番外編 〜プロジェクトX〜 4
「邪魔して、ごめんなさい」
喉の奥で辛うじて声を絞り出す。立ち上がって出口へと急いだ。悠さんの顔は見れなかった。見たら泣いてしまいそうだった。
悠さんは、私を追って来なかった。
家の洗面所で自分の顔を見て驚いた。酷い顔をしている。帰りの車の中でずっと涙が止まらなかった。もう化粧を落としてお風呂に入ってしまおう。
何度か着信があった。どれも悠さんからだった。何を言えば良いのかわからず、電話に出ようという気にはならなかった。
入浴を終えても悠さんはまだ帰宅していなかった。今日も日付が変わる頃にしか帰れないのだろうか。いつもなら、彼が帰ってくるまでは起きていた。でも今日は…。どんな顔で出迎えたらいいの?寂しかったからって仕事の邪魔をしたことを再び詫びれば良い?詫びてるはずなのに、責める口調になってしまう予感しかない。
寝室のベッドに横になる。最近は授業が無く、デスクワークしかしていないせいか、身体が疲れていない。故に、寝付きが悪くなってしまっていた。
玄関のドアが開く音がした。慌てて寝室の明かりを落とす。足音を忍ばせて再びベッドに入った。
「美咲…?」
返事はできない。反射的に目をぎゅっと瞑った。
「美咲?寝ちゃったのか…?」
寝室のドアが開く気配がする。ドアに背を向けて目を瞑っていた。ため息が聞こえた。呆れられてしまったのだろうか。寝室のドアが閉められた。堪えきれず嗚咽が漏れる。ベッドに横になったまま、再び涙が止まらなくなった。