5・てへぺろ♪
今の状況がヤバいと気づき、私は嘘をつくことにした。
「……な、なぁーんちゃって! 本当に倒したのはホーンラビットでしたー。見栄張っちゃいました、てへぺろ♪」
「お嬢さん、確かに犬と変わらない大きさのホーンラビットなら田舎の子どもでも倒せるかもしれないが、ホーンラビットを一匹売ったくらいじゃ王都大門の通行料にはならないぞ」
「いっ、一匹じゃなくてたくさん倒したんです。王都へ来て冒険者になりたかったからホーンラビットいっぱい倒したんですぅー」
どうやら前世の乙女ゲーム『綺羅星のエクラ』を基準に今世の人間の力を考えてはいけないようだ。
ゲーム主人公は聖女なんだから、最初っから規格外だよね。
というか、出てくる人みんな一般人とは違うな。聖騎士と元聖騎士(攻略できないバグオジ)達だったよ!
それに私、魔王だもんねえ。
お母様が人間だから純粋な魔人のみんなより魔力が弱いっていっても、そもそも魔法を使えるもののほうが珍しい人間と比べたら普通じゃないわ。
そして魔人は人間より腕力も強い。ヴェノムラビットを殴って倒したとき、私は身体強化の魔法も使っていなかった。
「……」
シャルジュさんは複雑そうな顔で私を見つめている。
大丈夫!……大丈夫、のはず。
シャルジュさんは『鑑定』スキル持ってないし、そもそもこの世界の『鑑定』スキルでわかるのは名前とレベルと魔力属性くらいだから! パーティ組まなかったら相手のHPMPすらわかんないし!
「無茶はするんじゃないぞ。……じゃあこの水晶に手を当てて」
ふう、と溜息をついて、シャルジュさんは『鑑定』スキルが付与された水晶玉を取り出した。
触った人間の魔力量が多いからといって砕け散ったりするものではない。
後お約束で、どういうわけか犯罪歴もわかる。魔王であること自体は罪じゃないから水晶玉に妙な反応はなかったよ!
「……レベル1か。ホーンラビットを倒したときにレベルが上がらなかったのか?」
「残念ながら」
「そっか。でも王都大門の通行料を貯めるためにホーンラビットを何匹も倒す根性があるんだから、きっとすぐレベルが上がるよ! なんなら俺と一緒に修業しようよ!」
それはない。
この世界、魔人は人間よりも強い魔力と腕力を持つ代わりレベルが上がらないのだ。
HPMPやパラメータは成長に従って増えていくけれど、それも成人したら止まる。
誕生日ごとにお父様に、人間の『鑑定』スキルに似た魔人特有の『魔眼』スキルで見てもらっていたけれど、お母様が人間でも私のレベルは上がらなかった。
魔王の私は最高の武術スキルや極大魔法を持つ高レベルの人間には勝てない。
実際、『綺羅星のエクラ』では絶対に魔王が負けていた。
聖女がミニゲームに明け暮れて全然育成していなくても魔王が負けるんだもんなあ。
そのときは一番好感度の高い聖騎士か四天王が命を賭けて魔王を倒す。もちろん倒した後は聖女の愛で生き返る。
聖女がだれとも好感度を上げていなくても魔王は勝てない。ジュルネ王国の王太子が現れてワンパンチで倒すからだ。
そう、ジュルネ王国の王太子イヴェールは隠し攻略対象。
ほかのだれともフラグが立ってないと魔王戦で仮面をつけて現れる。そしてワンパンチで魔王を倒す。王太子は剣使いだけど仮面の男のときはワンパンチ。
王太子の拳が強調された可愛いデフォルメキャラのスチルが出るギャグエンディングだ。
前世で、ミニゲームに明け暮れて育成もせず攻略対象ともロクに会っていなかったプレイのときにいきなり出てきてびっくりした記憶がある。
それまでの真面目なプレイで魔王と戦ったときの努力が虚しくなった。




