蜜月 10
そのまま意識を失ってしまっていたらしい。ふと目を覚ますと陽は傾いていた。
「はるか、さん…?」
「起きた?」
また寝顔を見られていた。恥ずかしいからやめて欲しいんだけど。この美しい人に一生自分の寝顔を見られるのかと思うと、寝顔を自分でうまく調整する方法は無いものかとありもしない手段を考えてしまう。
「今、何時…?」
「もうすぐ17時」
「5合目行けないじゃん」
「明日行けばいい」
布団の中、何も身に付けないで抱き締められる。彼の手は膨らみの柔らかさをふにふにと楽しんでいるようだ。
「悠さん」
「ん、何?もう一回する?」
「元気過ぎでしょ。私、河口湖の周り、散策したい」
「散策に行くと夕食の時間に間に合わないよ。散策は、明日な」
「もう…んっ…!は、るか、さん…?」
「ん?」
「ねえ、まだするの?」
茂みを弄る彼の手が、忙しく動き始めた。
「夕食まで、まだ時間あるから大丈夫」
全身の細胞という細胞が彼に解されていた。彼の手に、動きに、私の身体は再び翻弄されていった。
仲居さんが夕食の準備に私達の身支度が間に合ったのは、奇跡だと思う。
夕食は予想通り、とても美味しかった。悠さんにビールを勧められ、部屋の冷蔵庫にあったサービスの梅酒も飲んで、私の脳内はふわふわと気持ち良くなってきた。
夕食を終え、向かいに座っていた私は悠さんの隣の座椅子を悠さんの座るそれにくっつけるように整えた。浴衣姿の悠さんは、いつもにも増して色気が倍増している。お酒にも彼の色気にも酔わされた私は、彼の肩にしなだれかかった。