番外編 〜プロジェクトX〜 5
そのまま泣き疲れて寝てしまっていた。全身に込められる力に目を覚ます。ベッドの中で悠さんの腕に包まれていた。
「はるか、さん…?」
「ただいま」
鼓膜に優しく響くその低音はいつもと変わらず、耳に心地良い。
「お弁当、ありがとな。美味しかった」
「……もう、夕食のお弁当は……やめますね。悠さんの迷惑になるって、考えが及ばなくて…」
言いながら涙が浮かんでくる。悠さんの顔を、まだ見られない。
「迷惑なんかじゃ…」
「でも、邪魔になってたでしょう?」
そのまま布団に顔を埋めた。泣いているのを気づかれたくないのに。嗚咽を我慢すると肩が震えてしまう。
「美咲、こっち向いて」
「無理」
「無理じゃない」
布団を剥ぎ取られて、涙でぐちゃぐちゃになった私の顔が露わになった。手で隠そうとしたら手首を掴まれ、そのままシーツに縫い付けられた。唇が強引に重なる。このまま抱かれてなあなあになるのだろうか。少しばかりの抵抗は意味を成さず、諦めて全身の力を抜いた。
彼の手が脇腹を触れる。いつもならここからパジャマの中に侵入する──はずなのだけど。
「──っ⁉︎」
脇腹をつつかれる。片方だけでなく、両方。
「ちょ、悠さん⁉︎ねえ、ちょっと…やめてよ!…っ!」
私が脇腹が弱い。くすぐったさに耐えきれず、身を捩った。
「やめない」
「やだってば!…ねえ、やめて!ちょっと!…あははははっ!やだ、やめて!」
やっと彼の手が止まる。肩で呼吸していると、優しい瞳と目が合った。
「やっとこっち見たな」
「やり方が…ずるいでしょ」
「美咲の笑顔見る為なら俺、なんでもするの」
「だからって…」
「俺だけの特権でしょ?」