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雷声 7
警察官が叔母の家を出た。
「美咲に頼れる方がいて、本当に良かったわ」
叔母は呟くように言うと、悠さんに向かって微笑んだ。
「挨拶もきちんとせずにすみません。黒瀬悠と申します。美咲さんとお付き合いさせていただいています。美咲さん、今夜から僕の家に連れて行ってもよろしいですか?」
姿勢正しく叔母に挨拶する彼が頼もしかった。
何も考えられない今は、彼の存在がただただ有難い。
「勿論。警察の方ともそのようにお話してましたもの。美咲、荷物まとめるの手伝おうか?」
「ううん、自分で出来るから…。美香子叔母さん、迷惑かけて、ごめんなさい」
涙を堪えて言うと、叔母にそっと抱き締められる。
「辛いのは美咲だから…。困ったら、また私を頼ってね。私はいつだって美咲の味方だから」
「ありがとう、美香子叔母さん」
ひとしきり泣いて、自室でスーツケースに荷物をまとめた。
身の回りの物だけ入れた。細かなものは、また今度取りに来ることにした。
「美咲、行こうか」
私の肩を抱く悠さんは私のスーツケースを手にして、叔母に向き合った。
「必ず、守ります。どうか安心なさってください」