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一歩 6
仕出し弁当を食べ終えて片付け始める人が増える。
ケーキと紅茶を用意するようだ。
手伝います、と手を伸ばしても「今日は歓迎されてるんで、ケーキ選んでてください」と養護教諭の白井先生ににっこりと言われてしまう。白井先生は見た目若く、恐らく20代前半といったところ。
フルーツタルトのお皿を手にして食事の席に戻る。鈴木先生が大きなお盆で紅茶の入ったティーカップを運んでいた。せめてこれぐらいはと、紅茶を配るのを手伝う。
「結城先生、年、私と同じぐらい…かも?」
「今年26になります」
「やっぱり同じだ。先生、ID交換しましょ」
安達先生がスマホをポケットから取り出す。
互いのQRコードを読み込む。悠さんとも昨日、ID交換したばかりだな…。朝陽に照らされた悠さん、かっこよかったな…。
「結城先生?」
安達先生の声で我に帰る。
「あっ…すみません。無事登録、出来ました」
しっかりしないと。初めが肝心なのに。プライベートに振り回されている場合ではない。
その場にいる全員が同じようなタイミングでケーキを食べ終える。今日の司会であろう若手の事務さんの挨拶で歓迎会は終わった。