40.いざ
重症患者4人は塔の真ん中の部屋に寝かされていた。
病院で言うとナースステーションに一番近い場所、何かあった時即座に対処できる為だ。
ただ重症患者たちも他の患者と同じく聖女様たちの懸命な治療により命の危機は脱していた。
傷を塞ぎ、縫合し、生活魔法ヒールでこつこつ回復。その結果大きな怪我である手足の欠損が残っている感じだ。
回復に浄化に、と聖女様が忙しすぎてなかなか魔力が回復せず、欠損を治す上級回復魔法がかけられなかった。
聞けばお城に聖属性魔法使いが3人残ってくれている事だけでもかなり好待遇なのだとか。
(回復要員がまるで足りてない訳か・・・。お城でこれなら町のギルドはもっと足りなそうだな・・・。)
魔物討伐もだが、激レア職の聖属性魔法使いを何人囲めるかが国やギルドの喫緊の課題なのは間違いない。
(おっと・・・、集中集中・・・。)
早速重症患者一人目に火の回復魔法を使用し状況を見守る。
彼は魔物に左の肘から下を食いちぎられており、医療処置は済んでいるがまだかなりの痛みがあるようだった。
全身を火で覆われ熱さに驚いていたがじっと耐えてくれている。
そこに聖女様が上級回復魔法を詠唱開始。
「偉大なる女神カティアよ、その御力をしばし我が身に与えたまえ・・・。」
その後も聞き取れない呪文が少し続いた後、カッ!と目を見開いた。
「女 神 の 慈 悲 の 手 !!」
と唱えると患者の左腕に聖なる魔力が集まる。
魔力が光となって手の形を作っていき、光が消えると肘から下が完全に再生されていた。
「「おおおお!」」
(すげえええ、まさに神の奇跡を見てしまった・・・。新しく腕が生えるというよりは元の腕に戻したって感じに見えたな。)
聖女様の聖魔法と健吾の火魔法によって身体はほぼ完治となり、涙ながらに感謝された。
「さぁ、あと3人!ガンガンお救いしますよ!!」
パワフルな聖女様のセリフに苦笑しつつも顔を見るとかなりきつそうだった。
一度の上級魔法でかなりの魔力を消費していると思われる。
(多分次で魔力的にギリギリそうだな・・・。)
そう思った通り、聖女様は次の重症患者に上級魔法を使った後に魔力枯渇で倒れてしまった。
少しでも回復の手助けになれば、と全身を火の回復魔法で覆いベッドに寝かせる。
「す、すいません・・あとお二人なのに・・・。私にもっと魔力量があれば・・・。」
「ん?・・魔力量増やせますよ。」
「「ええっ!?」」
周りの人たちが反応する。
「ええ?な、なんでそんなに驚くんですか・・・?この世界、レベルの概念があるのだから経験値を稼げばレベルも上がってステータスも上がるじゃないですか。」
「当然魔力も、魔力量も上がりますよ。」
「あ、あああ・・確かに!!ギルド所属の聖属性魔法使いはヒーラーとしてダンジョン討伐に同行し、経験を稼ぎレベルを上げています。魔力も魔力量も多いのは当然!」
スティングに叫ばれてみんなビクっと驚く。
「そうでした・・・、魔法を使う事でも経験は積めてレベルも上がるのですが、ダンジョンで魔物を倒すパーティに入ったほうが断然効率が良い!」
「お城で治療行為に全力を注がれている聖女様たちはレベルの上りがどうしても遅くなる、という訳ですね?」
「そうです。討伐でヒーラーが足りず患者さんが増えるから余計に多忙になりお城から動けなくなるという悪循環になっていると思います。」
「ですが今、患者は重症患者お二人だけです。それなら逆に攻めてみませんか?」
「「せ、攻める?」」
ベッドに全身燃えながら横になっている聖女様とスティングがごくりと息をのむ。
「騎士様たちが患者にならない為に、討伐に同行するのです!それなら現地で回復できますし、患者も運ばれてこない。」
「ええ・・せ、聖女様がダンジョンへ・・?勇者様パーティと同レベルの最重要人物ですよ!」
婦長さんが驚いて叫ぶ。
「ならばなおの事、聖女様のレベルアップ、魔力量アップは最重要事項なのでは?」
「そ、それは・・そうですが・・・。」
「難関なダンジョンに行く必要はありません、むしろ初級ダンジョンでもいい。それに護衛にスティングさんが付けば怖いものなしでは?」
「はは、私は万が一の時の城防衛の要でもありますので同行は無理だと思いますよ、しかし聖女様の為ならば命を賭して戦ってくれる騎士団が必ず守ってくれるでしょう。」
「ですよね?」
スティングが後ろを振り返るので健吾たちも振り返ってみると、治療を終えた大勢の騎士たちが部屋を覗いていた。
「もちろんです!!献身的に治療して頂いた御恩は忘れません!この身は国と陛下と聖女様の為に!!」
「み、みなさん・・・!」
「うおおおかっこええええ!」
ウルウルする聖女様を横目に叫んでしまう健吾。
(ファンタジー世界の騎士道精神カッコ良すぎるううう!)
「ま、まずは聖女様にゆっくり休んでもらってあと二人治療しましょう、新規の患者が減れば色々動ける様にもなりますし、スティングさんが王様に許可を頂いたら・・・、いざ!ダンジョンへ!」
「か、簡単に言ってくれますね・・・。」
「日が決まれば僕もご一緒します。ただその前に、ギルドのダンジョン討伐パーティに僕をねじ込んでくれませんか?出来れば初期ダンジョンあたりで。」
「そ、それは可能ですが・・、あなたも国の最重要人物なんですよ、危険ではありませんか?」
心配するスティング。さすが金髪イケメン。
「先にダンジョンを見ておきたいのです。攻略済みのダンジョンなら地図でルートも覚えたいです。出来る事は・・・出来る事は全てやりたいのです!」
廃人ゲーマー魂が燃えている健吾にもはや危険も聞く耳も無い。
「わ、分かりました。ギルドとは緊密に連携を取っていますので、悪魔の巣の目撃情報が初期ダンジョンから出た時はお任せください。」
「あ、ありがとうございます!」
(あああ!初のダンジョン・・・!火魔法の使いどころと火の回復魔法の実戦での見極めが出来る!!)
魔物の怖さなど限界社畜廃人ゲーマーには皆無。彼が怖いのは成人病と担当医だけだった。
その日の夜に魔力の回復した聖女様と共に重症患者二人を治療した。
その後一週間、療養塔で新たに運ばれてくる患者を治療しまくり新規患者が減った頃、遂にスティングからダンジョンへの討伐許可が下りた。
ー第0章 プロローグの初ダンジョン編へ続くー




