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雷声 1
「美咲、やっと会えた」
悠さんと過ごした週末。翌日は仕事があるからと叔母さんのマンションまで車で送ってもらった。
マンションのエントランスまでは彼と一緒だった。そこから先は住民じゃないと開けられない扉があるから大丈夫であろう、と1人で部屋に向かってしまっていた。
なんで、桜汰が部屋のドアの前にいるの…?
「桜汰…なんで、ここに…?誰に入れてもらったの…?」
「そんな小さい事は気にしなくていいから。美咲、ちょっと出ようぜ」
薄ら笑いを浮かべてはいるが、目は笑っていない。
本能的に危険を感じて後ずさると腕を掴まれた。
「いいから。行こうぜ」
有無を言わさない桜汰の行動に背筋が寒くなる。
行ってはいけない。それだけはわかる。
「行かない。明日、仕事だし。桜汰だって仕事でしょ?」
「お前よりよっぽど多忙な俺が来てやったんだよ。喜べよ」
強引に腕を引っ張られる。
「桜汰、痛い。離して!」
「痛くない。美咲、俺に触られるの、好きだったろ?」
乱暴に胸を鷲掴みにされる。