番外編 〜プロジェクトX〜 6
勝ち誇った表情を睨む。その顔には疲れが滲んでいた。
「美咲の顔見ないと俺、疲れ取れないんだよ」
ベッドに横たわったままの私を腕に閉じ込めると、長い息を吐いた。
「お疲れさま…でした」
「うん。疲れた。今日は疲れたよ、俺」
「ねえ、なんでそんなに匂い嗅いでるの?」
「アロマ効果」
日によって、悠さんは私の匂いをものすごく嗅いでくる。入浴後の今は問題ないけど、入浴する前の汗が気になる状態でも容赦無く嗅いでくる。
「美咲の匂い、落ち着く」
「今日は…大変でしたか?」
「ん…大変だった、かな。最近、製薬会社って産業スパイがいるいないって話があってさ」
差し入れを持って行った時のあの冷たい声。険しい表情。あれは、そのせいだったのか。
「──だから、ピリピリしてたんですね」
「そう。ごめんな、脅かして」
頬に口づけを落とすと、私の隣に横になった。
「なあ美咲」
「ん?」
右肘を支えにして身体を私に向ける彼は今夜も色気が爆発している。
「また…晩飯、お弁当にしてくれないか?」
「いいの?私、今日邪魔しちゃったでしょ…?」
言いながらも、また喉の奥が熱くなる。こんなにすぐに泣きそうになるなんて。私は鬱陶しい妻なのかもしれない。
「邪魔なわけないだろ。俺、嬉しかったんだよ」
「ほんと?」
「本当。やっぱ俺、お菓子だけじゃいい仕事できない。美咲の持ってきてくれたお弁当食べた後、いつもより捗ったんだ」
それが本当なら。私の今日したことが間違ってなかったんだ。安堵から涙が一筋零れた。