タイトル未定2025/12/29 21:24
その週末bar「ジェシカ」のカウンター席に座って、馬場とちはるはそれぞれ頼んだお酒を飲んでいた。
「友光、お前ホント酒が好きだなぁ」
bar「ジェシカ」に行く前、違う店で食事をして既にアルコールが入っていた。
「日頃の疲れが吹っ飛ぶわ」
さすがに、頬が赤く染まっていたちはるだったが、気はしっかりしていた。
ハイボールをゆっくり飲んだ、馬場が言った。
「赤井とスイちゃん、どうなるかなぁ」
「う〜ん。多分無理でしょ」
「なんで、そんなことが言えるんだよ」
「スイは未だにマスターに、未練タラタラだし。赤井は、マスターに嫉妬心むき出しだし」
「赤井が、もう少し大人だったらなぁ」
馬場の言葉に、ちはるは思わず吹き出した。
「なんだよ?」
「あんたが、そんなことを言うなんてね」
馬場は、そっと店内を見回した。
店内は数人の客が入っているものの、皆静かに談笑してゆっくりお酒と食事を楽しんでいた。
マスターは、馬場とちはるから離れて座っている常連客と静かに話をしていた。
バイトの流花は、テーブル席の客と静かに話をしていた。
その静寂を壊すようなヒールの音が鳴り響き、その音は馬場とちはるの近くで止まった。
馬場とちはるは、何気なく見ていた。
その女性は、背が高く黒髪ロングヘアだった。
気が強そうな目つきをした女性は、パンツスタイルだった。
女性がカウンター席に座るとマスターが、女性の前に立った。
マスターは、短い声を上げた。
「緑さん」
「二足のわらじ……偵察よ」
「二足のわらじ……」
マスターは出勤前、緑に言われた言葉を思い出し、ため息をついて言った。
「おまちさんですね」
「おまちさんから聞いた時は信じられなかったけど、本当にお店を持っていたんだ」
「何になさいますか?」
マスターは、メニュー表を緑にさしだしながら言った。
緑は、をゆっくり眺めた。
「おまちさんが、言った通りだ。食事が、充実している」
緑の言葉に、マスターは言った。
「たきさんが作る料理は、どれもお勧めです」
「たきさん……おまちさんの友達ね。そうね。マティーニとクラブサンド」
「かしこまりました」
テーブル席の客の相手をしていた流花が、戻ってきた。
「クラブサンドを、お願いします」
「はい」
マスターから注文を受けた流花は、厨房に入って行った。
マスターが作ったマティーニを、緑が飲んでいた時、ちはるは緑を見ながら、マスターに声をかけた。
「マスターお知り合い?」
「えぇ、まぁ」
マスターは、曖昧に答えた。
さらに、マスターに聞こうとしたちはるをさえぎるように、緑が言った。
「マスターマティーニ、もう一杯」
「かしこまりました」
マスターは、マティーニを作る準備を始めた
ちはるは、真っすぐ緑の方を向いて名乗った。
「初めまして。友光ちはるです」
「どうも」
ちはるは名乗ったのに、何も言わない緑にちはるは気分が悪くなった。
しかし反論ができないほど、緑は近寄りがたいオーラを放っていた。
馬場が、そっと言った。
「前に見かけた黒いドレスを着たお姉ちゃんと言い、そこにいるちょい高飛車なお姉ちゃんと言い、マスターの周りは、可愛い子ちゃんだらけだな」
「羨ましい?」
「面倒くさいだろ。自由に、好きなように生きれれば、俺はそれでいい!」
「えらそうに!」
ハイボールを飲む馬場の頭を、ちはるは軽くつついた。
厨房から流花が出て来た。
「お待たせしました。クラブサンドです」
流花はカウンター席に座っている緑の目の前に置いた。
「ありがとう」
クラブサンドは、ボリュームがあって食べ応えがあった。
「美味しい!」
「良かったです」
緑はクラブサンドをあっという間に食べ終え、ゆっくりタバコを吸った。
ホールにいた流花に、馬場は声をかけた。
「シロちゃん、そろそろ帰るよ」
馬場は会計を済ませ、流花は馬場たちを店の外まで見送った。
店の外に出ると、ちはるが流花に聞いてきた。
「マスターと親しく話をしていた、高飛車な女は誰なのよ?」
「さぁ。私は、何も知りません」
流花の言葉に、ちはるは肩をすくめた。
「おい、行くぞ。シロちゃん、ごちそうさま」
馬場の言葉に、流花は応えた。
「ありがとうございました」
流花が店内に入って行くと、馬場とちはるは歩き出し、馬場が言った。
「高飛車女のこと、シロちゃんが知るわけないだろ。もし知っていたとしても、シロちゃんが言うわけない」
「わかっていても、聞かずにはいれなかったのよ」
「高飛車なお姉ちゃんが、自分のことを名乗らなかったことを、まだ根に持っているんだな」
馬場の言葉にちはるは馬場をにらみ、馬場とちはるは、夜の繁華街を歩いた。
流花は最後の客を送り出し、店に戻った。
マスターが、看板の灯を消した。
店内には、マスターと流花と緑の三人だけになった。
ホールを掃除する流花を見ながら、緑がマスターに言った。
「彼女が、流花ちゃん」
「それも、おまちさんから?」
「ええ、いい子をバイトに雇ったじゃない」
「今じゃ、彼女目当てのお客様が多いです」
「マスター、心配でしょ」
意味ありげに言う緑を、わけがわからず、不思議な顔をするマスターだった。




