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転生魔王NOT悪役令嬢  作者: 豆狸


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50・祝賀会<魔王四天王編>

 黒幕ハイエルフのオートムヌは捕縛され、その恐るべき計画(大陸すべての破壊)(つい)えた。

 今宵はジュルネ王国の王宮で祝賀会が開かれている。

 これまでなかった国交樹立が宣言されたニュイ魔王国からは、魔王と四天王が招かれていた。


 国交が樹立されたといっても入国審査のようなものはなく、これまで通り町や都市に入るときは入場料を支払う形式だ。

 魔王は国交樹立を喜んでいるが、脳筋魔人は状況を理解していない。

 脳筋魔人の中で一番賢いと自負している水の四天王ヴィペールも、なにがどう変わったのか理解していなかった。もっとも魔王ソワレが喜んでいるのは嬉しい。


 霧状にした魔力で鱗を隠したヴィペールは、どこに出しても恥ずかしくない美青年だ。

 祝賀会に出席しているジュルネ王国の貴族達の熱視線を浴びている。

 とはいえ男女ともに恋慕の視線を浴びせてくるのはいつものことなので、ヴィペールはアイスティーのグラスを傾けながら、祝賀会が開催されている大広間の片隅で魔王のことを考えている。王国側は酒杯を渡してきたのだけれど、魔王が止めてアイスティーに交換してくれたのだ。


(魔王様……好き)


 ヴィペールの魔王への愛は高まる一方だ。

 今は離れているものの、魔王が従兄で王太子のイヴェールと話しているのは茶の木の苗を手に入れるためだと聞いている。

 オートムヌを捜索していた魔王を尾行するときに気づかれぬよう魔力を潜めていたことがきっかけで完成した霧による変装魔法は、ジュルネ王国をお忍びで訪れる魔王と同伴する際に役立つことだろう。


 ヴィペールはもう従魔で盗聴盗み見などしない。

 いつだって魔王に随伴する。

 それを魔王が望むかどうかは、またべつの問題なのだけど。


 コレカラハ、モウハナレナイ――


★ ★ ★ ★ ★


 炎の四天王バルもジュルネ王国王宮大広間の片隅にいた。

 手にはたくさんの肉が載った皿がある。

 魔王ソワレが渡してくれたのだ。今夜はあまり肉が食べたくないのだという。嘘だな、とバルは思っている。


(これは生肉じゃない。マチネ叔母上と同じ『料理魔法』でちゃんと味付けされている。焼き加減も……俺には負けるが、まあまあだ)


 バルにはわかった。わかったつもりになっていた。

 ソワレは愛する自分に少しでも美味しいものを食べて欲しいのだ。

 さっきから父方の従兄の自分を放置して、母方の従兄のイヴェールとやらとばかり話しているのも、自分が好き過ぎて恥ずかしいから側にいられないのだ。


(わかるぜ。俺もソワレと一緒だとドキドキしちまうからな)


 愛しい魔王が渡してくれた肉は美味しかった。


★ ★ ★ ★ ★


 風の四天王コルボーは、なぜか先々代の聖女専属聖騎士で辺境伯のランスと会話していた。

 本来なら王宮内での帯剣は禁止されている。

 しかしコルボーは魔王ソワレにプレゼントされた双剣を手離すことなどできなかった。幸い魔王の口添えによって許され、今も双剣はコルボーとともにある。そして、この双剣が魔王の魔鍛冶によるものだと気づいたランスに話しかけられているのだった。


(はがね)の双剣に【風属性魔力増幅(大)】と【追加ダメージ:劇毒】というふたつの特性をつけるとは、ドワーフにも(まさ)る魔鍛冶技術ですね。さすがこの哀れな下僕の推しソワレたんです」

「ソワレ……たん?」

「ふふふ、わかりますよ。あなたもソワレたんを推しているのですね。私は同担拒否族ではありません。部下の四天王からしか見えない特別なソワレたんのお姿をお話しください」

「同担拒否族?」


 コルボーが首を傾げたのと、大柄な赤毛の青年と金茶の髪の男が現れるのは同時だった。

 赤毛の青年は先ほど紹介されていた。

 このジュルネ王国を守る軍を率いるマルス将軍だ。


「俺達にはまだ尋問の任務があるのだから戻るぞ」

「ったく、将軍のマルスはともかく、ランスは弟のラファルや先代に辺境伯としての挨拶の代行を任せても良かっただろうが」


 金茶の髪の男はアッシュと名乗った。

 武器屋の店主なのだという。

 彼はコルボーの双剣に目を止めた。


「お。この前うちで仕入れてた目玉商品の(はがね)の双剣じゃねぇか。特性ふたつもつけてもらって喜んでらぁ。大した魔鍛冶技術だ。あの嬢ちゃん、よっぽどあんたが大切なんだな」


 コルボーの胸が弾む。アッシュとマルスに捕獲されたランスが引きずられていくのを眺めながら、彼は思った。


(同担拒否族っつうのがなんのことかはわかんねぇけど、魔王様との思い出は全部(ぜぇんぶ)オラだけの宝物だべ。……だれにも渡さねぇ)


★ ★ ★ ★ ★


 大地の四天王リオンはジュルネ王国貴族と酒を飲んでいた。

 彼はそれなりに社交もできる。

 実家の肉食系猛禽類女子(お肉大好き女性魔人)な母や姉妹と対峙することに比べたら、人間の貴族など怖れるものではない。殴れば()れるのだから。それは舎弟として先代魔王から受け継いだもので、先代の娘である魔王ソワレにも受け継がれている精神だ。


「ええ、そうです。お嬢……我が魔王は幼いころから頭角を現していらして……」


 敬語も使える。

 母や姉妹にタメ口なんか叩いたら一瞬で砂にされるからだ。

 社交に(いそ)しみながら、リオンは王太子イヴェールと楽しげに話しているソワレを盗み見る。


 マタン山脈での戦いで、ソワレが強くなったことには気づいている。

 いや、本当は竜に変化できるようになった時点で、炎属性の彼女が大地属性の自分よりも強いとわかっていた。

 それでも――それでもリオンにとって魔王ソワレは、いつまでも守るべき大切な可愛いお嬢だ。


「ははは。お気持ちは嬉しいのですが、我々魔人の寿命は長い。我が魔王には……お嬢にはまだまだ婿など必要ありませんよ」


 リオンは、ソワレに縁談を勧めてきたジュルネ王国貴族に笑顔で断りを入れた。

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