16.現状把握
「え、えーっと、魔王ホントにいたんですね・・いや、もういないのか・・・。」
「はい、一月ほど前に勇者パーティによって倒されました。」
「そ、そうなんですね。もしかして勇者様も異世界からの召喚者・・とか?」
「この国の人間ですよ、彼は元Sランクの冒険者でした。魔王軍の侵略が始まった時に女神様から天啓を受け勇者になりました。」
「は、はあ・・・。」
スティングから得た少ない情報で簡単にまとめてみると。
1.魔王が存在し、軍を率いて侵略戦争を開始
2.女神様の天啓を受けSランク冒険者が勇者に選出
3.勇者パーティが魔王を討伐
4.討伐一か月後に異世界から健吾を召喚
(んんんんー?俺いらなくね・・・?なぜに魔王討伐後に召喚・・・?
魔王軍の幹部みたいなのが残党にいてめちゃ強いとか・・・?)
「では、魔王討伐後に私を召喚した目的はなんでしょうか。残党の討伐に苦労しているんです?」
「いえ、残党も勇者パーティと連合軍で魔王城周辺や幹部の拠点などを順調に討伐中です。」
これまでにこやかに対応していたスティングが少し真顔になって話し進める。
「実は魔王が死ぬ時に多数の瘴気が体から放たれたのです。この瘴気が多くの魔物を生み出し、魔物の暴走に繋がるという現象が各地で起きてしまいました。」
「私たちはこの瘴気を「悪魔の巣」と呼んでいます。」
スティングが続ける。
「この悪魔の巣が厄介でして、瘴気が落ちた場所が地上ならまだ対処が早いのですが、暗い場所を好む生き物のように、ダンジョンなどの暗く魔物の多い場所に降りていくのです。」
「ダンジョンなどの奥まで進んで地に落ちると、そこで魔力を吸収し育ちます。数日後丸い形になり、その場所にいる魔物を模倣してどんどん生み出していくのです。浄化しなければ2~3日で消えるのですが、またどこかに移動して同じ事を繰り返します。」
(ほほう、なるほど。強いヤツには強い勇者たちが対応できているが、
瘴気が原因で起こる魔物の暴走が厄介かつ人手が足りない、と言った所かな。)
何かを察したような健吾の顔に気付き、微笑むスティング。
「お察しの通り、人手が全く足りないのです。現在各国ギルドに所属する冒険者を総動員して悪魔の巣の浄化を進めていますが、それでも全く足りません。かと言って放置すれば魔物の暴走が各地で多発してしまいます。
魔王が最後の抵抗で放った瘴気が、この世界をゆっくりですが確実に滅亡に向かわせているのです。」
しんと静まった謁見の間。健吾はふと辺りを見回す。
王族、貴族、騎士団合わせて100名近くいるのだがスティング以外まだ誰も発言していない。
なかなかに異様な雰囲気だ。
スティングと健吾に集中する視線にぶるっと身震いし、少し興奮した。
余談ではあるが、彼は承認欲求強めのドMという難儀な性格だった。




