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草萌え 3
「えっと…昨日一緒に、飲んだところまでは…覚えてます…」
くつくつと堪えきれない笑いを零す彼。
「そんなに…笑うこと、なんでしょうか…?」
「何も、覚えてないんだな」
顔を青くする私に我慢出来ずに破顔する彼。
この状況は一体、本当に何なんだろうか?
「昨日君と居酒屋でばったり会って、お互いお一人様だったから一緒に飲む事になった。君はもうすっかり出来上がってて、元彼の愚痴を延々と語っていたよ」
…頭を抱えるしかない。
「その居酒屋を出た後も、もう一軒行こうと俺の手を離さなかった。ところが」
「ところが…?」
「君はすっ転んだ。膝擦りむいて痛いって君が泣き喚くから、仕方無くそこから近かった俺の家に連れて来た。で、俺が消毒準備してる間に君は俺のベッドを占領して眠っていた。これが全部だ」