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雷声 8
通勤には車が必要。悠さんの家に向かうのに、悠さんの車と私の車、2台で移動した。
明日中に駐車場、もう一台分契約しておくから今日はコインパーキングに停めるよう悠さんに言われ、その通りにした。
駐車して、エンジン音が消える。
桜汰に襲われた時の映像がフラッシュバックする。
顔を覆って身体を震わせていると、車の窓の外から悠さんが窓ガラスを叩く。
「美咲⁉︎大丈夫か?」
顔を上げて悠さんの顔を見る。彼の顔を見ただけで安心して、今度は涙が出てしまう。
なんとか車から降りた私を、悠さんは抱き締めてくれた。今の私は彼の身体にしがみつくしか出来ない。
身体の震えが止まり、何とか動けそうな気がしてきた。
「悠さん、もう、大丈夫…。行きましょう」
彼は何も言わずに、私の肩を抱いて部屋に向かった。
部屋に入って悠さんが鍵を掛けた音がする。
急に力が抜けて、座り込んでしまった。