Epilogue
式場の介添さんに親族紹介の部屋へと案内される。私達以外はもう着席しているそうだ。
「美咲」
「悠さん」
目を細めた彼は、タキシードがよく似合う。本当にかっこいい。眼福の極みとはこういうことか。見惚れていると、彼の頬が紅くなっていく。
「美咲…あんまり、見つめないで」
「え、なんで」
「美咲が綺麗過ぎて…俺、今すぐ押し倒したい」
「ちょ、悠さん…!」
介添さんに今の会話が聞こえていないか、変な汗が出てしまう。メイクが崩れたら一大事だ。
「皆さん着席されてるって。早く行きましょ」
「美咲」
「ん?」
振り返ると、彼は嬉しいような、困ったような、複雑な表情を浮かべていた。
「母親。来てるらしい」
「えっ⁉︎」
「俺が黒瀬家の控室に行ったときはいなかったんだけど。さっき到着したらしくて。親族紹介の部屋に通されたんだそうだ」
来てくれたんだ。ここまで来て結婚を反対される、ということは無いだろう。ということは。少しは祝福してくれるのだろうか。
「祝福、してもらえるかな」
「だといいけど。ここまで来てぶち壊す、というのは親戚の手前、黒瀬の母が許さないだろうしな」
大丈夫かな?今頃、親族紹介の部屋の中は騒然としていないだろうか…?どうオブラートに包んで紹介して貰っても、和佳子お母様は愛人であることには変わりなく。結城側の親戚はみんな驚くだろう。黒瀬家の家庭事情は私の両親と弟の達規にしか伝えていない。