18・私が村長です。
とはいえ私がアンデッド戦向けの能力を持っているということは、向こうにとって私は天敵だということ。
天敵の気配を感知したのか、アンデッドは私の前には現れなかった。
それでヴィペールがもういいからジュルネ王国へ行きなさい、と言ってくれたのだ。たぶんジュルネ王国で紅茶買ってきてあげると約束していたからだろう。
紅茶カップケーキをあげた翌日、ヴィペールがご馳走してくれた数ヶ月前に買ったという茶葉で淹れた紅茶は、味も香りも抜けた色水だった。
嬉し気に飲んで自慢するヴィペールが可哀相で、つい今度ジュルネ王国へ行ったら新しい紅茶を買ってきてあげると言ってしまったのだ。
だからヴィペールは私のジュルネ王国行きに積極的なんだと思う。私の言葉を聞いて喜ぶ姿に涙を誘われたので、密封性の高い容器も一緒に買って帰ってあげようと考えている。
それに今のところニュイ魔王国の魔人にアンデッドの被害は出てないしね!
目撃証言も減っているし、もしかしたら陰キャなエルフやドワーフを見間違えたのかもしれない。
人間型のアンデッドの目撃情報だったのだ。
逆に大魔林に住むエルフやマタン山脈から降りて来たドワーフが退治したのかもしれない。
彼らは自分達の行動を魔王に報告したりしないからね!
まあ……脳筋魔人達もあんまり報告してくれないんだけどさ……うん、なにごともないのが一番!
などと思いながら、私は剥ぎ取り済みのヴェノムラビットの素材を引きずりながら大魔林を歩いていた。
うーん、もっと村に近いところで剥ぎ取りすれば良かったな。
前のように辺境伯領の近くでヴェノムラビットを殴り倒して、それから王都近くの村まで竜の姿で運んできてたんだけど、不意に気づいちゃったんだよね。ヴェノムラビットの素材も毒の特性持ってることがあるって。
それで地面に降りて剥ぎ取り始めちゃったんだよなあ。
竜の姿でジュルネ王国の村へは行けないんだから、剥ぎ取った後は人間の姿で運ばなくちゃいけないってこと忘れてたよ。
重くはないけど、いろいろバラバラになってるから運びにくい。皮でくるんで引きずったら皮が痛むし。
……魔王、反省。
ヴェノムラビットの素材はアンデッドより耐久性があるから、特性付きの角はこのまま鎖をつけてヌンチャクにしたり、トレントの素材を冒険者ギルドで購入して槍作ったりしてもいいよなー。
でも、アッシュさんとこの武器屋にちょうど良い装備アイテムが入ってるかもだし。あえて防具に特性つけて攻撃されたら毒を放つ、肉を切らせて骨を切る! みたいなのを作ってみても面白いかも。
魔王の夢、広がりんぐ!
「おや、先日の冒険者さんではありませんか?」
そうこうしていたら森が開けて、村が見えてきた。
入り口に立つ門番と話をしていた村長さんが、私に気がついて顔を向ける。
笑顔で声をかけられて、私も笑顔を作って答える。
「こんにちはー、またヴェノムラビット持ってきたんですけど買い取ってもらえますか? 今度は剥ぎ取り済みで、三本角はこちらでいただきたいんですけどー」
「はい、喜んで! おっしゃる通り角以外を買い取らせていただきます」
この村の村長さんは、旅の冒険者を騙してモンスターの生贄にしたりはしなさそうだ。いや、あれは町長だっけ?




