって言葉が出なかった。だが、歩いて行く二人の背中を見て、フェリシアは今までに感じたことのない安心感と頼もしさを覚えた。


 逆に、相対していたルシフェード・レイ・鞍馬くらま魂の名(ソウルネーム)を持つ少年は近付いてくる二人に対して、言い知れぬ不気味さを感じた。


 この一週間、成り行きで行動を共にし間近で見ていた暗殺者(アサシン)としか名乗らない男の能力に、鞍馬くらまは大きな信頼を寄せていた。 

 幾度も助けられたことも大きいが、何度も暗殺者アサシンの”仕事”を間近で見学し、彼がターゲットを仕損じる所を一度たりとも見たことはなかったからだ。

 初撃必殺。

 これが、暗殺者(アサシン)の語る信条であり、すべてだった。


 それが、脆くも崩れ去る。間違いなく死にかけていた人間が、どんな手を使えば完全回復できるのか、残念ながら彼にそんな知識はない。


 だが、目の前に立ちはだかる同じ異世界人が、自分とは違う異質な存在なのは理解できた。


 その時、広場に殺気が満ちる。


暗殺者アサシン!」


 誰から発せられたモノか、鞍馬くらまによって発覚する。


「・・・・・おいおい、暗殺者を名乗るなら、もう少し殺気を隠せよ」

 昊斗そらとが呆れながら、額をおさえる。

 その声が聞こえたのか、殺気が爆発し昊斗たちに襲いかかる。


「!」

「・・・・」

 

 金属で何かを弾く音が短く二度響き、飛んできたモノを素手で掴む音が聞こえる。

「危ないな・・・私たちだけじゃなくて、フェリちゃんまで狙うなんて」

 攻撃が飛んできた方を睨みながら、冬華とうかはクルクルと自分の身長より長い杖を器用に回し、柄尻を地面に突き立てた。

「意外に沸点の低いやつ・・・・・ほんとに殺し屋なんてやってたのか?」


 冬華とうかの足元に”矢”が二本刺さり、昊斗そらとの右手には”矢”が握られていた。

 飛んできた”矢”を、冬華とうかは手にしていた金属製の杖でフェリシアに飛んできた”矢”も含めて打ち落とし、昊斗そらとは無造作に掴んだのだった。


 離れた場所から動揺が伝わる。


「返すぜ」

 掴んだ”矢”の先端を動揺を発した方へ向け、手首のスナップだけで投げ返す。

 投げた先に生えていた木々が次々となぎ倒されていく。


『・・・・・逃げられましたね』

 腕輪が点滅し、先ほどの少女の声が、”残念”というニュアンスを含めながら言ってくる。

「ま、それならそれで構わないさ」

 玉露ぎょくろの言うとおり、打ち取った手ごたえを昊斗そらとは感じなかった。しかし、暗殺者アサシンに近づく別の気配を感じ、昊斗そらとは、あっちのことは”彼”に任せることにした。


「さて、どうする?君の仲間は逃げたみたいだが、まだ続けるか?」


 鞍馬くらまの方へ視線を移し、降伏を呼びかける昊斗そらと。だが、鞍馬くらまはポンタと成体となっていたポンタの子供たちを操り、自分の前へ配置する。


「訳わかんないし・・・・これって、ゲームだろ?こいつらだって、ただのゲーム内のモンスターだろ!なのに、なんで僕は悪者みたいになってるんだよ?!」

 再び年相応の口調へ戻った鞍馬くらまの言葉に、昊斗そらと冬華とうかは、あぁ・・・そういうことか、と納得する。 


 目の前の少年は、今の状況がゲームなんだ、と信じ込んでいる。

 たぶん、体感型ゲームを始める瞬間に召喚されてしまったのだろう、と二人は考えた。その場合、多少の違和感を感じながらも、”リアル”なゲームだと信じてしまう人間が居るのを、二人は”何度も”見てきた。


「悪いが、ここは現実だ。君は間違いなく、異世界にやってきたのさ」

 昊斗そらとの言葉に、鞍馬くらまは拒絶するかのように何度も首を横に振った。

「うそだ!そんなこと、あるはずない!馬鹿げてる!!」

 声を荒げ、二人を睨む鞍馬くらまを、昊斗そらと冬華とうかはどこか憐れむように見つめる。

「嘘じゃないよ。それにね・・・・君だって、おかしいなって思ったこと、何度もあったはずだよ?心当たりない?」

 冬華とうかは、まるで幼子を諭すかように声をかける。


 だが、鞍馬くらまは頭に血が上ってしまったらしく、二人の声に聞く耳を持たなかった。

「うるさい!僕は英雄(ヒーロー)になるんだ・・・現実世界じゃ弱虫な僕でも、「ゲームの中なら誰だって英雄《ヒ-ロー》になれるんだよ」って彼女は言ってくれたんだ!誰にも邪魔はさせない!行け!!」


 合図とともに、一斉に襲いかかるオオキレグマの大群。

冬華とうか、ここは俺に任せてくれ」

「うん・・・よろしくね」


 冬華とうかが一歩引き、フェリシアの横に並ぶ。

 瞬間、昊斗そらとの姿が消え、次の瞬間には一番後ろに控えたポンタの目の前に現れる。

 迫っていた三メートル近い巨体のポンタの子供たちが、無言で倒れていく。

「な!」

「え・・・」

  昊斗そらとが何かをしたことは分かったが、フェリシアも鞍馬くらまもどんな方法を使ったかは分からなかった。


「おし!身体強化は上々だな・・はっ!」

 ポンタの懐に入り込み腹部へ掌打を繰り出すが、しまったという顔をする。

「やべ・・・手加減しすぎた」


 知っている相手であるのと久々で”勘”が鈍っている為か、下手な手加減をしてしまい、ポンタにあまりダメージを与えられなかった。

 巨木のような腕を振り上げ、昊斗そらとへ叩き付けるポンタ。

 その威力で、地面が抉れ土煙があがった。


昊斗そらとくーん!補助術式使おうか~?」

 そんな光景を見ながら、呑気に声をかける冬華とうか

「ト、トーカさん!何を呑気に言っているんですか!!」

 まったく焦りを見せない冬華とうかに、フェリシアが一段と焦っている。


「いやいやいや!そんなことしたら、一層手加減が難しいし!」

 土煙が晴れ、そこにはポンタの攻撃を避け、昊斗そらとが涼しい顔で立っていた。


『マスター。有効打撃ポイントを割り出しました。そこを狙ってください』

 相棒・玉露ぎょくろからの報告に、目を細める昊斗そらと

「それ、金糸雀カナリアが調べた結果を送ってもらったんだろ?」

『は?当然じゃないですか。彼女の方が精度が高いですし』

 隠しもせず答える相棒に、相変わらずだなと安心する。


「玉露!術式解凍!!」

『了解。スタン・ブロウ、セット。』

 ”長年”培ったきた阿吽の呼吸で、玉露ぎょくろ昊斗そらとが使いたい力を瞬時に選択する。


 昊斗そらとは、玉露ぎょくろの示すポイントに、もう一度掌打を繰り出す。

「ごめん、ポンタさん。ちょっと我慢してくれよ・・・招雷破しょうらいは!!」

 拳銃の発砲音のような音が鳴り響き、ポンタの身体を稲妻が突き抜けた。”彼女”は、そのまま前へ倒れこみ、昊斗そらとはその巨体を軽々と支え、ゆっくりと横たわらせる。


「これで、手は無くなったぞ」

 先ほどより声のトーンを落として、昊斗そらと鞍馬くらまを睨みつけた。


「く、くそおおおおおお!」


 声を上げ、ポケットに手を入れる鞍馬くらまは、三つ目の魔笛を取り出した。


「この手だけは、本当に使いたくなかった。けど・・・・怪物相手にはちょうどいい!!」

 彼の目には、昊斗そらとが人間ではなく怪物に見えていた。

 

「なんだ、まだやるのか?」

 さすがに、子供の相手が面倒になってきた昊斗そらとに、鞍馬くらまが不敵な笑みを浮かべる。


「その余裕、いつまで持つかな!”三連魔笛”は、まだ僕でも制御できていない。使えば、周囲二キロの人間以外の生き物が暴走状態になる・・・あんたに、それが停められるか!?」


 三つの魔笛を口に咥え、”三連魔笛”を鳴らす鞍馬くらま


 フェリシアが、暴走する生き物たちを想像し、隣に立つ冬華とうかの腕にしがみつく。そんな彼女に、冬華とうかは「大丈夫だから」と手を握り、優しく語りかけ落ち付かせた。


「・・・・・な、なんでだ?」


 吹いていた魔笛を口からこぼす鞍馬くらま。理由は、まったく手応えがないからだ。強い魔獣はそこに倒れているポンタ以外存在しないが、先ほどまで周囲二キロには大型の野生動物を含む多くの生き物の反応が感じられた。

 しかし、今はまるですべてが眠っているような、そんな感じだった。

『術式発動。現在、有効範囲内に人間以外の動体反応ありません』

 冬華とうかの相棒・金糸雀カナリアの言葉を確認し、冬華とうかが説明を始める。


「音を相殺してもよかったんだけど、力を使うのは久々だし、さっきの昊斗そらと君みたいに失敗でもして、パニックになったら大変だったから、君の能力の有効範囲二キロの五倍、周囲十キロの人間以外の生き物を全部眠らせたよ」


 その言葉に、鞍馬くらまよりフェリシアが驚いていた。

 精霊術でも、対象を眠らせる術が存在するが、どんなに優秀な術者でも効果範囲内の対象全てを眠らせることが出来るのは精々百メートル程度が限界だ。それを、十キロも展開できる冬華とうかや、ポンタを簡単に気絶させた昊斗そらとは、本当は一体何者なのか。フェリシアは、ますます混乱していった。


「・・・これで、万策尽きたろ?」

 さらに声のトーンが低くなった昊斗そらとが、ゆっくりと鞍馬くらまに向かって歩き出した。


「く、来るな」

 恐怖に顔をひきつらせ、腰を抜かす鞍馬くらま


 だが、昊斗そらとは指を鳴らしながら、一歩一歩近づいていく。

「何ビビってるんだ?これは、ゲームなんだよな?なら、ここで死んでも、セーブポイントからやり直せる、そうだろ?」


 昊斗そらとが右の拳を掲げると、誰でも分かるほどの高密に圧縮された力の固まりが形成され、それを昊斗そらとは無造作に遠くに見える山へ放り投げた。


 大気を震わせ、飛んで行った力の固まりが山の頂上で炸裂する。

 力が解放され、頂上をごっそりと抉り取ってしまう。なのに、爆発音や衝撃波が一切襲ってこなかった。


「君は、ここでゲームオーバー。頑張ってリスタートしてくれよ。じゃあな」

 まるで凶悪な魔王にしかみえない笑顔を浮かべ、全てを破壊する”兵器”となった拳を振り上げ、そのまま鞍馬くらま少年に向かって振り落した。


「!!!!!!ごめんなさああああい!!!」


「なんてな」

 拳を空振りさせ、茶目っ気のある言い方をする昊斗そらと

 泣きながら大声で謝る少年の目に、魔王のような顔していた男とは別人に思えるほど、昊斗そらとは笑顔を見せている。


 冬華とうかも、どこから出したのか「ドッキリ大成功!」と書かれたプラカードが握られ、鞍馬くらまへ見せていた。


 何が何だか分からなくなり、鞍馬くらまの精神はそこで限界を迎え、気絶してしまった。


「・・・・あの、これは?」 

 フェリシアは目の前の惨劇に目を逸らしていたが、様子がおかしいと視線を元に戻したが、状況が呑み込めないでいた。  


「全く・・・派手にやったものだ」


 木々の陰から、聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「もしかして・・・・ドラグレア様!?」

 いるはずのない人物の声に、フェリシアは驚きを隠せなかった。

 現れたドラグレアは、遠くに見える山頂の消えた山や、広場中に倒れるポンタとその家族を見て、ため息をついた。


「言っておきますが、誰も殺していませんからね?犯人の少年はそこで気絶してますし」

 昊斗そらとの視線の先に、悪夢にうなされているかのように気絶した少年が倒れている。

「それは、助かった。こっちは情報を聞き出そうにも手元が狂ってもう一人の犯人を殺してしまったからな・・・・・誰かさんがデタラメな術を発動させたせいで、びっくりしたぜ」


 そんなことを言いながら、ドラグレアは冬華とうかの方を見たが、当の本人は「何か問題がありましたか?」と言わんばかりの笑顔を向ける。


「・・・・とりあえず、後のことは騎士団の連中に任せるとして・・・・オレは、お前たち二人に聞かなきゃいけないことがある」 


 一呼吸開けて、ドラグレアが口を開く。


「お前たちは、何者だ?」




8/19 一部内容を修正。

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