蜜月 5
「……!俺、顔に出てた?隠してたつもりだったんだけど」
今にも泣いてしまいそうな表情で、悠さんは私の胸に顔を埋めるように抱きついた。
「俺、ここが一番落ち着く…」
彼の頭をそっと撫でる。暫く、ずっと撫で続けていた。
「美咲」
「ん?」
「身を引こうとか、考えてないよな?」
考えていた。すみれとランチして、すみれに言い当てられるまでは、それが一番の解決策だと思っていた。それが悠さんの為になると信じていた。
「…すみれに、感謝しないと」
「え?」
「今日すみれに言い当てられたの。身を引こうとしてるでしょって」
悠さんは顔を上げた。その表情は強張っているのがよく分かる。
「美咲…」
「考えが悪い方向にしか行かないのはずっと二人だけで考えてるからだって。旅行とか、二人で外に行けば、何か新しい発想が出るかもしれない」
「だから旅行、か…。それもいいかもしれないな」
でも俺、離さないから。とふわりと笑って私を閉じ込めるその腕は、いつもよりも力が込められていた。
旅行当日。私達は悠さんの運転する車に乗っていた。行き先はまだ教えてもらえない。高速を走っているから、ある程度遠い所に行くんだろうな、ということはわかる。
「ねえ悠さん、そろそろ行き先教えてくれても…」
「知りたい?」
「うん、知りたい」
「どうしよっかな」
「悠さん…さっきからずっとそればっか…」
彼の機嫌がいいのは良いのだけど。車に乗り込んでからずっとこの調子だ。