灯火 5
「もう…」
身体を洗われている最中にも焦らされ、昂らされ、体力の限界に達した私は、湯船の中で悠さんの胸に背中を預けていた。
「もう…って、気持ち良かっただろ?」
その甘くて低い美声を出せば何でも許されると思っている節がある。許してしまうんだけど。
「今、気絶してないのが奇跡なんですけど」
「なあ、気持ち良かった?」
振り返ると最高に機嫌の良い悠さんが相好を崩していた。「答えないと、もう一回するよ?」
「どんだけ元気なんですか……。気持ち良かった、です」
目を逸らして仕方無く答えた。唇が重なる。触れるだけのキスだったのに、舌が侵入して執拗に歯列をなぞられる。
「ん…ねえ、私、もう限界、なんですけど…」
「しょうがねぇな。美咲、のぼせそうだから風呂場《《では》》これで我慢してやるよ」
「いやもう、本日閉店しますので」
「一時閉店な。ベッド入ったら続きしような」
「…悠さん、ドSって言われません?」
「俺、優しいから言われない」
「優しいですけど…それとこれとは別というか」
髪を乾かして部屋に戻り、ローテーブル前に座る。悠さんが冷えた缶ビールを渡してくれる。
プシュッ!
ああ、いい音。
カツン、と缶ビールを鳴らして乾杯する。
風呂上がりの一杯。
悠さんと暮らす前からの習慣だ。
彼と一緒だと、更に美味しい。