薄日 4
校舎は木々に囲まれている。名実ともに山の中の小学校であることに間違いはない。
木漏れ日が眩しい。でも風は爽やかで。
ふわりと風を受け、彼と私の髪がなびいた。
「ええと、こちら…です」
学校の敷地内で悠さんを案内するなんて。
「はい」畏まった返事をする彼は目を細めていた。
仕事中に悠さんに会うなんて。
私、この後の授業大丈夫かな?
「こちらに、お願いします」
網で囲まれた小屋の様なスペース。
悠さんは静かに段ボールを置くと「苗、ここに並べる?」と申し出てくれたので一緒に並べることにした。
狭い網の小屋で、2人しゃがんで苗を並べていた。
「みさきせんせえ」
小屋の外の声の主は2年生のあきらちゃん。
「それ、なに?」
「ミニトマトの苗だよ。2年生の生活科で植えるんじゃないかな」
答えていると同じく2年生のそうたくんとかんたくんもやって来た。この2人は双子で、髪型と服装がほぼ同じ。目元と輪郭をしっかり見ないと識別が難しい。
「みさきせんせえ、なにやってるの?」
「苗並べてんの。そうたくん、その手に持ってるのは…?」
「とかげ。せんせえ、いる?」
「ゔっ…私は…」
「じゃあ…俺、焼いて食べようかな」
悠さんがそうたくんに向かって破顔して言った。
「えーっ!たべるの?」
「とかげ、尻尾もちゃんと繋がってるな。上手に獲ったね」
「でしょ」
誇らしげに蜥蜴を手にするそうたくんと自然に会話する悠さんを見るのは新鮮だった。
悠さん、子ども好きなんだ。