73/237
薄日 2
「あつしくん、1は上から書きますよ」
「ああっ…したからかいちゃった」
消しゴムを筆箱から出すにも一苦労だ。
「待って、せいじくん、ゼロは下から書いたらただの丸ですよ」
「ただのまるぅ」
せいじくんはお調子者を絵に描いたよう様な子だ。
消しゴムで消して書き直すのは案外早い。
この、2人の坊やとのやり取りをみゆちゃんはいつもくすくす笑いながら見ている。
保育園でもこの学年はこの3人しかいなかったので、既に仲良しなのだ。
1年生の算数の授業を終えて職員室に戻る。
元から職員が少ないので、授業直後の職員室は人が少ない。
…って!今職員室空っぽじゃん。
いつも職員室にいるはずの事務の小川さんは何か対応に追われてるのだろうか?
自席に算数の教材を置き、マイボトルに入れていたコーヒーを一口飲んで一息ついていた。
職員室のインターホンが鳴り響く。
誰もいないなら私が出るしかない。
私で分かれば良いんだけど。