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一歩 9
温室を出る直前、一瞬悠さんと目が合った。会釈して、その場を後にした。
再び車に乗り込む。早く帰って、明日からの生活に備えよう。行きとは違い、車の量が増えている。観光客の車だろう。同じ道なのに、家に着くまで10分余分にかかった。
美香子叔母さんも仕事に行っている。叔母さんが帰ってくる前に悠さんから借りて洗濯した服を回収しておかねば。
玄関から自室に行くにはリビングを通る。
悠さんから借りて洗濯して干したままであるはずの服がリビングのソファに畳んで置かれている。
さっと血の気が引いた。
トイレの流れる音と足音が廊下から聞こえる。
「あら美咲、おかえり」
「ただいま…今日、仕事だったんじゃ…?」
「今日は直帰にしたから早く帰れたのよ。洗濯物、持ってってね」
「はい…ありがとうございます」
自分の洗濯物と悠さんの服を手に部屋に行こうと足の向きを変える。
「ねえ美咲」
「…はい」
「今の彼と…結婚するの?」