12・転生魔王、眠る。
「……そりゃそうだよねえ」
自室に戻った私は、ベッドに転がりながらひとりごちた。
嬉しいことに魔鍛冶は使えたのだけど、帰宅途中で倒したロック鳥の翼の骨(上腕骨と尺骨だっけ?)から作れた装備アイテムは弓だった。
特性は【風属性魔力増幅(大)】なので結構良い。
が、ヴィペールへのお土産には使えなかった。
水の四天王ヴィペールは蛇魔人一族の出で、一族の秘宝であった【大蛇の尾】と呼ばれる鞭を実の兄から奪って使っている。
あれは【水属性魔力増幅(特大)】だし、そもそも水属性魔法を使うヴィペールに風属性の武器を渡しても仕方がない。
ゲームの記憶を思い出してみれば、水属性の武器は水棲モンスターの素材で作るもんだったんだよね。そりゃそうだー。
ヴィペールにはいろいろお世話になっている。
蛇魔人には少し邪悪なところがあってヴィペールはその最たるものだから、なんか悪いこと企んでそうな気もするけど、魔王である私がお世話になっていることは間違いない。
毎日の食事の支度もしてくれている。……基本お肉でたまに魚。
だから涙を呑んで夜食予定だった紅茶のカップケーキを渡したのだ。
包装したのは先日十六歳の誕生日を迎えた自分へのプレゼントのつもりだったんだけど、結果オーライ。
とはいえ、ただの自己満足だよね。ゲームでは四天王の好感度は魔鍛冶アイテムじゃないと上がらなかったもん。
一度ヴィペールにブランデーケーキプレゼントしたら、めっちゃ好感度下がったし。蛇はお酒好きそうなのに不思議。
甘いのが駄目だったのかな? じゃあ紅茶のカップケーキも好感度下げたかなあ。
やっぱ脳筋魔人はお肉が一番なんだろうね。
思いながら、王都近くの村でヴェノムラビットを売ったときにおまけでもらった鞄を開けて、夕食用に買ったローストビーフサンドを取り出す。
お肉でもこういう風に調理されてたら飽きないのになー。
今度ジュルネ王国に行ったらイートインでお茶して帰ろう。
転生者かもしれない聖女に自分のことを話すかどうかは保留!
私がジュルネ王国へ侵攻さえしなかったら、そもそもゲーム自体が始まらないし。お互い平和な生涯を送れたら良いよね。
あ、でもゲームの魔王が聖女にモンスターを差し向けてたのって、今考えるとちょっと変。だってモンスターは……
その日、なんだかんだで脳筋魔人のひとりである私は、久しぶりに食べた調味料を使った美味しい料理に満足して、前世でネット小説に出てきたゲームの強制力なんてものの存在はかけらも思い出さずに熟睡したのだった。
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乙女ゲーム『綺羅星のエクラ』において、攻略対象の好感度は料理アイテムでも魔鍛冶アイテムでも上昇する。
しかしソワレの前世は魔鍛冶のミニゲームに嵌っていたため、魔鍛冶アイテムをプレゼントした数のほうが圧倒的に多かった。
そのため、四天王は魔鍛冶アイテムでないと好感度が上がらないと思い込んでしまっていたのである。
実際は四天王も料理アイテムで好感度が上がった。
さらに大好物だったりすると、とてつもなく上がる。
ゲームでは聖女と敵同士だったので会うイベントが少なく、それを補うべく好物大好物設定のアイテムをプレゼントしたときは一気にクリア可能なほど上がっていた。
もちろん今はゲームではなく現実なのだけれど──




