薄日 3
「はい、職員室です」
「黒瀬花園です。苗をお持ちしました」
「今行きます」
インターホンを通しても分かる、この聞き覚えのある声。モニターではぼんやりして分かりずらいけど、でも何となく気配が似てる。
もしかして…と思いながら職員玄関を開けた。
「悠さん⁉︎」
苗が入っているであろう段ボールを両手に抱えた彼の姿がそこにあった。
「美咲…本当に柿山小の先生だったんだな」
「…疑ってたんですか?」
「そうじゃなくて。先生やってるところなんて、実際なかなか見れないからさ。で、この苗、どこに置くんだ?」
「そのまま、貰いますよ。請求書とか入ってます?」
「重いから俺が運ぶよ」
「結城先生?」背後から小川さんの声がした。
「あ、小川さん。黒瀬花園さんなんですけど…。苗ってどこに置きます?」
「職員室前で良いと思います」
「職員室前…網で囲まれた、植木鉢が沢山ある所ですか?」網で囲まないとこの近辺は猿の被害を受けるらしい。
「はい」
「じゃあ、私行きますね」
「ありがとうございます。今日、ちょっと立て込んでまして…。請求書だけ、頂けますか?」
段ボールの中身と請求書を小川さんと悠さんが確認する。
「確認出来ました。では、結城先生、お願いします」
職員室から小川さんを呼ぶ声がする。忙しなく職員室に戻ってしまった。
「…ご案内、しますね」
外靴に履き替えて外に出た。