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一歩 2
在校生は既に着席していた。
もう準備はほぼ終わっているらしく、教員だけが動き回っている。
舞台上のピアノに国歌の楽譜を置きに行くと、児童達の視線が痛いぐらいに刺さる。
それもそうだ。ここの学校は着任式なんてものは無い。入学式の職員紹介でさらっと紹介されるぐらいなんだそうだ。
というわけで、紹介もされてない状態で入学式に臨むという、不思議な状況。
音楽主任の先生が国歌の指揮、私が伴奏。
6年児童が校歌の指揮と伴奏をすると聞いている。
音楽主任らしき先生と私が舞台に近い席を勧められる。音楽主任の先生とは初対面だ。
「安達です。伴奏、よろしくお願いします」
「結城です。よろしくお願いします」
互いにお辞儀をして、着席する。
私と同じぐらいの年齢だろうか?
眼鏡に黒髪ボブの彼女はS市の星ヶ丘中から来たそうだ。
入学式開始の時間になった。
…が、なかなか入って来ない。
もう予定の時間から10分が過ぎていた。