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小濁り 5
ドアを開けて良かった。
桜汰、こんなに醜い生き物だったんだ。
嫌悪感が湧き上がる。
逃げ帰らなくて良かった。一人で家で泣かなくて良かった。
涙よりも、ショックよりも、嫌悪感が上回るだなんて。全くの予想外だ。
「美咲…」
全裸のまま、桜汰が私に近づく。
気持ち悪い。
私じゃない女と絡み合っていたであろう全裸の桜汰を見ていたら吐き気がした。
「…近づかないで。吐き気がする。…桜汰。桜汰の、全てが…気持ち悪い」
「美咲」
肩を掴まれる。
「…触らないで」
「佐川くん…?」
ベッドの上の裸の女が口を挟む。
「佐川くん、彼女とは別れたって…」
「別れてません」間髪入れずに髪の長い女に告げる。
「別れてなかったけど、私はもう無理。生理的に無理。良かったらどうぞ?平気で二股かける男で良ければ、ですけど」