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薄日 6
「さっきの人って?」
「カッコいい人がいたじゃん」
同じく6年生の恵さんもわくわくした目で私を見ている。
「黒瀬花園の人だよ。ゴッホの池に花屋さんあるじゃん?あそこの花屋さん。苗届けに来てくれたから並べてたの」
「ふうん…。あの人、また来るかな?」
璃子さんはずっと表情が輝いている。随分と楽しそうだ。
「それはわかんない。さあ、授業やるよ。切り替えて!」
「「はあい」」
「遅れてすみません。保健委員の当番で遅れました」
6年生の最後の1人、茜さんだ。
「ご苦労さま。さ、始めようか」
ピアノで起立するときの和音を鳴らした。
5時間目を終えて職員室の自席に戻る。私の勤務は5時間目までだ。
非常勤だからもう帰れる。それは良い事なのだけど。
やはり、子ども達が学校内にいる時間に帰るのって違和感あるし落ち着かない。
「結城先生、今いい?ちょっと校長室へ」
「はい」
校長室に入ると扉を閉める様指示された。
「そこ、座って」
ソファに座るよう指示されたので、扉に近い下座に座る。