Epilogue 3
覚悟を決めて、悠さんと親族紹介の部屋のドアを開ける。部屋中の視線が私達に集まる。介添さんの先導で、用意された席に着席する。
親族紹介が始まった。悠さんのお父様が黒瀬家の親族を順番に紹介されていく。和佳子お母様は末席に座っていた。悠さんの産みの母とはいえ、黒瀬のお母様の隣に座ることは許されなかったのだろう。
「片岡和佳子、です。悠の産みの母親です」
結城家の親族の面々が驚きの表情を見せる。でも誰一人声は出さず、すぐに表情を元に戻してくれた。結城家の親族はこんなにポーカーフェイスが得意だったのか。私がポーカーフェイスが得意だったのは血筋だったのだろうか。どちらにしろ、後でお礼を言わないといけないな。
結城家の親族が順番に紹介されていく。父の声が時々上ずっている。緊張しているのだろう。さっきの和佳子お母様の件についてはうちの父はもう吹っ飛んでいるらしい。和佳子お母様について初めて知ったときは多分に漏れず、両親も達規も驚いていたけど。対面する前に伝えておいて本当に良かったと思う。
親族紹介が終わり、親族の皆さんがぞろぞろと部屋を出て行く。介添さんの先導で私と悠さんが部屋を出ようとした、その時。
「悠」
和佳子お母様が悠さんを呼び止めた。