8.なぜ燃えている・・・?
明朝出発、と言っていたが結局昼前になってしまっていた。
(ギルド長め、さらに書類を押し付けよって・・・)
書類仕事が多すぎて一緒に視察に行けないギルド長ボーガンが泣きついて来た為に出発が遅れたのだ。
ようやくダンジョンの前まで到着した彼は守衛に挨拶をした後、軽く柔軟運動をする。
「よし、では行くか。」
ぐっ、と足に力を込めて地面を踏みしめ、そして蹴るとものすごいスピードでダンジョンの中に消えて行った。
(5階までは10分くらいか・・・?)
低レベル層のダンジョンとはいえ王都から近いので冒険者には人気がある。
(現在は危険なので入口に進入禁止と書かれた札が立っている)
ギルドも日々ダンジョンへ通う冒険者の為にダンジョン内マップを作成し販売している。
なので彼クラスなら庭と同じ、各階の詳細に至るまで記憶している。
彼は颯爽と最短ルートを爆速で進み、道中出会ってしまった不幸な魔物は全て瞬殺されていった。
程なくして5階への階段までたどり着き降りてみると魔物の姿は無く、部屋や通路に松明が置かれていた。
(ほぉ、報告通り管理されておるな・・・)
彼は安全を確認しながら魔物のいない通路を歩き、最後の大部屋にたどり着いた。
そしてその光景に驚愕する。
(なっ?な、なんだこれはーーーっ!?)
(大部屋の奥側に悪魔の巣がある、これは分かる。しかし・・・。)
(ど、どういうことだ?なぜ皆・・・燃えているんだ・・・!?)
危うく叫びそうになるのを堪えてよく観察してみると、部屋の中央に4人いて悪魔の巣から湧いてくる魔狼を討伐している。
そこから少し離れて4人配置、部屋の両端に4人と4人で2パーティ。さらに端の方にいる4人は食事を作っている。
ただおかしいのは全員炎に包まれて燃えている事。
「よーし、あと10分で全フロアの魔物が沸き始めるぞ、2パーティ配置についてくれ!巣の担当パーティも交代だ、フロアの掃討が終わったら飯にしよう!」
「「おう!」」
4人パーティの5組、計20人はリーダーノートンの指示でテキパキと動いている。
5階に沸く魔物掃討の為に大部屋の入り口に歩いて来た2パーティが彼に気付く。
「あれ、副ギルド長じゃないですか。魔道鳩が届いて様子を見に来たのかい?」
「うおっ!あ、ああ・・。まぁそんなところだ。」
全身火で燃えながらも何事も無いように普通に挨拶をされたので面食らう。
「そ、その・・・君たちなぜ全身燃えているのに平気なのかね・・?何がどうなっておるのだ?」
「ああ、ちょっと特殊な回復術士がいましてね。火属性のヒールを掛けてくれてるんだ。」
「火?・・火属性のヒール?何だそれは・・・あ、熱くはないのかね?」
「最初は熱かったがもう慣れたよ、見た目は燃えてるが実際は少し熱い風呂に入ってるくらいかな。」
「そ、そうなのか・・・。」
(そう言われてもな・・これだけ燃えているのに。焼けないと言う事なのか?理解できん・・・。)
嘘は言ってないようだが見た目のインパクトが強すぎて脳内処理が止まっている。
「凄いのは見た目だけじゃないぜ、火が燃えている限り回復効果が持続するんだ。」
「な、なんだと!?持続するヒールなぞ聞いた事もないぞ!!」
回復術士の回復魔法は下級から上級まで全て知っている彼であったが、持続する回復魔法と聞いて仰天した。
そうなると当たり前のようにこの言葉が続く。
「誰だね!その回復術士は!?」




