39.活躍
それからの健吾は凄かった。
魔物との戦闘で負った傷で苦しむ騎士たちに聖女様と婦長さんが交代で浄化魔法を唱え、火の回復魔法をかけて回る。
1部屋8人いる患者全員の全身が火で覆われ、小さな傷も大きな傷もじわじわと治っていく。
完治したかどうかを確認してから火を消し、全員が終わると次の部屋へと移動した。
裂傷などの大きな傷は1時間ほどかかったが、それでもとんでもなく早い完治である。
一番の収穫は、傷により高熱を出している患者や、風邪っぽい症状の患者にも効いた事。
物理的な傷だけでなく、ウィルスなどの病気にも効いたのである。
それは生活魔法の回復魔法が、自己治癒能力を高める自力系スキルであるからだと想像できた。
自分自身の治癒力が上がるので傷も病気も治りが早いという訳だ。
ただ、直接身体にかけるので、自己治癒力を上げると体力を使ってしまい、結果身体に負担がかかる。
回復魔法自体が強力で、魔法の力で完治させる聖属性魔法は身体に負担が全くない。
健吾の場合、自己治癒力を上げる魔法を火に付与し傷口にかける、という1段階挟んだ方法になった結果、火が自己治癒能力を高めるのは生活魔法と一緒だが、
「治ってからも火が消えない限りずっと自己治癒能力が続くので、自己治癒に使った体力も回復する」
といういいトコ取りの魔法に生まれ変わっていた。
むしろ傷を治している最中に減る体力も同時に治す = 体力減らない
という無茶苦茶な究極自力スキルになったのである。
もちろん偶然の産物なのでそんな事を健吾は全く知らない。
自分を実験台に全身を燃やして散々試しまくっていた時も、「傷も治ったし、体調も良くなるなぁ。」程度にしか思っていなかった。
火の魔法で回復できるのがただただ嬉しいだけのヒーラーオタクであった。
そのオタクヒーラーが無尽蔵の魔力で2部屋目の患者8人を全身火で丸焼きにしている。
大きな傷の治りが遅い患者にはそのまま継続して燃やし、完治した患者は火を消して次の患者、次の部屋へ、を繰り返した。
大いに沸く騎士たちの歓喜の声と涙。抱き合って喜ぶものもいる。
魔力切れまで毎日回復魔法をかけてくれる聖女様たちに申し訳ない思いをしながら入院生活をしてきた彼らにとって、完治しお礼を言えるのは何よりの喜びだった。
こうして朝食後に突如始まった健吾たちの治療は昼には重傷患者数人を残すだけになった。
ここで言う重傷者とは、手足や目を失った患者である。
「ケンゴさんのおかげで魔力もかなり回復する事ができましたわ。午後からは上級魔法が何回か使えます。」
魔法研究施設の中庭にみんなで移動し昼食を取る。
すごい勢いでモリモリ食べつつ喋る聖女様。
「ここまで騎士様たちの治療が遅れていたのは私の魔力量が多くないからなのです。上級の回復魔法もいくつか使えますのにすぐに魔力が尽きてしまうせいでいつも申し訳なく・・・。」
かなり落ち込んだセリフを言っているのだが食べる勢いは全く止まっていない。
魔力回復に食事がいいのは本当のようだと納得する。
「聖女様は本当によくやってくれていますよ。」
「そうですとも!」
「あ、ありがとう皆さん・・・あ、このお肉おいしい!すいませんコレ追加で!」
スティングや婦長さんたちに慰められウルウルする聖女様、しかししっかりとんかつをおかわりしていた。
「上級魔法って四肢欠損も治せるのですか?」
「ええ、身体に働きかけて失った手足を思い出してもらい、それを復元する感じです。」
(なるほど、患者の遺伝子情報を読み取って復元するのか・・・すごいな上級魔法、見てみたい。)
現代の最先端医療でもまだ不可能な領域が実際に見れるとあって不謹慎ではあるがワクワクが止まらない。
「昼食後は重症の患者さんを治していきましょう。聖女様が上級魔法をかける前に僕の火魔法を全身に掛けておけばさらに回復力が増すと思います。」
「おお!火の回復魔法で自己治癒能力を上げて聖属性の上級回復魔法で欠損を治す・・・、これはかなり有効な重ね掛けになりそうですね。」
スティングにお墨付きをもらい、残る重症患者を治療するため療養塔に戻った。




