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飛湍 5
腕時計は夜中の12時を超えていることを示していた。
「今日は…泊まらせて頂いてもいいですか?」
深夜にタクシー往復を悠さんに強いるよりは、泊まらせて貰った方が迷惑度は低いだろう。
「ああ。着替える?それかシャワー使う?」
私が泊まるとわかり安心したのか、彼は表情が緩んだ。
「あの、コンビニに行きたくて」
「コンビニ?」
「洗面用具とか、化粧品とか、何も持ってないので…」
「近くにあるよ。一緒に行こう」
部屋を出ると、また手を絡め取られた。
「あの、悠さん、手…」
「夜中は危険だからね」
桜汰はこの近辺にはいないから、手を繋ぐ必要は無いんだけどな。
コンビニで洗面用具と化粧品の一式をカゴに入れる。
「冷蔵庫って、何か食材入ってます?」
「食材?」
「朝ごはん、材料無いと作れないから」
「また作ってくれるのか。楽しみだな」
「悠さん。食材、あるんですか?無いんですか?」
「ビールとさけるチーズならあるよ。唐辛子味でさ、美味いんだよ」
「食材、買っていきましょう」
コンビニを出てからも、やっぱり手を絡め取られる。
ずっと手は繋ぐのだろうか?これじゃ付き合ってるみたいだな。