14.召喚の儀式
とある国の首都に構える王城の優美な謁見室。
王族と多数の貴族が見守る中でその召喚は行われた。
筆頭宮廷魔導士が呪文を唱えると床に描いた魔法陣が光り出す。
1分、2分、と時間が経過していくが何も起こらない。
魔法陣を維持する為に苦悶の表情を浮かべていた魔導士の口元が少し緩む。
「見つけました!」
そう発言しさらに力を込めると魔法陣が一層眩しく輝く。
そして中央に現れたのは人間らしき男性。
大歓声の後、すぐにしんと静まり返る。
楠本健吾「こ、ここは・・・?」
スティング「ようこそおいで下さいました異世界の御方。ここは「ゴールドランド」と呼ばれる国の城内、王の謁見室でございます。私の名はスティング。筆頭宮廷魔導士を務めております。」
スティングと名乗る男は金髪ロン毛の超美形で、足首まである長い豪華なローブを着ていた。
「おおっ!すっごいイケメン・・・。」
「イケ・・メン・・・?」
「あ、いえ・・なんでもないです・・・。えっと、僕はなぜこんな所に・・?」
(ま、マジでどこだココ!?超広い大部屋に、左右に並ぶフルアーマーの騎士すっご・・・。
あの剣ホンモノ?後ろの人達はなんだ?え、王様もいる?みんなコスプレ・・・じゃないよな?)
眩しくて目を開けたら突然知らない場所、知らない世界。
彼は完全に気が動転しており頭が回らず、すぐには現状を把握できない。
(待て待てマテ、落ち着け!考えろ!俺何してたっけ・・・。
あっ!確か会社帰りに病院で薬もらって帰宅中だったんだ。それで・・・。あー・・・。)
ふと自分を見ると、上はワイシャツにネクタイ、下はパンツで、右手にカバンと薬の袋を持っていた。ただ、白いワイシャツにはべったりと血が付いている。
彼は何かを悟ったように俯き、ぼそっと呟いた。
「あー、僕は・・死んだんですかね・・・?」
「いえ、死んではおりません。ですが命が消える寸前ではあったかと思われます。」
「そうか、これが異世界召喚ってやつかぁ・・・。」
「そちらの世界で私の魔力と同調できる方を探していまして、ついにあなたを見つけたのですが、
四角い箱の塊に体当たりされて非常に危険な状態でしたので、急いで召喚させてもらいました。」
(箱wそれは車です。やっぱり事故ってたか、まさか逆から車が来るとは思わなかったしな・・・。)
そう、彼は現代社会でたびたび問題になっている老人運転の逆走車にはねられたのだ。
(周りが急に静かになったのはこの服の血を見たからなんだろうか・・・。)
「そうだったんですか、ありがとうございます。あなたは命の恩人です。」
「はい、間に合ってよかったです。」
社畜のぴしっとした礼に優しく微笑む金髪イケメン。
(なんか怪我治ってるしヤバい、本当にありがたいな。)
彼は、無理矢理召喚された主人公の異世界漫画を沢山読んだ事があるが、
自分の場合は事故って死ぬ所を召喚して助けてくれている、
しかもこの世界に来たら傷が治っているという謎の至れり尽くせりな状況。
全くもってこのイケメンには感謝しかない。自分に出来る事があれば協力しようと思った。




