タイトル未定2025/12/29 21:12
bar「ジェシカ」のドアを開けると、カウンター席に一人。
テーブル席に三人一組の客がいた。
若菜たちは、テーブル席に座った。
bar「ジェシカ」でバイトをしている、流花が笑顔で4人分のお冷とおしぼりとメニュー表を配る。
配り終わった後、椅子においてあったケースに気が付いた。
「スイ、もしかしてそれ……入学式に着ていくスーツ?」
「赤井さんが、選んでくれたの。スーツを見せたくて来ちゃった」
赤井は、照れながら笑った。
「わぁ、見たい見たい!」
流花は、声を上げた。
若菜と流花が話をしている間、馬場とちはるはメニュー表を眺め、馬場が赤井に言った。
「赤井、こっちで適当に料理をたのむぞ」
「あっ、はい」
赤井は、返事をした。
馬場の言葉に、流花はバーテンのバイトの顔に戻り、馬場の方を向いた。
「シロちゃん、ピザとパスタ。二つともニ枚ずつ。それとビール。スイちゃんは……」
「烏龍茶で」
流花は馬場がオーダーした料理と飲み物を復唱して、カウンター席に向かった。
若菜は、遠ざかる流花の背中をみつめていた。
流花は飲み物の注文を、カウンターの中にいたマスターに伝えていた。
その時、マスターは流花に優しい笑顔を見せていた。
その笑顔は、若菜がいつも見ているマスターの笑顔ではなかった。
好きな相手に見せる笑顔……若菜にはそう感じた。
ふとマスターは、若菜と視線が合った。
マスターは若菜に向かって、軽く頭を下げた。
若菜も同じように、軽く頭を下げた。
マスターが若菜に向かって軽く頭を下げた時、いつものように微笑んでいた。
そう……いつも見せる笑顔だった。
嫉妬の目で若菜が自分を見ていたことに気付いていない流花は、オーダーした飲み物を、運んできてテーブルの上に置き、取り皿とフォークのセットを置いた。
その姿を見た馬場が言った。
「おっ、シロちゃん板についたな」
「ありがとうございます!」
流花は満面の笑みを、馬場に向けたので馬場は顔を赤くした。
「何、赤くなってるの。気持ち悪い。営業スマイルに決まっているでしょ。ねぇ、シロ」
ちはるは、ビールを飲みながら言い、流花は慌てて言った。
「営業スマイルって、そんな!本当に嬉しかったんです。では、失礼します」
テーブルを離れた流花の後ろ姿を馬場は、にやにやしながらみつめていた。
そんな馬場の頭を、ちはるは思い切り叩いた。




