43.最下層
4階で聖女様の魔力回復休憩を取った後、最下層の5階へ向かう。
さきほど聖女様に使った魔力回復魔法は前回の初ダンジョンで覚えた魔法であり、生活魔法の回復魔法を火魔法と合わせた時よりさらに強引な魔法だった。
健吾自身の魔力量(MP)を火の魔法と合わせて対象者へ魔力を譲渡していたのである。
レベル1の魔力量としては破格の量だったとはいえ、実験として魔法使いエマに魔力譲渡した際には、張り切りすぎてかなりの魔力を火に込めてしまい、魔力が枯渇して術者の健吾が吐いてしまっていた。
そこから改良を重ね、健吾の魔力たっぷりの火魔法に包まれてじわじわと魔力が回復していく、
通称「魔力回復魔法」になったのである。実際は魔力譲渡となる。
この世界では魔力回復の魔法は「聖属性の上級魔法」として存在するが、
1.覚える為の魔法書が上級ダンジョンのボスドロップや宝箱からのランダムでしか入手不可
2.覚えるレベルが70以上という高レベル者限定の魔法書
なので、勇者パーティの聖女様くらいしか持っていない激レア魔法だった。
一方の魔力譲渡も難易度が高いため、この世界では原則禁止扱いになっている。
魔力(MP)は誰も同じモノだと思われていたが、他人の魔力を譲渡され身体に取り込むと自分の魔力と違うので拒否反応が起こり、死にはしないがほぼ確実に魔力酔いし、しばらく動けなくなってしまう。
現代で言えば血液型の違いに近い。
それに譲渡には高レベルの魔力操作が必要な為、操作レベルの低い人が譲渡しようとすると無属性魔法攻撃になってしまうのだ。
それを誰にでも輸血できるO型のようなイメージで魔力を練り火魔法に合わせる、を自分を実験台に何百回と繰り返し成功させた。
じわじわとゆっくり持続的に取り込む事で拒否反応も抑える事ができた。
魔力回復、魔力譲渡、どっちにしろ常人では扱えない魔法を、廃人ゲーマー魂の飽くなき魔法練習によって改良、修得してしまっていた。
それを健吾は報告もせずに使っていたので後々スティングの目に留まり尋問されることになる。
しかしこの聖女様はその辺がすっぽりと抜けているのか
「ああー本当に魔力がじわじわ回復してますわ~癒されますわあ・・・。」
と、何も知らずに喜んでいた。
他の騎士団員も魔法の知識が浅いので知らず、驚いていたのは序列3位の風魔法使いさんだけだった。
一行が降りてきた最下層となる5階の構造は城の謁見の間をさらに広くしたような縦長で、一番奥にボス部屋の扉があった。
その道中にうじゃうじゃと密集するアンデッドたち。
5階へ降り立った場所からは見えないが、恐らく悪魔の巣は最奥のボス部屋の扉前辺りだろうと推測する。
さすがに最下層だけあってアンデッドのレベルも15~18前後と強化されている。
聖女様をはじめ高レベルの肉盾役の皆さんも一様に表情がこわばる。
「あ、アンデッドたちがこんなにも・・・。これはもう私のレベル上げどころではありませんわ。」
「そうですね。」
「全員でパーティを組みなおしましょう!聖属性の強化魔法も皆さんにおかけします。一刻も早く討伐しなければ外へ溢れ出してしまいますわ!」
「まままま、待ってください!!!」
強化魔法をかけようとする聖女様を全力で止める健吾。
「ひゃっ!?な、なぜ止めるんですのっ!?」
「こ、この状況こそ!絶好のパワーレベリングの状態なのですっ!!」
「ぱ、ぱわー・・?」
「現状を説明しますね。」
きょとんとする聖女様たちにオタク口調で説明開始。
ボスを除けばこのダンジョンで一番経験値が高い最下層のアンデッドたち
高レベル者の護衛でほぼ無傷で攻撃しまくれる状態
しかも全モブ聖属性弱点
回復魔法は肉盾さんたちを回復しつつアンデッドに大ダメージ
万が一の状況になれば高レベル者が攻撃参加し悪魔の巣を破壊
こんな美味しい恩恵たっぷりのアンデッドたちがモリモリ沸き続けている素敵な状態
今後この環境はめったにないだろう、と早口で説明。
「こうなるともう、アンデッドたちが経験値の塊に見えてきませんか・・・?」
「い、言われてみれば・・・そう、ですわね・・。ごくり」
「ふふ、殺る気になって頂いたようで何よりです。(ニチャア)」
「さぁ!悪魔の巣を逆手に取ったスーパーパワーレベリング!始めましょうか!!」
「「「おおー!!」」」
ノリのいい聖女様も掛け声に加わり、強化魔法を全員に掛けてもらって階段を下り終えると、数百のアンデッドが待つ最下層でのバトルが開始された。
(パーティ)
健吾 レベル10 (火魔法 近中距離攻撃&回復役)
聖女様 レベル23 (聖魔法 解毒、解呪、浄化、回復役)
(外部パーティ)
聖女護衛の聖騎士さん2名 レベル50+ (盾役 隊列の前後配置)
第二騎士団のエースさん レベル60+ (剣 攻撃役)
第三騎士団の副団長さん レベル50+ (短剣 攻撃役)
第三騎士団の副団長補佐さん レベル50+ (弓 中距離攻撃&斥候役)
宮廷魔導士団の序列三位さん レベル50+ (風魔法 遠距離攻撃役)




