3.初めての範囲回復魔法
「よし、こっちはもう大丈夫!他のパーティは・・押されてますね、攻撃も回復も足りてない。」
さっと大部屋を見返すと、他パーティも残りの2つの通路から湧き出てくる魔狼たちの数に押され始め劣勢になっていた。
「ヒール支援します!」
他パーティ盾職「おうっ!助かるぜぇ!」
彼は交戦中の為、ケンゴの前衛二人が全身火に包まれながら戦っているのを知らなかった。
他の後衛職の回復術士や魔法使いの数名は気付いているようで、戦いながらも明らかに動揺している。
「1度しか試した事ありませんが、この術式を組み込めば全体魔法にも使えるはず・・・」
早口かつ小声でブツブツと呟き終わると、某寿司屋社長のような両手を広げるポーズを取る。
「・・・青き炎よ!!」
彼がそう言うと両手のひらの上に今度は青い炎がボッと現れた。
その後もブツブツと呪文のようなものを唱え続けると、2つの炎がさらに青白く輝いた。
そしてその2つの炎を胸の前で合わせて一つにすると1mほどの巨大な炎が完成する。
「行きます!・・・エリアヒイイイイイル!!」
そう叫ぶと大きな炎を目の前の地面に投げつけた。
すると燃えないはずの土の地面があらかじめガソリンでも撒いていたかのように勢いよく燃え始め、部屋全体へと一気に燃え広がった。
他パーティの皆さん「うわあああああ!! 火いいいいいい!? きゃああああああ!?」
横にいたエマ「わ、私はケガしてな、きゃあああああ!」
無事全員に着火完了、大部屋の討伐隊全員が燃えている。しかし魔狼は燃えていない。
先ほどの地獄絵図がわずか1分で更新されてしまう位の真・地獄絵図が今ここに。
しかし熱いだのタコだのと叫んでのたうち回っていた彼らは、また突然魔狼へ攻撃を始める。
人も、そして部屋も燃え盛る状況に魔狼の戦意は落ち、おびえていた。
その機を逃さず魔狼へ襲い掛かったのだ。
先ほどのノートンとリッキーのように全員が炎に包まれながら魔狼を追いかけ回し、あっという間に倒していく。
大部屋の制圧を完了すると同時に全身を纏っていた炎が消えていく。消えた後の身体は服すら燃えておらず、傷も体力も回復していた。
「ほ、ホントに火が回復してくれたのか・・」
「信じられん・・・。」
皆が驚きを隠せないでいるとケンゴがドヤ顔をする。
「だから言ったじゃないですか、回復効果のある火なんでゲボォオオオオ!!」
「うわあああああ!は、吐いたああああ!?」
ドヤってる話の途中で突然嘔吐するケンゴにドン引きし、一気に周りから距離を置かれる。
ちょっと熱いけどすごい魔法を使うんだなと見直されていた評価が底の方まで落ちていく。
エマは、ゴミクズを見るような目で彼を見つめている。
「お、おかしいですねぇ、やはり全体魔法に色々詰め込み過ぎオロロロロロロ」
「き、汚ねええええええええ!部屋の隅に行け!!」
自分自身にもヒールを使い、大部屋の隅でメラメラと燃えながらもブツブツと改善点を呟きニヤけるケンゴ。それを見て全員が思った。
「もう帰りたい・・・。」
「ぶああああ!!?」
すると突然健吾が叫び出し、全員がビクっと反応する。
「こ、今度は何・・・?」
エマが嫌そうに近寄ってくる。
「す、すいませんエマさん、最初に盾さんと短剣さんにヒール使った時って火の色・・、赤かったですか?」
「え?・・ええ。おかげで普通の攻撃魔法と思っちゃったわよ。」
「や、やっぱりいいい、青くするの忘れてましたね・・・ヒールは青色って決めてたのに・・・。ヒールは青色ですううう・・・ガクッ。」
「何それ!?そんな事できるの?ちょっと!起きなさいよ!!」
部屋の隅で横になってぐったりする健吾の肩を持ってエマが揺らすが、また吐きそうになっていた。
「エマ、揺らすのはやめてあげなさい・・・。ケンゴが回復するまで少し休憩しよう。」
「・・・はーい。」
しばしの小休止となった。
健吾の火魔法紹介
赤い炎 単体 攻撃(初期レベル火魔法)
赤い炎 → 実は青い炎 new! 単体 回復(ダメージ0、延焼0、温度低下)
青い炎2 範囲 回復(回復する目標の指定が必要)




